ニーズや戦略に迅速に対応するため勘定系フロントシステムを刷新
独自のフレームワークで、俊敏なアプリケーション開発が可能に
auじぶん銀行株式会社
IT戦略統括本部
IT本部※ 副本部長
auじぶん銀行株式会社
IT戦略統括本部 IT本部
IT戦略部兼 IT開発部※ 次長
auじぶん銀行株式会社
IT戦略統括本部 IT本部
IT開発部※ 調査役
「CX(顧客体験)をさらに高めるシステム基盤が出来上がりました。
これからもお客様が求めるサービス・商品を『速く』届けるために、
新しいシステム基盤を活用していきたいと考えています」
IT戦略統括本部 IT本部 副本部長
前田 和伸 氏(所属会社、役職は取材当時のもの)
スマートフォンを中心にさまざまな金融サービスを提供するネット専業銀行であるauじぶん銀行。2008年の設立以来、右肩上がりの成長を続け、2021年9月末時点で約450万口座まで拡大している。
これまで同行の勘定系システムはパッケージシステムを使用しており、バックエンドの「コアバンクシステム」や、チャネル層のWebブラウザやスマートフォンアプリの制御をする「フロントシステム」がオールインワンで構成されていた。しかし、設立以来長年にわたるカスタマイズによりシステムが複雑化していた、システム全体が密結合で修正・変更時の難易度が高く時間がかかっていた、データベースのバージョンアップ時などにシステム停止を余儀なくされていた場合があったなど、保守性の面で課題があったという。
そこで同行では、既存システムがEOSを迎えるのを機に、2015年8月より新たな勘定系システムの構築に向けた検討を開始。勘定系システムのアーキテクチャを一新してコアバンクシステムとフロントシステムに分けることにし、前者には新たな勘定系パッケージを採用、後者は新たにスクラッチ開発することが決定した。その過程のなかでSCSKもメンバーとして参画することになった。
コアバンクシステムとフロントシステムに分けた背景についてIT戦略統括本部 IT本部 副本部長の前田 和伸氏(所属会社、役職は取材当時のもの)は、「従前の勘定系パッケージの課題・背景を踏まえ、次世代システムに刷新するにあたっては、新たなニーズや戦略に機動的に対応でき、将来にわたり競争力の源泉となるシステムインフラを構築する必要があったため、コアバンクシステムとフロントシステムに分離することを構築方針にしました。部品化・疎結合などシステム構造の抜本的な見直しを行い、スケーラビリティ・柔軟性の確保を行うことで、システム投資削減、開発スピードアップ、システム安定稼働、大規模更改不要となる効果を期待しました」と振り返る。
フロントシステムの重要性についてIT戦略統括本部 IT本部 IT戦略部 兼 IT開発部 次長の吉川 幸伸氏は次のように話す。
「リアル店舗をもたない当行にとって、フロントシステムはお客様とのメインの接点であり、預金、融資、為替をはじめ、くじ・公営競技、決済サービスのシステム間連携、セキュリティサービスなど多種多様な業務に利用されます。そのため、フロント部分を戦略領域として位置付けて、スクラッチで開発することにしたのです。さらに内部連携については、API化を行うことで柔軟なカスタマイズ、開発スピード向上が図れると考えました」と話す。
このフロントシステムの開発を託されたのがSCSKだった。SCSKをパートナーに選定したのは、メガバンクへのフレームワークや認証基盤の導入実績があり信頼感が持てたこと、JavaEEの各要素の緻密な分析に基づく高度な知見に裏打ちされた提案を評価したことなどが理由だという。
こうして2017年7月に新たな勘定系フロントシステムの構築プロジェクトがスタートした。では、フロント系システム構築にあたりauじぶん銀行では、どのような要件を重視していたのだろうか。
「新たなニーズや戦略に機動的に対応できるようにするための先進性、拡張性、アプリケーションの高い生産性、インターネットバンキングを提供するためのセキュリティの確保を特に重要視していました。これらを実現し、長期にわたって維持するためには、アプリケーションの土台となるフレームワークを計画段階から検討し、アプリケーション開発時点において構築しておくこと。また、アプリケーションとフレームワークの実装においてOSSを排除し、JavaEEの機能ベースに実装する必要があると考えていました」と話すのはIT戦略統括本部 IT本部 IT開発部 調査役の塚田 優也氏だ。
