三菱地所株式会社 様

ライフステージごとに変わるお客さまのニーズに応える
グループ横断のバリューチェーンプラットフォームを構築

顧客接点の高度化

住宅事業グループ各社が有機的に連携
「住まいのバリューマネジメント」
を実現する

事例のポイント

お客様(三菱地所様)の課題

  • リフォーム・仲介などのストック型ビジネス拡大への対応が急務
  • 営業施策や顧客管理、会員管理がグループ各社の個別最適で運営
  • ニーズに対する点のアプローチではない、ロイヤルティ向上施策の実行

課題解決の成果

  • 統合された顧客情報を活用し、グループ各社が相互に価値を提供
  • 各社事業の枠組みを超えた統合プラットフォームを確立
  • ライフステージに応じて顧客が求める情報・サービスを一元的に提供

導入ソリューション

SiteCore(CMS) Dynamics365(CRM) TRILLIUM(名寄せ) 
Asteria(データ連携) Microsoft Azure(クラウド基盤)

※CMS:コンテンツ管理システム CRM:顧客管理システム

三菱地所株式会社
住宅業務企画部
バリューチェーン推進室 主事

橘 嘉宏

三菱地所株式会社
住宅業務企画部
バリューチェーン推進室 統括

池田 至

「住宅マーケットの変化にグループ一体で対応するための中核であるとともに、
“モノ”だけではない新たな価値を提供するための重要なプラットフォームになると考えています」

三菱地所株式会社 住宅業務企画部 バリューチェーン推進室 主事

橘 嘉宏

背景・課題

大きく変化する国内の住宅マーケットに対応するため、
組織の相互連携強化を促し、顧客接点のあり様から見直す

 住宅事業をとりまく国内マーケットの環境は、近年大きく変化している。少子高齢化と人口減少。新築マンション供給戸数の減少とリフォーム市場の拡大。2016年には首都圏のマンション契約件数における中古物件の割合が新築を上回る逆転現象が起きた。新築マンションや戸建の販売といったフロー型のビジネスだけでなく、リフォーム、住み替えなどストック型のビジネスが盛んになってきている。総合不動産会社大手の三菱地所は、この変化を課題として捉えていた。「当社はフロー型のビジネスが主力です。たとえば分譲マンション事業ではトップクラスですが、ストック型のビジネスは業界でも後れをとっていました。」と住宅業務企画部 バリューチェーン推進室 統括の池田 至氏は語る。

 また、同社にはもう1つ課題があった。「住宅における購買行動は十年単位の長いスパンの中で発生することもあり、一度購入頂いた顧客に対し、再びアプローチする接点を設けることができていませんでした。」と池田氏は言う。例えば、結婚を機にマンションを購入する顧客が、子どもの独立や老後まで考慮することは難しい。ライフステージが変化したときには住み替えやリフォームなどの検討が発生するが、その機会を捉えられていなかった。この原因には同社の組織文化が影響していた。「当社グループの住宅事業は、本体に統括機能があるのみで、グループ各社が個別最適に基づき事業を推進していました。しかしマーケットが大きく変化する中、これからは顧客一人一人のLTV(ライフタイムバリュー)を高めていく必要があります。そのためには、各社のバリューをつなぎ、三菱地所グループ全体として顧客の生涯におけるニーズをカバーしていく必要がありました。」と住宅業務企画部 バリューチェーン推進室 主事の橘 嘉宏氏は話す。

 このような経緯から、三菱地所は「住まいのバリューマネジメント」というサービスコンセプトを打ち立て、グループ各社が相互協力し、一体となって顧客への価値提供を追求する取り組みをはじめた。

解決策と効果

「体制組成」「マインドセット」「プラットフォーム」3軸の着実な遂行により、
グループ横断の新たな会員組織が誕生

 最初に取り組んだのは、グループ各社に全体最適の意識を醸成させ、共通の目標に導く司令塔となる組織、住宅バリューチェーン推進室の組成だ。グループ各社の人員が中心となり、40名ほどが集まった。考えるべきテーマを議論した結果、最も大きなテーマとなったのが、住宅事業グループとして統合された会員組織を新設することだった。

「総論はよかったのですが、具体的な検討が始まってからが長い道のりでした。各社の事業が異なるため、顧客へのアプローチの仕方や顧客情報を共有する際の考え方も異なりました。こうした考え方の違いは各社の視点に立っているままでは解決できません。一つ上の視点に立ち、各社事業規模の違いや、どの事業がどの事業をフォローする関係にあるのかをまず認識。この取り組みが最終的に個社の利益に還元されることを各社が納得することが必要でした。そのための対話を根気強く続けました。」と橘氏。

 こうした尽力により生まれたのが『三菱地所のレジデンスクラブ』だ。既存の4つの会員組織や各社がもつ顧客情報を統合。対象が60万世帯というのは業界最大規模であり、オーナー顧客だけでなく購入検討顧客も含めたという特徴は業界初の試みだ。総合窓口およびWEBサイトでワンストップのサービスを提供する。特にWEBサイトでは、住まいに関わる様々な情報やサービスを提供したうえでサイト上の行動を分析。顧客のWEBサイトへの興味度合いや不動産ニーズなどを把握し、一人一人に合わせたコンテンツの出し分けや、DMでの販促、メールでのリードナーチャリング(見込み客育成)を実現した。十年単位である住宅の購買行動の間を紡ぎ、ライフステージの変化に寄り添いながら「顧客生涯価値の追求」を図るのが目的だ。その実現に重要な役割を担っているのが、新会員組織とともに構築した総合顧客情報管理プラットフォームである。

