YKK AP株式会社 様

製品輸送・配送の運行状況を迅速に把握し、
物流のBCPを強化する安心・安全ポータルを構築

働き方改革・生産性向上

AWSのAmplifyなどのサーバレス構成でシステム開発、
お客様との共創により3カ月の短サイクルで新たな機能を拡張

事例のポイント

お客様の課題

  • 輸送業者とYKK APが相互協力してホワイト物流を実現したい
  • 自然災害や事故/渋滞の発生時の遅延をできる限り回避したい
  • お客様に着実に製品をお届けするBCPの仕組みをつくる

課題解決の成果

  • 輸送状況に関するあらゆる最新情報を1カ所に集約
  • 関係者間での問い合わせの手間がなくなり情報収集・伝達が迅速化
  • 物流のBCPに対する全社的な意識の向上

導入ソリューション

  • AWSでサーバレスでのシステム開発(トラック輸送・配送状況 安心・安全ポータル)

YKK AP株式会社
ロジスティクス部 物流DX推進室

井上 高尚

YKK AP株式会社
ロジスティクス部 物流DX推進室

米 健太郎

「SCSKはAWSの技術にとても長けていると感じました。
私たちが望むサービスをアジャイルに実現していくその提案内容は非常に満足度が高いものでした」

YKK AP株式会社 ロジスティクス部 物流DX推進室

井上 高尚

背景・課題

自然災害発生時などの遅延をできる限り回避し
お客様に着実に製品を届ける仕組みづくり

 「窓のある暮らし」を提案し、住まいの窓・サッシ、ドアからビルのファサードまで。また新築やリフォームで住まいを彩る住宅建材からカーテンウォールまで、幅広い商材を手がけているYKK AP。2022年度は一般財団法人 省エネルギーセンターが主催する「省エネ大賞」の製品・ビジネスモデル部門において、住宅北陸支社が4社共同で提案した「中小工務店向け支援型高性能全館空調システム」が資源エネルギー庁長官賞(建築分野)を受賞するなど、近年は脱炭素化を牽引する建材メーカーとしても評価を高めている。

 そんなYKK APが今、注力しているのが物流DXに向けた取り組みだ。

 昨今、物流業界は非常に深刻なドライバー不足の状況にある。さらに2024年からは、ドライバーの過酷な労働環境を改善すべく時間外労働が厳しく規制されるため、輸送の需要を満たすドライバーの数はますます足りなくなる。

 YKK AP ロジスティクス部 物流DX推進室の井上 高尚 氏は「製品を運べなくなるのは、私たちにとって重大な経営問題です。ではいかにして継続的な輸送を確保するのか――。苦しい状況にある輸送業者とYKK APが相互に協力して業務の簡素化・効率化を図り、よりスマートな“ホワイト物流”の実現を目指す必要があります」と、物流DXが求められている背景を示す。

 もっとも一口で物流DXといっても、その領域は非常に広範囲に及ぶ。そこでYKK APが最初のテーマとして着手したのが物流のBCP(業務継続計画)強化である。

 YKK AP ロジスティクス部 物流DX推進室の米 健太郎 氏は「近年、大型台風やゲリラ豪雨、豪雪、地震といった自然災害の影響によって物流が遅延・寸断されるリスクが増加しています。そうしたリスクをできる限り回避し、お客様へ着実に製品をお届けする仕組みづくりこそが私たちの輸送/配送において実現すべきBCPであると位置づけました」と語る。

解決策と効果

サーバレス機能を活用したポータルを構築、
APIを介して気象・交通情報も取り込む

 上記の経緯からYKK APが構築を目指したのが、トラックに積載した製品情報や顧客情報のほか、外部サービスを通じて入手したトラックの位置情報や渋滞/事故情報、天気情報など、配送運用状況管理に必要なあらゆる集約する「安心・安全ポータル」だ。

 「このポータルを関係者間で共有し、自然災害により渋滞が発生した際にもその箇所を事前に回避することでドライバーの安全を守り、お客様には荷物の大まかな到着時間を予測してお知らせするなど安心をお届けしたいと考えました」(井上氏)

 なお、YKK APでは製造所側での製品の検品/出荷情報とトラックを紐づけて管理する「ロジスティクス プラットフォーム」をアマゾン ウェブ サービス (AWS)上で運用しており、安心・安全ポータルもこのプラットフォーム上に構築することにした。

 とはいえ、ロジスティクス部自身がAWSを基盤とするクラウドサービス開発についての専門的な知識やスキルを持ち合わせているわけではない。そこで今回のプロジェクトのパートナーに選定したのがSCSKである。

