ベイシアグループ30社のシステム最適化を支える
大規模なバックオフィスシステムのクラウド移行を推進
株式会社ベイシアグループソリューションズ
ソリューション統括本部
インフラCoE部
インテグレーショングループ 部長
株式会社ベイシアグループソリューションズ
ソリューション統括本部
インフラCoE部
インテグレーショングループ マネジャー
株式会社ベイシアグループソリューションズ
ソリューション統括本部
インフラCoE部
インテグレーショングループ マネジャー
「SCNXを活用したマルチクラウド接続により、グループ各社の店舗運営に支障をきたさないITインフラやITサービスの運用体制を実現する目途がたちました」
ベイシアグループソリューションズ ソリューション統括本部 インフラCoE部 インテグレーショングループ 部長
高岸 謙斗 氏
ベイシアグループは、ショッピングセンター「ベイシア」をはじめ、ホームセンター「カインズ」、作業服・作業関連用品専門店「ワークマン」など、物販チェーンを中心とした30社以上で構成された流通企業グループだ。これらの事業会社のITインフラ基盤管理やグループ共通システム管理などを担っているのがベイシアグループソリューションズである。
同社は現在、グループ全体でのシステム最適化を推進している過程にあり、基幹系を含めた大規模なバックオフィスシステムのクラウド移行に取り組んでいる。これはオンプレミス環境の設備老朽化に伴う事業継続リスク上昇を考慮したもので、各サーバーのハードウェアにEOS(保守切れ)も迫っていたことから、現行アーキテクチャーを踏襲したままでのクラウドリフトを基本方針とした。
移行先に選んだのは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とAmazon Web Services(AWS)を組み合わせたマルチクラウド環境である。
「既存のDBサーバーがOracle Real Application Clusters(RAC)上で稼働しており、プラットフォーム変更を回避するために、RAC構成を再現できるOCIを選定しました。一方、他のサーバーについては、すでに多くの業務システムの移行実績があり、運用基盤・体制が確立しているAWSを採用するのが最適と判断しました」と、同社 ソリューション統括本部 インフラCoE部 インテグレーショングループ 部長の高岸 謙斗氏は説明する。
こうして2023年8月から11月にかけてPoCを実施した同社だったが、そこで思わぬ壁に直面することになる。バッチジョブの処理時間が、オンプレミス環境のシステム構成と比較して著しく延伸してしまったのだ。
「中には7時間以上を要するジョブもありました。これでは夜間のうちに処理が完了せず、各店舗の翌朝の営業開始時間に間に合わなくなってしまいます」と、同社 ソリューション統括本部 インフラCoE部 インテグレーショングループ マネジャーの黒田 隆爾氏は振り返る。
バッチジョブの処理時間が延伸した原因は、AWSとOCIのPoP(Point of Presence:ダイレクト接続点)間で発生するネットワーク遅延だと後に特定された。とはいえ、原因がわかったとしても自力で問題を解決する手立てはなく、クラウドリフトに向けた同社の取り組みは停滞してしまった。
そこにタイミングよくSCSKから紹介されたのが、マルチクラウド接続サービス「SCNX」だ。最初は競合他社サービスとの違いを感じなかったが、詳しく話を聞いてみると、すべてのメガクラウドのPoPがSCSKのデータセンター「netXDC」に用意されていることが明らかになった。
「AWSとOCIのPoP間の物理的な距離がほぼゼロとなるため、ネットワーク遅延の問題は解消できるかもしれないと期待が高まりました。加えてSCSKから『ベイシア環境とnetXDCを接続せずともクラウド間接続を行える』という限定的な使い方も可能という提案をいただき、SCNXの導入検討を開始しました」(黒田氏)
実際、SCNXでPoCを実施したところ、前回のPoCでは約7時間を要していたバッチジョブの処理時間が約2時間半に短縮された。ただ、この結果をもってしても改善は十分とは言えない。SCSKのエンジニアも交えて協議を重ねたところ、ネットワーク遅延をもたらす原因の新たな仮説として浮かび上がってきたのが、フレームサイズの問題だ。
