前田建設工業株式会社 様

高品質・安心安全な基幹システム基盤の実現を目指し
高可用性のマネージド型クラウドサービス「USiZE」を採用

顧客接点の高度化

現行システム環境を理解したSCSKがプロジェクトを強力に支援
データ仮想化機能の導入により、短時間でのバックアップも実現

事例のポイント

お客様の課題

  • 既存の基幹システム基盤で稼働する物理サーバーの保守期限が迫っていた
  • 特殊なバックアップの仕組みも含む“100%クラウド化”を目指していた
  • 大半の要求実現が依頼書ベースでの対応となっており柔軟性に欠けていた

課題解決の成果

  • バックアップの仕組みも含めてクラウド化する「USiZEシェアードモデル(3G)」を採用
  • 可用性・機密性・セキュリティを担保しながら運用の柔軟性、拡張性を確保
  • 基幹システム基盤にかかる運用負荷・コストを従来比約3割削減

導入ソリューション

USiZEシェアードモデル(3G)

前田建設工業株式会社
情報システム総合センター
総合センター長

廣田 憲治

前田建設工業株式会社
経営革新本部
DX推進室 主査

堀内 真人

前田建設工業株式会社
情報システム総合センター
ICTエンジニア

岩﨑 博昭

「基幹システム基盤の移行にあたり、トラブルもなく予定どおりにリリースを迎えることができました。
SCSKのプロジェクトマネージメントに感謝しています」

情報システム総合センター長

廣田 憲治

背景・課題

基幹システム基盤の更改時期を迎え
“100%クラウド化”を実現する新しい基盤を検討

 前田建設工業は2019年1月に創業100周年を迎えたのを節目に、次の100年後のあるべき姿「NEXT100」を掲げるとともに、次の10年へ向けた中長期改革プラン・NEXT10を策定した。NEXT10では、請負と脱請負の融合による新たなビジネスモデルを構築し、「総合インフラサービス企業」を目指すことを打ち出している。その実現に向けた取り組みの一環として、同社はデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に着手。2019年に「DX推進室」を設置するとともに、「業務プロセス・ルールチェンジによる標準化」「データを蓄積・分析・活用するためのシステム整備」「データを扱う社員の意識やITスキルを高める人材育成」を3本柱に位置付け、DX推進を加速させている。

 そんな前田建設工業では、DXを推進する上でも大きな役割を果たすことになる「第4次基幹システム基盤」の構築に向けた検討を開始した。

 情報システム総合センターのセンター長を務める廣田 憲治氏は、「当社の基幹システム基盤は、2005年にSCSKデータセンターのホスティングサービスを利用した物理サーバーから始まり、第2次ではサーバー仮想化を導入、さらに第3次ではSCSKのクラウドサービス『USiZEシェアードモデル(2G)』を利用したプライベートクラウドへと移行してきました。ただし第3次までは一部に物理サーバー及びストレージを利用したオンプレの仮想基盤が残っており、その仮想基盤の保守切れが目前に迫っていました。これをきっかけに第4次基幹システム基盤の検討を開始したのです」と、その経緯を話す。

 仮想基盤が残っていたのには理由があった。同社では基幹システムのデータベースを毎日バックアップし、そのバックアップデータを別サーバにマウントすることで、DWH(データウェアハウス)と連携させデータ活用している。当時のクラウドでは大量のデータを短時間でバックアップできないという課題があり、第4次ではこのバックアップも含め、“100%クラウド化”を目指すことにしたわけだ。

 もう一つ、既存の第3次基幹システム基盤には解決すべき課題があった。

 「従来の基盤は大きな“塊”、いわゆる一枚岩のシステムになっており、運用の柔軟性に欠けていました。そこでシステム基盤をクラウド上でマイクロサービス化し、柔軟性を確保する基盤を構築することを指向したのです。またサーバー運用のオペレーションについても、自社で対応できるようにしたいと考えました」(廣田氏)

解決策と効果

バックアップの課題を「USiZEシェアードモデル(3G)」で解決
プロジェクト推進・運用体制の実績でSCSKを選定

 前田建設工業が第4次基幹システム基盤の検討を開始したのは、2018年夏のことだ。当初アプリケーションの観点から検討を始め、稼働インフラに関する検討は2019年にスタートさせた。

 「新しい基幹システム基盤として、第一候補に挙げていたのはAmazon Web Services(AWS)です。すでにビッグデータ基盤をAWS上に構築した実績があり、基幹システム基盤もAWSに集約することが、運用の柔軟性やコスト削減効果が得られると考えたからです」と話すのは、経営革新本部 DX推進室の堀内 真人氏だ。

 前田建設工業では、従来から基幹システム基盤の構築AWS・運用に携わってきたSCSKをはじめ、AWSを得意とする複数のシステムインテグレーターに提案を依頼。各社からの提案内容を比較検討した結果、引き続きSCSKを選定することになった。

 しかし、SCSKが提案したのはAWSではなく、「USiZEシェアードモデル」の最新バージョンを基盤としたものであった。AWSでは、「基幹システムのデータベースを毎日短時間でバックアップする」という課題が、実現不可能だったからだ。