 「ベンダー数社の提案を比較したのですが、SCSKはAWSの技術にとても長けていると感じました。AmplifyやFigmaといったサーバレスの機能を活用したWebサイトの構築や、APIを介した外部情報の取り組みなど、私たちが望むサービスをアジャイルに実現していくその提案内容は非常に満足度が高いもので、SCSKと組めばユーザーに対して短期間で成果を示すことができると判断しました」(井上氏)

 実際に安心・安全ポータルの開発は、3カ月スパンの短いサイクルで成果を出しながら機能を拡張していくスタイルで進められた。

 2022年の4~6月の第1ステップでは、安心・安全ポータルのWebサイトを構築。「トラックの現在位置を地図上にビジュアルに表示するなど、ユーザーが見たくなる画面づくりにこだわるとともに、気象情報や交通情報なども取り込んで同じ画面上で一元的に表示することを目指しました」(米氏)

 続く7~9月の第2ステップでは、安心・安全ポータル上で双方向の情報伝達をサポートすべくチャット機能を実装した。「この段階から先行ユーザーへの公開を開始し、サービスの使用感などについて幅広い意見を集めました」(米氏)

 そして10~12月の第3ステップでは、ユーザーから要望の多かった各エリアの輸送状況の書き込み機能を実装。「そのほかSNSと連携して取り込んだ気象情報や災害情報などをポータル上に一元表示するなど機能強化を図り、BCPの観点から目指したことは一通り実現しました」(米氏)

 こうして2023年1月より正式に運用を開始した安心・安全ポータルは、YKK APの全国各地の拠点に利用を広げている。

 「輸送状況に関するあらゆる最新情報が1カ所に集まる状態を作り出せたことが、今回のプロジェクトの最大の効果です。ロジスティクス部から各エリアの担当者、さらには運送会社へとバケツリレーのように問い合わせていた手間はなくなり、情報収集・伝達は大幅にスピードアップしました」(井上氏)

 「安心・安全ポータルのリリースとともに物流のBCPに対する意識が全エリアで高まっていることを実感しています。実際に2022年12月から2023年1月にかけて大雪が降ったエリアでも大きな効果を発揮しました。SCSKには、非常に価値の大きいクラウドサービスを実現していただき感謝しています」(米氏)

今後の展望

広範な物流DXを見据えた
「ロジスティクスポータル」への発展を目指す

 現時点では安心・安全ポータルの利用範囲はYKK AP社内に限定されているが、これを今後は運送会社、さらには荷物を輸送中のドライバーまで広げていく考えだ。

 「安心・安全ポータル上ではお客様の荷物の情報を扱っていることから、まずセキュリティに関する課題をクリアすることが大前提となりますが、クラウド上に構築したこのサービスのメリットを最大限に発揮すべく、モバイル端末からのアクセスにも対応させていく計画です。1年後といった中長期的なスパンではなく、数カ月後のリリースを目指したスピード感で取り組んでいます」(米氏)

 さらにその先で見据えているのが、より広範な物流DXへの対応だ。

 「今後に向けてはBCPだけにとどまらず、引き続きSCSKのサポートを得ながら、製品輸送に関するあらゆる課題を包括的に解決するプラットフォームに発展させていくという意気込みをもって臨んでいます。その過程のどこかのタイミングで、安心・安全ポータルから『ロジスティクスポータル』へと昇華させることが目標です」(井上氏)

図:トラック輸送・配送状況 安心・安全ポータルの概要
図:トラック輸送・配送状況 安心・安全ポータルの概要

SCSK担当者からの声

今回のプロジェクトでSCSKは、単にYKK AP様の要求に応える技術面のサポートをするだけでなく、第三者的な視点から「こういう仕組みを整えれば、輸送/配送の困り事を改善できるのではないか」「こういった機能を提供すれば、ユーザーからもっと喜ばれるのではないか」といったアイデアを積極的に出し、YKK AP様からも受け入れていただきました。YKK AP様と信頼関係を築き、同じ目標に向かってプロジェクトに取り組んできたことで、安心・安全ポータルは大きな相乗効果を生み出せたと考えています。SCSKは今後もYKK AP様における物流DXの実現を目指し、引き続き尽力していきます。

ソリューション事業グループ
マネジメントサービス事業本部
テクノロジーサービス部

平須賀 皓起

産業事業グループ
製造システム事業本部
製造システム第三部

小田島 崇


お客様プロフィール

YKK AP株式会社

所在地:東京都千代田区神田和泉町1番地
U R L:
https://www.ykkap.co.jp/

「Architectural Productsで社会を幸せにする会社。」をパーパスとして掲げ、商品の開発・製造・販売を通して幸せな社会をつくることを自らの存在意義として事業を展開している。快適な住空間をつくる窓やドア、インテリアやエクステリア、美しい都市景観をつくるビルのファサードなど、さまざまな建築用プロダクツを通して、これからの時代にふさわしい事業価値を創造するためのモノづくりに取り組んでいる。

2023年2月初版