「当初は各社のCRM上にある顧客情報を相互に閲覧しあうアイデアが出たものの、各社IDや管理項目も異なり、名寄せが不可欠だと判断しました。また、顧客価値の追求のためには統合した顧客情報に加え、より詳細な顧客ニーズの把握も必要という結論に至った結果、プラットフォームに求める機能や構築の難易度が高まったため、それを共に実現できるパートナーを探していました。」と橘氏は振り返る。

そんな中で出会ったのがSCSKだ。SCSKは「WEBSAS(ウェブサス)」というブランドで十年以上、企業のWEBサイトの企画から構築、運用を手掛けている。またCRMの構築も得意としており、特に、あらゆる顧客情報を一元化し、拡張性にも優れるDynamics365の大規模導入プロジェクトの実績は国内トップクラスだ。「SCSKの提案は、
業界最大規模となる約60万世帯を対象とした会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」

業界最大規模となる約60万世帯を対象とした会員組織
「三菱地所のレジデンスクラブ」

『Dynamics365』と、CMSとマーケティングオートメーションの機能を併せ持つ『SiteCore』の組み合わせで、プラットフォームに求める機能を十分満たしていました。もう一つポイントだったのは体制です。SCSKに大きな仕事を任せるのは初めてでしたが、当社のやりたいことを他社より高いレベルで理解し、このプロジェクトをやり切ることができるという信頼がもてたのです。」と橘氏は話す。

「プロジェクトが始まってもSCSKの評価は変わりません。課題管理が的確で風通しのよい運営ができましたし、非常にタイトな納期だったのですがギリギリまで最善策を模索して頂きました。グループ各社との調整もサポートいただき、円滑かつ実直に推進される姿が頼もしいと感じました。」と池田氏。

 「三菱地所のレジデンスクラブ」が発足してまだ約半年だが、効果は着実に表れ始めている。仲介やインテリア、リフォームといったストック型ビジネスへの問い合わせ件数が大きく増加。旧会員サイトと比較しても、ログイン率は約3倍になったという。

今後の展望

“住まい”から“生活”のためのプラットフォームへ
データを軸とした新たなビジネスモデル構築も視野に

 今後の展望について池田氏はこう語った。

「まだやりたいことの土台を作ったに過ぎません。統合された顧客情報に対する高度な分析やライフステージのタイムリーな把握、顕在・潜在ニーズの掘り起こしを実施し、より精度の高いアプローチを実行していきます。一時的な顧客満足度だけにとどまらず、三菱地所グループが一丸となってロイヤルティ向上を果たすことを目指しています。」

 さらにはホテルやアウトレットなど他の事業との連携も広げていくとともに、IoTを活用し、スマートホームなど快適な住まいのためのサービスとの連携も検討している。顧客が生活の中で「三菱地所のレジデンスクラブ」をより広く活用できるように、さまざまな仕掛けを増やしていく考えだ。

「『住まい』だけにとどまらせることなく、『生活』のプラットフォームに育て、商品開発やマーケティングの深化に活用したいと考えています。その先には当社グループだけでなく外部の企業と提携し、データを軸とした新たなビジネスモデルを構築することも視野に入れています。すでに様々な企業から問い合わせを受けており、このプラットフォームをつくりあげたことの価値と今後の可能性を早くも実感しています。」(橘氏)

 「三菱地所のレジデンスクラブ」とそれを支えるバリューチェーンプラットフォームは、住宅事業の枠組みを超えて、今後も進化を続けていく。

SCSK担当者からの声

三菱地所様からは、住宅事業グループ各社が横断して活用するバリューチェーンプラットフォームの構築という、非常に重要な取り組みのパートナーに採用頂きました。規模、範囲ともに大きなプロジェクトでしたが、特に顧客情報の統合では、各社異なる形式だった200万件の顧客情報の名寄せを実施。ロジックの積み上げと検証を繰り返しながら、グループ全体で顧客を可視化したいという三菱地所様のご要望を無事実現することができました。SCSKは多様化する顧客接点から得られる情報を、事業戦略やサービスのさらなる拡充につなげていけるよう総合的に支援し、顧客接点の変革を後押しします。

流通・メディアシステム事業部門 流通システム第五事業部 
WEB・CRMサービス部 第二課長

綿貫 憲一


お客様プロフィール

三菱地所

三菱地所株式会社

所在地:東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル
U R L: https://www.mec.co.jp/

三菱地所は1937年に設立した総合不動産会社。同社の住宅事業グループには、不動産の開発・販売や賃貸などをメイン事業とする「三菱地所レジデンス」やマンション管理やビル管理などを行う総合管理会社「三菱地所コミュニティ」、注文住宅や土地の有効活用、リフォームなどを行う「三菱地所ホーム」、住まいの売買仲介や賃貸管理、賃貸仲介サービスなどを行う「三菱地所ハウスネット」、インテリアデザイン会社「メック・デザイン・インターナショナル」などが名を連ねる。

2019年4月