そのため、ネットバンク特有の要件として、JAX-RS、APIに対する拡張性をフレームワークにもたせた。これにより開発者は容易にアプリケーションを開発できるようになる。さらに、細かなバージョンアップが可能な「ローリングリリース」にも対応できるようにした。従来は毎月1回メンテナンス時間を設け、システムを完全に停止してバージョンアップをする必要があったが、軽微な修正であれば毎日でもバージョンアップできるようになる。この2つを備えることで、大幅な拡張性が期待できる。
プロジェクトは、2018年から2019年にかけて設計・構築、2020年後半から総合切替検証、移行リハーサルなどを行い、2021年5月に無事サービスインすることができた。
プロジェクト期間全体を通じて、SCSKの対応も高く評価されている。
「開発期間を通して、変更管理/現行システムの追付き案件の取り込みが多く、プロジェクト管理や人の調整が大変だったかと思います。プロジェクト期間が非常に長かったためメンバーの変更などもありましたが、スムーズに進めてもらえました」(吉川氏)
また、サービスインを半年後に控えたころにGoogle Chromeブラウザに仕様変更があり調査したところ、開発完了している一部の商品サービスに影響があることが分かった。
「このとき、SCSK担当者から素早く対処策について複数の提案を受け、影響度合いや、メリット・デメリットについて適切に確認でき、スケジュールに影響を及ぼすことなく対処できました」(塚田氏)
図:SCSKが担当した勘定系フロントシステムと認証サーバー
auじぶん銀行は、スマートフォンを中心とするインターネットバンキングに特化した金融サービスを提供する銀行であり、これまでも顧客接点となるフロントシステムをとくに重視していた。今回運用を開始した新しいフロントシステムについて前田氏は、「CX(顧客体験)をさらに高める基盤が出来上がったので、これからもお客様が求めるサービス・商品を『速く』届けるために活用していきたいと考えています」と抱負を述べる。
今後について吉川氏は、「これからは新たな顧客ニーズや事業戦略に応える機動的なシステム基盤の重要性が高まることが予想されます。今後はアジャイル開発、内製化の取り組みについてもSCSKと共同で検討し、顧客ニーズにあったサービス・商品を迅速に提供することをテーマに取り組んでいく予定です」と話す。
また塚田氏は「SCSKは、新しいシステムを構築・運用・保守するにあたって、システムの設計・開発から運用管理までを一貫して対応いただけます。これからも末長く良い関係を続けていこうと思います」とSCSKに期待を寄せる。
今回運用を開始した拡張性・アプリ生産性の高い新しい勘定系システムは、auじぶん銀行が目指す顧客体験を重視したサービス・商品の提供基盤として大いに貢献していくことは間違いないだろう。
銀行業という社会インフラを担うお客様にとって、フレームワークをフルスクラッチするということはチャレンジングな取り組みであったと思います。そのパートナーとして弊社を起用いただけたことは光栄であり、担当行員様には目指す銀行の姿を熱く語っていただき、どのような仕様にするか活発な意見交換により構築を進めることができました。今後もお客様が目指されるエンドユーザが求めるサービス・商品を「安全に」「速く」届けられるシステム構築に取り組んでまいります。
高尾 健一
所在地:東京都中央区日本橋1丁目19番1号 日本橋ダイヤビルディング14階
U R L:
https://www.jibunbank.co.jp/
2008年にKDDI株式会社と株式会社三菱UFJ銀行により共同で設立されたネット専業銀行。右肩上がりで成長を続け、現在は口座数約450万口座、預金残高約2兆円(いずれも2021年9月末時点)を達成している。『じぶんのいる場所が、行く場所が、ぜんぶ銀行になる。そういうスマホの自由さ、便利さを銀行にも。』という思いを込めて、ブランドメッセージ「銀行を連れて、生きていこう。」を掲げ、生活の中心となったスマートフォンを中心としたさまざまな金融サービスを提供している。
2022年2月初版