三菱地所グループの働き方改革とDX推進を支える
新コミュニケーション基盤を構築
Office 365
懸案だったNotesマイグレーションも、SCSKの支援なくしては実現できなかったと考えています。
今後はOffice 365の業務領域含め、さらなる利活用や働きやすさの追求に向けて、
技術支援いただけることを期待しています。
DX推進部 主事
大原 悠司 氏
国内最大級の大手不動産デベロッパーである三菱地所では、2019年4月にデジタルトランスフォーメーション(DX)推進とグループ全体の情報システム企画を担当する「DX推進部」を設立。デジタルテクノロジーも活用し、ビジネスモデル革新をグループ横断的に推進している。
「DX推進部ではさまざまなシステム環境の整備を進めていますが、なかでもグループのコミュニケーション基盤を改めて整備することが急務でした」(三菱地所 DX推進部 主事 大原 悠司氏)
三菱地所グループでは、グループ各社がメール、スケジューラー、掲示板、チャット、Web会議などの各種コミュニケーション基盤を別々に構築・運用している会社が存在した。これがグループ各社間の業務連続性を阻害し、情報共有・活用を難しくしていた。
「メールや業務アプリケーションの実行基盤としてIBM Notes/Domino(現・HCL Notes/ Domino)を20年近く使い続けてきました。グループ共通のコミュニケーション基盤として必要なサービスが揃っている、かつ、コミュニケーション市場でデファクトスタンダードであるOffice 365にすることとしました」(大原氏)
しかし、実際に移行・導入を進めるには検討を要する事項が多岐にわたっていた。その中には例えば、リモートアクセスやモバイルアクセスにおけるセキュリティ、他のクラウドサービスも含めた認証システム、各会議室に設置された会議室予約システム用端末との連携など、Office 365の機能だけでは実現が難しいものもあった。
「特に大きな懸案事項だったのがNotes DBの移行でした。三菱地所グループではNotes DBで開発した業務アプリケーションが600以上も稼働していました。長年利用してきたNotesを廃止するのにあたり、ユーザーが混乱せずに業務を継続できるように配慮しながら、業務プロセスを見直して業務アプリケーションを開発しなければなりません。そのためには、改めてプロジェクトの企画・構想を練り直す必要がありました」(大原氏)
2017年夏ごろから開始された企画・構想フェーズの段階からSCSKはプロジェクトに参加し、解決すべき事項を網羅的に整理。2018年冬から要件定義など実装フェーズへ、SCSKと実施することとなった。
「当社が目指すコミュニケーション基盤の実現可能性が高かったのがSCSKです。Office 365の導入やNotesマイグレーションに豊富な実績と経験を評価しました」(大原氏)
SCSKのノウハウ・知見を活かしながらプロジェクトの方針・方向性、および実現性・将来性・運用コストなどについて、三菱地所、MJK(※)と議論を重ねた。その結果、メール、スケジューラー、掲示板などのグループウェア機能を刷新する「Office 365導入プロジェクト」と、Notes DBを新しいシステム基盤へ移行する「脱Notesプロジェクト」に分け、同時並行で走らせることにした。Notes DBの移行作業においては、Office 365を中心とした移行先だけでなく、移行元のNotesに関してもさまざまな知見が求められ、両環境について豊富な知見を持つSCSKは重要な役割を果たした。
※MJK(メック情報開発):三菱地所グループ全体の情報システム開発・運用・保守を担当
「各グループ会社で、それぞれIT環境が異なる部分があります。それをSCSKに理解してもらうのには苦労が伴い、当初は細部において障壁が発生すると喧々諤々の議論を重ねていました。しかし、お互い率直に意見をぶつけ合う時期を経て、円滑に導入が進められました」
(メック情報開発 システム基盤部 次長 湯浅 枝里氏)
Office 365導入プロジェクトでは、従来グループ各社ごとに異なっていたメールとスケジューラーを「Exchange Online」、Notes DBで開発していた掲示板を「SharePoint Online」へと移行。チャットと在席確認、Web会議は「Skype for Business Online」を採用することにした。また、Office 365だけでは解決できない部分については、シングルサインオンに「HENNGE One」といったサードパーティ製品も導入している。こうして出来上がった新しいコミュニケーション基盤は2018年10月から段階的にリリース。2019年度末(2020年3月)までにグループ20社約7,000ユーザーが移行を済ませている。
