データドリブンマネジメントを可能にするデータ活用基盤を
「Google Cloud Platform」と「Intelligent Data Management Cloud」で構築
株式会社山善
執行役員 最高情報責任者(CIO) 兼
営業本部 DX戦略部長
株式会社山善
営業本部 DX戦略部
主幹
「SCSKの優れた提案と製品選び、プロジェクトマネジメントにより、
機能、性能、コストのあらゆる点で申し分のないデータ活用基盤が実現できたと評価しています」
山善 執行役員 最高情報責任者(CIO) 兼 営業本部 DX戦略部長
坂田 正則 氏
「生産財」と「消費財」の専門商社である山善の創立は1947年。生産財・消費財に関する高い専門性や提案営業力、グローバルネットワークなどを強みとしながら業容、業績を拡大させてきた。
今日では、取引先や顧客との連携、共創によって「世界のものづくりと豊かなくらしをリードする」とのビジョンを掲げ、その実現に向け、蓄積された情報と経験則をもとに先を見越した戦略、戦術を実践する「Proactive(プロアクティブ)カンパニー」として顧客のビジネスに貢献し、社会の期待にこたえていくとの経営方針も打ち出している。
そうした同社がかねてから力を注いできた1つがDXだ。2021年にDX戦略部を営業本部内に設置。同部の部長で執行役員 最高情報責任者(CIO) の坂田 正則氏は、DX戦略の目的について「デジタル技術やデータの活用によって、営業力・商品開発力の強化や新事業の創出といったイノベーションを実現すること」と説明する。
坂田氏によれば、同社の強みである提案営業力は“個の力”(たゆまない自己研鑽と情報収集、そして考動)によって支えられてきたという。しかし、その反作用として、知見のバラツキも拡がり、結果、“組織知”(顧客やドメインに共通する有用なデータ知見)としてビジネスに十分に発揮できていない状況にあった。
「営業担当者のスキルや情報収集能力の高さは市場競争力の源泉です。ただ、取り扱う商品の幅や事業フィールドがグローバルに広がり、かつ、技術革新や顧客ニーズの変化が激しい今日では、個人の経験や情報収集能力だけに頼った経営には限界があり、プロアクティブカンパニーとしてお客様のビジネスに貢献していくことも難しいといえます。ゆえに、データにもとづいて顧客分析やビジネス予測を精緻に行えるような全社共通の基盤を築き、営業力や商品開発力のさらなる向上を図ることが必要とされたのです」(坂田氏)
こうした考えのもと、同社では全社の基幹業務システムを「SAP S/4HANA」へと移行させるのを機に、データ活用可能な全社共通基盤の構築に乗り出した。
山善におけるSAP S/4HANAへの移行プロジェクトは2019年に始まり、2022年8月に本番運用がスタートを切った。そのプロジェクトに合わせてデータ活用基盤の構築に乗り出した同社は、ITソリューションプロバイダーからの提案を募り、いくつかの選択肢を比較検討の土俵に上げた。結果として選んだのはSCSKの提案だ。これは、インフォマティカのデータ連携・統合サービス「Intelligent Data Management Cloud(以下、IDMC)」と「Google Cloud」のフルマネージド型データウェアハウスサービス「BigQuery」によって分析を可能にするデータ活用基盤を構築するというもの。IDMCのETL(データ抽出・変換・格納)機能を介し、SAP S/4HANAなどのデータソースとBigQueryを連携させる構成になっている。また、営業担当者などがBigQuery上のデータを抽出・活用するための仕組みとしてセールスフォースのBIプラットフォーム「Tableau」が採用されている。
DX戦略部 主幹の松井 邦旭氏は、SCSKの提案を選んだ理由の1つとしてIDMCと BigQueryの優位性を挙げる。
「IDMCとBigQueryはともに優れた製品で、例えば、IDMCはデータ連携の性能が高く、かつ、SAP S/4HANAをはじめとする多種多様なデータソースとデータウェアハウス(BigQuery)とをつなぐ多数のコネクタ類が提供されています。そのため、多大な開発工数やコストをかけずに、さまざまなデータソースとBigQueryを連携させられます。また、BigQueryはデータの保管にはほぼコストがかからないうえに操作が簡単でデータベース技術に精通していない人でも運用が行えます。まとめれば、IDMCとBigQueryによってスケーラブルで運用に手間がかからず、コストパフォーマンスにも優れたデータ活用基盤が実現できるわけです。その点は、SCSKによる提案の魅力でした」(松井氏)
