株式会社商工組合中央金庫 様

「Power Platform」による市民開発を本格化
社内開発者数が半年で約4倍に急拡大

働き方改革・生産性向上

自由とガバナンスの両立と
コミュニティの働きにより市民開発が自走

事例のポイント

お客様の課題

  • 市民開発にどんなガバナンスが利かせられるかが手探りの状況だった
  • 市民開発のガバナンスルールをどう設定すべきかが不明だった
  • 市民開発のセキュリティリスクに対する周囲の懸念が大きかった

課題解決の成果

  • 市民開発の自由とガバナンスを両立させる仕組みと体制を確立
  • 社員開発者数が半年で約4倍に急拡大し市民開発アプリが1,800超に
  • コミュニティによる知見共有が活発化し市民開発の自走体制が確立

導入ソリューション

  • Power Platform導入・活用支援サービス

株式会社商工組合中央金庫(商工中金)
デジタル戦略部 副参事役

増田 哲朗

「SCSKの支援で市民開発を推進する土台が整備され社内開発者とアプリの数が急増し、 現場での業務改革・改善のスピードも向上しています」

商工中金 デジタル戦略部 副参事役

 増田 哲朗

背景・課題

市民開発の推進によりシャドーITの抑止と
業務改善のスピードアップを目指す

 商工組合中央金庫(以下、商工中金)は、1936年に民間の中小企業組合と日本政府の共同出資で創設された中小企業専門の金融機関だ。全国47都道府県に103拠点と海外に5拠点を展開し、2025年6月の政府保有株式の全部売却完了と改正商工中金法の施行により民営化した。その新たな変革期を迎え、従来型金融の枠を超えた顧客企業のDX支援や人材確保支援など、複合的なサービス提供に注力している。

 この変革期の注力テーマの1つが、AIなどを活用した社内業務の生産性向上だ。それを実現する一手として、商工中金では、「Microsoft Power Platform」(以下、Power Platform)を使った市民開発プロジェクトを推進している。

 「Power Platformでアプリを自作してみて、このプラットフォームならAIアプリを誰でも簡単に作れると感じました。また、Power Platformの事例を調べたところ、市民開発の推進が業務効率化のみならず、シャドー ITの抑止にも効果的であることを知りました。そこで、IT活用のガバナンスを利かせながら、仕事に役立つアプリを自作する文化を定着させたいと考えました。目指したのは社員一人ひとりがAIを活用し、業務の改善や自動化をスピーディに行える環境づくりです」と、デジタル戦略部 副参事役の増田 哲朗氏は語る。

 こうして市民開発の推進に乗り出したが、「管理者としてPower Platformを扱うのは初めてで、どういったガバナンスが利かせられるか見えず、手探り状態でした。加えて商工中金はRPAツール活用につまずいた経験から、市民開発の有効性に懐疑的な声やセキュリティリスクを心配する声があり『ガバナンスをしっかりと利かせられるのか』『問題が起きたらどう対処するのか』という議論がたびたび起きていました」と、増田氏は当時を振り返る。

 こうした課題を解決すべく、増田氏はPower Platformに精通する外部のパートナーに支援を求めることにした。そのパートナーとして選ばれたのが、SCSKである。

解決策と効果

ガバナンスの確立とコミュニティにより
市民開発者とアプリ数が急拡大

 同社はパートナー選定にあたり複数社を比較検討し、SCSKの「Power Platform導入・活用支援サービス」を選んだ。特に評価したのは、セキュリティ対策や情報漏えい対策に加え、社員が開発したアプリケーション(以下、アプリ)の品質を適正水準に保つガバナンス設計が優れていた点だ。

 2025年1月に始まったSCSKの支援は、市民開発の土台整備を中心に進められた。取り組みの柱は、①ガバナンス方針の策定 ②ユーザー育成(研修) ③標準化(ガイドライン策定) ④運用・監視(モニタリング)体制の確立 の4つである。

図:市民開発の土台整備に向けた4つの柱
図:市民開発の土台整備に向けた4つの柱

 SCSKの支援を受ける中で増田氏は、Power Platformの管理機能が想定以上に優れている点に気づいたという。

 「SCSKのアドバイスに基づき管理ツールを使ったところ、相当高度な管理が行えることがわかりました。特に驚いたのは、社員が開発したアプリの中身が可視化され、使用されているコネクタ類も一覧で見える化される点です。これなら問題を内包したアプリをすぐに見つけ出し、停止や権限変更が行えると確信しました」(増田氏)。

 この発見により、ガバナンスの方針も転換された。増田氏は次のように説明する。

 「当初はアプリのリリース前にセキュリティ上のルール違反や品質の検閲をかける想定でしたが、リリースは自由に行い、リリース後に検閲をかける方針に変えました。これにより、市民開発の自由とガバナンスをバランス良く両立できるようになりました」