「日常的に利用するメールやスケジューラーなどのグループウェアが変わることは、ユーザーにとって大きな負担となります。そこでプロジェクトでは、切り替えによる負担を最小限に抑えるために、SCSKの協力を得ながら入念な教育計画を立て、マニュアル、FAQ、動画コンテンツなどさまざまな教育コンテンツを準備しました。また、ハンズオンセミナーの開催やユーザーの問い合わせ窓口となるヘルプデスクの増強など柔軟な導入サポート体制も用意したことで、大きな混乱もなくリリースすることができています」(湯浅氏)
一方、脱Notesプロジェクトで最初に実施したのは、Notes DBの棚卸し作業だった。Notes DBで開発した600以上の業務アプリケーションについて事業部門に利用状況を問い合わせ、不要と判断されたおよそ6割のNotes DBを廃止した。必要と判断された4割のうち、情報共有用途だけに使われているものはオンラインストレージの「Box」へ移行。掲示板はOffice 365のSharePoint Onlineを使って新しい業務アプリケーションを開発し、SharePoint Onlineでは実現が難しいものについては別の開発基盤をベースに個別開発を行った。
「Notes DBの開発は基本的にMJKの担当でユーザーには作成を許可しておらず、ガバナンスが効いた状態でした。それでも600を超える大量のNotes DBをMJKが単独で棚卸しすることは難しく、棚卸しと移行先の決定については社員理解による協力があったおかげで、SCSKの全面的な協力により実現できたと考えています。移行先ごとに異なるベンダの協力も得ましたが、SCSKに脱Notesの全体管理、プロジェクト推進を支援していただいたので、難しいNotesマイグレーションも非常に短期間のうちに実現することができました」(湯浅氏)
三菱地所グループでは、2019年度内に新しいコミュニケーション基盤への移行を大方完了させている。SCSKでは、Office365導入や脱Notesプロジェクトを進めながらも、継続的にさらなる改善も続けている。これまでのSkype for Business Onlineに代わって、緊密なコミュニケーションを生み出す下地として「Microsoft Teams」を提案。組織の枠にとらわれない自由なコミュニケーションをTeamで簡単に始められるようにした。また、Teamsの「いいね」機能を使うことで、メールよりスピーディな意思表示を可能とし、いつでも、どこからでも、どのデバイスからもコミュニケーションでき、業務がすぐに開始できるようになった。利便性とセキュリティとのバランスを取りながらTeamsを設計・展開することで、実際に新たな事業創出のきっかけにもなっている。
「Teamsの導入により、セキュリティを担保しながら社外の取引先も含めたグループワークが可能になり、これまでのメール依存型のコミュニケーションから脱却した新しい働き方を実現できました。運用面では、組織別にOffice 365の利用状況・アクセス状況を可視化して効果を分析したり、監査・セキュリティ対策としてのログ保管・分析の仕組みを導入したりといった取り組みを順次進め、PDCAサイクルを持続的に回し、利活用に力をいれています」(湯浅氏)
また今後は、Office 365を業務領域でさらに活用するために、データ分析基盤「Power Platform」やAIの活用も視野に入れている。
「SCSKの協力により働き方改革と業務生産性向上、さらにセキュリティを強化したコミュニケーション基盤の刷新を成し遂げることができました。懸案だったNotesマイグレーションも、SCSKの支援なくしては実現できなかったと考えています。今後はOffice 365の業務領域含めたさらなる利活用や働きやすさの追求に向けて技術支援いただけることを期待しています」(大原氏)
Office 365の導入は働き方改革を下支えする基盤であり、かつ、DX推進の起点であるとも考えています。今後はOffice 365のさらなる利活用により、お客様の業務領域での貢献や働きやすさの追求にお役に立ちたいと考えています。
本橋 為大
脱Notesでは「Notesに蓄積された必要な資産活用」「無駄の削減(不要DB棚卸、移行コスト削減、統一化)」を意識して取り組んでいます。今後は、さらにPower Platformも活用した最適な移行、資産活用を実現します。
中川 和哉
所在地:東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル
U R L:
https://www.mec.co.jp/
1937年に設立された国内最大級の大手不動産デベロッパー。「まちづくりを通じた社会への貢献」を掲げ、日本有数のビジネス街である大手町・丸の内・有楽町エリアを中心にオフィスビル・商業施設の開発・運営事業を展開する。グループ全体では、ビルマネジメントや住宅、投資など幅広いビジネスを展開している。
2020年4月