 「当社では、2TBのデータを約3分でバックアップし、それをサーバーからマウントしてバッチジョブを走らせるという特殊なバックアップの仕組みを使用しています。この仕組みを、AWSで実現するには2時間程度かかってしまいます。SCSKはそうした事情も汲み取り、USiZEシェアードモデル(2G)を改良した、特殊なバックアップ要件を実現できる『USiZEシェアードモデル(3G)』へ移行するという提案をしてくれたのです」

 USiZEシェアードモデル(3G)ならば、可用性・機密性・セキュリティを担保しながら運用の柔軟性、拡張性を確保し、コスト削減効果も期待できる。また、データ仮想化機能が用意され、バックアップの仕組みもクラウドへ移行できる。

 また、SCSKが基幹システム基盤の構築を過去3回にわたって実施した実績も高く評価された。

 「別のベンダーに委託するとなると、基幹システムの説明を一からしなければならないなど、当社側の負担が大きくなることが懸念されます。しかしSCSKならば、既存のシステムを理解した上で、基盤構築の要件定義や設計に関する作業、移行のリスクを最小化できますし、運用の引継ぎも不要です。これらを考慮し、今回もSCSKへ委託することに決めました」(堀内氏)

 第4次基幹システム基盤の構築プロジェクトが始動したのは、2019年12月のこと。それからおよそ1年かけて基盤の構築と移行、テストを実施し、2020年12月に新しい基盤を本番稼働させた。

 「第3次基幹システム基盤で稼働していた約170台のサーバーをUSiZEシェアードモデル(3G)へと移行しましたが、SCSKがプロジェクト管理も含めて確実に実施してくれたこともあり、非常にスムーズに移行を完了することができました。これまでさまざまなプロジェクトを経験してきましたが、こんなにすんなりリリースできたのは初めてです。」と話すのは、情報システム総合センターの岩﨑 博昭氏だ。

 第4次基幹システム基盤が本番稼働してからまだ間もないが、すでに導入効果も見えてきているという。

 「一番の効果は、運用の柔軟性が向上したことです。特にWebポータル画面を使ってサーバーの起動・停止、スケールアップ・ダウンなどを当社側で実行できるようになったことにメリットを感じています。また運用の負荷やコストについても、従来に比べておよそ3割程度削減できていると感じます」(岩﨑氏)

今後の展望

運用監視の面でも高い満足感
今後は運用の自動化も推進する計画

 こうして第4次基幹システム基盤を稼働させた前田建設工業だが、移行だけではなく、運用監視面でも満足度が高いようだ。

 「何か問題があったときにも迅速に連絡いただいて、またSCSK側で対応できる部分は迅速に対応してもらっています。そういった面で非常に安心感があります」(廣田氏)

 第4次基幹システム基盤ではすべてを基幹システムの中に作るのではなく、コンテナ技術を活用しながらマイクロサービスとして切り出し、サービス間や外部システムとの連携したシステムへと刷新する取り組みを進めている。

 一方で、運用のさらなる高度化も今後目指していく計画だ。

 「運用については、自動化がまだあまり実現できていないところが課題だと認識しています。現在SCSKで運用回りのAPIを整理しているということなので、将来的にはサーバーの追加や削除といった運用作業を自動化する仕組みも取り入れたいと考えています」(廣田氏)


図:本番データを短時間でバックアップし再活用

SCSK担当者からの声

 前田建設工業様との長年のお取引にて培ったノウハウを最大限に活かし、高品質短納期にて無事リリース出来たこと、運用面を中心に効果が実感出来たことを高く評価いただきました。今後もお客様の目指されている「総合インフラサービス企業」への変革の一助になれるよう、引き続きご支援させて頂きます。

ソリューション事業グループ
マネジメントサービス第三事業本部
流通マネジメントサービス第一部

徳山 裕幸

 今回の基幹システム基盤の構築では、過去3回の構築経験を活かしてお客様のご意向を的確に捉え、ご担当者様に負担をかけないようにして設計・構築を進めてまいりました。この点についてご評価いただき光栄に思います。引き続き、運用を通じてお客様の事業が安定的に継続するよう努めてまいります。

ソリューション事業グループ
マネジメントサービス第三事業本部
流通マネジメントサービス第一部

佐藤 俊明


お客様プロフィール

前田建設工業株式会社

所在地:東京都千代田区富士見2-10-2
U R L:
https://www.maeda.co.jp/

1919年創業の前田建設工業は、青函トンネルや本四連絡橋をはじめとするダム・トンネル・橋梁などの大規模インフラ建設事業に数多く携わってきました。1960年代には海外進出を果たし、1980年代以降は都市再開発、エネルギー関係、工場、病院、高層マンション建設など事業を拡大。近年では「総合インフラサービス企業」を目指して「脱請負」にも注力し、仙台空港や愛知県有料道路のコンセッション(公共施設等運営権)事業も展開しています。

2021年3月