 SCSKによる研修も効果的だった。2025年5月に4日間実施された初回研修には商工中金社員19名が参加した。1日目はPower Platformの基礎講座をSCSKが行い、続く3日間では参加者が6チームに分かれ、日本マイクロソフト社の技術支援のもとアプリ開発に取り組んだ。結果、3チームの作成したアプリは完成度が高く、行内業務での実活用につながっている。

 増田氏は「参加者は営業部門や管理部門で働く人たちで、Power Platformに初めて触れる人がほとんどでした。それでもアプリ開発の演習が奏功したのは、必ず動くアプリを作り、発表時にデモを展開するよう各チームに求め、そしてSCSKの基礎講座の品質が高く、Power Platform活用の要ともいえるユースケースが絶妙なかたちで詰め込まれていたからです」と説明する。

 SCSKの支援を通じて整備された市民開発の土台は、顕著な成果を上げている。2025年7月から2026年1月末までの半年間で、社内開発者(市民開発者)数は128名から502名へ約4倍に増加し、稼働中のアプリ(フロー数)も399から1,832と約5倍に急拡大した。増田氏は「開発の自由とガバナンスを両立できる体制が築けたことや、市民開発に対する潜在ニーズがもともと大きかった点が背景にあります」と指摘する。

 また、社内でPower Platformユーザーのコミュニティが形成され、活用ノウハウや創意工夫の交換・共有が活発に行われている。「コミュニティの形成により、商工中金における市民開発が自走し始めたといえます。現場の困りごとは現場の人たちが最もよく知っています。コミュニティを中心にした市民開発の広がりは、そうした人たちが課題解決のアプリを自作し、共有するようになることを意味します。これにより、商工中金の業務改善のスピードは一層加速していくはずです。これから市民開発に取り組む方には、コミュニティを必ず作ることをお勧めしたいです」(増田氏)。

今後の展望

AIの活用と優れたアプリの全社展開を推進し
業務の改革・改善のスピードを増す

 Power Platformを使った市民開発の今後について、増田氏は「AI活用の促進」と「優良アプリの全社展開」という2つの方向性を示す。「市民開発チームでは現在、Power Platformの『AI Builder』を使って請求書の処理手続きを自動化する仕組みを作っています。こうしたシステムを開発するうえでPower Platformはとても便利なプラットフォームなので、AIを使ったシステムをPower Platform上でどんどん増やしていきたいです」(増田氏)

 優良アプリの全社展開について増田氏は「例えば、特定の営業店内で流行しているアプリを、他の営業店にも広げていきたいです。現場で働く社員の中にはシステム部が想定する以上に高度で利便性の高いアプリを開発している人がいます。そうしたアプリを全社へと積極的に展開し、業務の改善・改革のスピードアップを図っていければと願っています」と明かす。

 こうした今後の展開を踏まえつつ、増田氏はSCSKによる支援に次のような期待感を示している。

 「2026年も引き続きSCSKによる市民開発者育成を実施する予定です。市民開発は、SCSKのような専門家の知見を借りなければ、どこから始めれば良いかわからず、プロジェクトを立ち上げることすらできないことが多いはずです。我々はそのことを肌身で知りました。これからの展開においても、SCSKによる優れた支援を期待しています」

集合写真

SCSK担当者からの声

この度はPower Platform市民開発推進の取り組みをご支援させていただき、誠にありがとうございます。対話を重ねながら貴社に寄り添い、ガバナンス・環境構築・運用・開発手順など整備し、安心・安全に市民開発いただける土壌ができあがりました。その結果、市民開発者とアプリが急増し、業務改善のスピード向上に貢献できたことを大変光栄に感じております。今後も、SCSKが培ってきたMicrosoftソリューションとその周辺知見を活かし、AI活用推進、市民開発の更なる展開について末永くご支援してまいります。

ITインフラサービス事業グループ クラウド事業本部
クラウドサービス第一部 第四課 課長補佐

金安 晃宏


お客様プロフィール

株式会社商工組合中央金庫(商工中金)

本店所在地:東京都中央区八重洲二丁目10番17号
創立:1936年10月8日
U R L:
https://www.shokochukin.co.jp/

昭和初期の度重なる恐慌で多くの中小企業が危機的状況に陥るなか、その救済を目的として中小企業組合と政府の共同出資により創設された。以来、中小企業による中小企業のための金融機関として成長・発展を遂げてきた。2025年6月に、政府保有株式の全部売却完了と改正商工中金法の施行により民営化した。

2026年4月初版