加えて同氏は、SCSKの技術スキルも高く評価したという。
「当社のプロジェクトにアサインされたSCSKの人員はIDMCやBigQueryに関する技術知識が豊富で安心感がありました。加えて評価したのは、SCSKがSAP S/4HANAのデータベース構造にも精通していたことです。当社に提案を寄せたソリューションプロバイダーの中でBigQueryのようなクラウドネイティブの技術とSAPの技術の双方に通じているところはSCSK以外にありませんでした」
こうしてSCSKの提案を採用した山善は、SCSKの勧めに従い、データ活用基盤の機能や連携対象のデータソースを以下の3ステップに分けて段階的に拡充していく方式をとった。
【ステップ1】
「Google Cloud Platform」上にデータ活用基盤を構築し、SAP S/4HANAの販売管理データを蓄積していく
【ステップ2】
データ活用基盤に蓄積する対象を営業レポートや外部公開データへと拡張し、併せてIDMCのデータカタログ機能によるデータの可視化を図る
【ステップ3】
データ活用基盤に蓄積する対象を、山善のeコマースサイトやポータルサイトの顧客データなどへと押し広げ、AI(人工知能)/機械学習の技術を使いながら、顧客分析やビジネス予測につなげる
このうちステップ1の基盤構築作業は、2022年11月からの約7カ月間で予定どおりに完了し、2023年7月からの本番運用へと至っている。
「データ活用基盤の構築は当社にとって難度の高い取り組みでしたが、それが予定どおりに完遂できたのはSCSKの手厚い支援とプロジェクト管理能力の高さによるものです。また、柔軟な拡張が可能なIDMCとBigQueryの利点を生かし、基盤を段階的に拡充していく方式をとったことも物事がスムーズに進捗した一因です。仮に、いきなり重厚長大の基盤構築を推奨する提案を採用していたらプロジェクトが滞り、多大なコストを無駄に費やす結果になったはずです。その意味で、SCSKの提案は、製品選びと計画の立て方の両面で当社の力量やリソース、目的を十分に理解したうえで練り上げられたものといえます」(坂田氏)
図:山善様におけるデータ活用基盤構築後のシステム構成イメージ
2024年2月現在、データ活用基盤の構築を終えた山善は、ステップ2の作業を進めている。これまでの成果について松井氏は「操作性に優れたIDMCとBigQueryの採用で、特別な技術スキルを持たない人でもデータ活用基盤の運用が可能になり、結果的に運用の属人化も回避できました。これは限りあるIT人材の有効活用につながる成果であると見ています」と評価する。
また、同社では基盤の機能、データの拡充と併せて、データ活用の文化を営業組織内に定着させることにも力を注いでいる。その今後について坂田氏はこう展望している。
「すでに、当社のすべての営業担当者約800人がTableauを使い、BigQuery上のデータを分析・活用できる環境を整えており、SCSKによる支援のもとTableauの社内トレーニングも行ってきました。営業現場でのデータ利活用はまだまだ緒に就いたばかりです。経験値の高い営業担当者にとっても試行錯誤といえます。
ただ、データ活用には、経験の浅い若手でも、顧客ニーズやその変化を的確にとらえ、適切な提案が行っていける可能性があります。そうした可能性を最大限に引き出すためにも、基盤の機能やデータの拡充を図りながら、全社共通基盤としてデータ活用を社内に広く定着させたいと考えています」
山善様とは、2021年10月に開催されたイベントをきっかけに、約半年間に渡るご提案活動の結果としてパートナーとしてご選定をいただきました。お打ち合わせを重ねる中で本プロジェクトに対する山善様の期待値の高さを感じ、私たちもご要望実現に向け誠心誠意ご提案のブラッシュアップを重ねた結果ご評価をいただけたと考えています。今後も私たちのデータ活用における導入実績や製品に関連するスキル、ノウハウをベースにしたご提案を行い、データ活用基盤をより有効にご活用いただけるよう全力でご支援させていただきます。
末廣 義仁
所在地(大阪本社):大阪府大阪市西区立売堀2-3-16
創 立:1947年5月
U R L:
https://www.yamazen.co.jp/
株式会社山善(以下、山善)は「生産財」と「消費財」を専門に扱う商社。主たる事業として生産財関連の「機械事業」「産業ソリューション事業」「ツール&エンジニアリング事業」のほか、消費財関連の「住建事業」「家庭機器事業」をグローバルに展開している。2024年4月時点で国内52の事業所と海外14カ国・地域に66の事業所を構え、約3,300名の従業員を擁している。
2024年7月初版