1.はじめに
アジャイル開発の現場でよく使われている「ペアワーク」や「モブワーク」ってご存じでしょうか。
1つの作業を、2人(ペア)あるいは3人以上(モブ)で進める作業スタイルのことです。
1人がPCを操作し、他のメンバーが内容を考えたりアイデアや改善点などを会話したりしていきます。
体験したことがある方ならば、チームの生産性や創造性を高める強力な手法であることを十分に実感してもらっているでしょう。既に多くの方が実践しているAIを活用した作業スタイルは、ペアワークに近い状態を実現できていると言えるかもしれません。
でも、体験したことのない周りの方や上司にその効果を説明することに苦労したことはないですか。「1つの作業を2人以上でやるなんて効率悪い」「ただしゃべってるだけなのではないのか」などなど。
今回の技術ブログでは、そんな方々を説得するためのネタとして、あるいは未体験だけど興味を持っている方の背中を押すために、ペアワーク・モブワークの「効果」についてご紹介します。
【ペアワーク・モブワークの効果】
5つの観点でお伝えいたします。
2.フローの効率の向上
「みんなで一緒に作業⇒だから非効率」。まずそんな論理が頭に浮かびますよね。
でも、今の作業の進め方は本当に効率的ですか?作成は終わったけどレビューまで待たされたことはありませんか?
ペアワーク・モブワークでは、関係者がその場に揃っていることで、待ち時間がなくなり、
作成・レビュー・修正・承認といった各工程を、同時に、その場で進めることが可能になります。
結果として、課題の発生から解決までのリードタイムが短縮され、チーム全体のフロー効率が向上します。
3.創造的な成果
会話しているときに、自分では思ってもみなかったアイデアを自分の口からしゃべっていた経験はありませんか?
ペアワーク・モブワークを実施することで、ひとりで黙々と作業を進めるだけでは得られない創造的な成果を得る可能性が広がります。
優秀な個人に頼るのではなく、1+1=3となるようなチームの総合力で勝負することを目指すアジャイルに向いた仕事の進め方です。
4.コミュニケーションの改善
ペアワーク・モブワークを実施すると、自然と会話が生まれ、みんなで楽しくワイワイ作業することができます。そのような状態になると、どんな効果を得ることができるでしょうか。
まず、心理的安全性] (※)が高まります。今時の現場はこれが大事ですよね。
次に、手が止まる時間が少なくなります。特に提案書や企画書の作成のように、難易度が高くて考える時間が多い作業におすすめです。わからなくてもとにかくしゃべることで、何かしら前に進めることができますよ。
最後に、認識齟齬が発生しそうになったとき、すぐその場で解消することができます。ちょっとした認識違いを放っておいてあとで大変なことになった経験は誰しもお持ちだと思います。
(※)心理的安全性とは、自分の考え、疑問や失敗を安心して共有できる状態を指します。チームや組織の中で、他者からの否定や非難を恐れることなく発言できる環境が整っていると、人はより積極的に関わり、学び、成長することができます。
5.学習効果
ペアワーク・モブワークは、単なる仕事の進め方ではなく、貴重な学びの場になります。
経験豊富な先輩から後輩へ、はもちろんですが、経験が浅い後輩だからこその新鮮な視点から、既成の考え方に凝り固まった先輩が刺激を受けて更なる学びを期待できます。
この双方向の学習が、チーム全体のスキルアップにつながります。
ラーニングピラミッドという考え方によると、黙々と講義を受ける・本を読むなどの受動的な学習に比べて、実践する・他者に教えるなどの能動的な学習(アクティブラーニング)のほうが、知識を効率よく脳に定着させることができるそうです。コミュニケーションが活発になるペアワーク・モブワークは、学習効果が高い仕事の進め方といえるでしょう。
6.メンバー間の関係性の改善
仕事の報告をしたり成果物のレビューを受けたりすると、問い詰められているように思ったことは誰しもあると思います。
「わたし vs あなた」の構図となるのは本意ではないはずです。
ペアワーク・モブワークでは、みんなで協同して作業に取り組むことになるので、
「わたしたち vs 課題」という構図となり、対立ではなく協力の空気がチームに広がりやすくなります。
7.最後に
今回の記事を切っ掛けに、ペアワーク・モブワークって良さそう、やってみよう、と少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
法隆寺にある国宝:四天王立像をご覧になったことはありますか?
4つの像のひとつ、広目天像の裏には、「山口大口費上而次木〓二人作也」、訳すと「山口大口費さんと次木さんの2人で作った」と記載されているそうです。
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/203
私たちの国では飛鳥時代からペアワークを実践していて、しかもその成果が1300年以上もの長きにわたり大切にされる価値を生み出しているのです。
昔の人達は、今の我々のように理屈をこねなくてもペアワークの効果をなんとなく感じて実践していたのではないでしょうか。
決して最近のポッと出の考え方ではない、歴史のある作業の進め方であるペアワーク・モブワークを活用して、あなたも国宝級の成果を創造してみませんか。