通常、EthernetのTCP/IP規格ではデータ(ペイロード)を1,500バイト単位に区切って送信しているが、基幹系システムのバッチジョブのように大量データをやりとりするケースでは、エラー検出などの割り込み処理が頻繁に入り、スループットを低下させてしまうのだ。この問題を解決するには、1,500バイトを超えるフレームサイズでのデータのやりとりを可能とする、いわゆる「ジャンボフレーム」にサービスが対応している必要がある。
当初SCNXではジャンボフレームに対応していなかったが、そこに転機をもたらしたのが、SCSKの柔軟な対応である。「我々の要望を持ち帰って検討していただいた結果、SCNXにてジャンボフレーム対応を追加実装することが決定したのです。さっそくこの新環境で当該バッチジョブの処理時間を測定したところ、さらに約30分短縮することを確認できました」(黒田氏)
ここまで改善されれば、問題解決はすぐ目の前だ。「オンプレミス環境のシステム構成と同水準の時間短縮とまではいかないものの、バッチジョブの順番を組み替えるなど簡単な調整を図るだけで、業務影響がないレベルでのクラウドリフトを実現することができます。その意味でも目標値は十分に達成できたと言えます」(高岸氏)
こうして同社は2024年12月、SCNXを正式に導入することを決定した。
同社 ソリューション統括本部 インフラCoE部 インテグレーショングループ マネジャーの小田 剛央氏も「バッチジョブのプログラムやネットワーク構成へ手を入れずにマルチクラウド接続を実現できたのは非常に大きな成果です。加えて、マネージドサービスのため運用負担を最小限に抑えられること、2クラウド目以降の接続費用がさらに安価で済むといったメリットもあり、弊社にとってSCNXは唯一無二のソリューションとなりました」と語る。
図:SCNXならAWSとOCIをnetXデータセンター内で直接接続することが可能だ。
SCNXを利用したマルチクラウド接続の手段を得た同社は、基幹系を含めたバックオフィスシステムのクラウドリフトに向けた取り組みを本格的に開始しようとしている。そうした中で重視しているのは、グループの各事業会社に対する、より柔軟かつ自由度の高い選択肢の提供だ。
「現時点で想定している移行先クラウドはAWSとOCIのみですが、個社ごとの多様な要望を捉えつつ、3つ目のクラウド接続先としてMicrosoft Azureの追加利用も検討中です。さらに将来的には、AIに強いクラウド、アナリティクスに強いクラウドなど、さまざまな用途に応じたクラウドネイティブのサービスを適材適所で活用できる選択肢を提供していきたいと考えています」(高岸氏)
この方針を受けて小田氏は「SCNXを基軸とすることで、弊社はマルチクラウド戦略のビジョンを大きく拡大できました」と強調する。
とはいえすべてのシステムをパブリッククラウドに移行できるわけではない。そこで注目しているのが、SCSKが別途提供しているプライベートクラウドサービス「USiZE」だ。
「SCNXはクラウドとの接続が最大10Gbpsまで対応しており、USiZEとあわせて使用すれば、より柔軟なハイブリッドクラウド構成が可能となります」と、黒田氏は今後の展開を見据えている。
ベイシアグループ様のDX推進を支えるマルチクラウド接続基盤としてSCNXをご採用いただき、心より感謝申し上げます。SCNXでグループ全体のビジネス加速に貢献できることを大変嬉しく思います。今後もSCNXをはじめとするSCSKのインフラソリューションを通じて、ベイシアグループ様のさらなる成長を全力でサポートさせていただきます。
粕谷 孝
本社所在地:群馬県伊勢崎市富塚町219番地4
設 立:2022年9月(株式会社ベイシアより事業分割)
U R L:
https://www.bg-sol.co.jp/
ベイシアグループは、ベイシア、カインズ、ワークマンなど物販チェーンを中心とした30社からなる企業集団で、2020年10月にグループ全体で年間売上1兆円を達成した。同グループ全体に共通したITインフラやITサービスを提供しているのが、ベイシアグループソリューションズである。ベイシアの理念である"For the Customers"をITの力で実現すべく、個社の戦略にあわせた「ハリネズミ経営」を支える包括的な事業を展開している。
2025年6月初版
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