1.はじめに
こんにちは。私はHPE製品を担当している、入社2年目のプリセールスエンジニアです。日々、ITインフラの構築やAI基盤の導入支援を行っており、特に近年は生成AIや大規模言語モデル(LLM)の活用が急速に進む中で、AIに最適化されたインフラのニーズが高まっていることを肌で感じています。
本記事では、HPEが提供するAI特化型プライベートオンプレ基盤「PCAI(HPE Private Cloud AI)」のアーキテクチャについて、DX推進・情報システム・AI導入を担う皆さまに向けてわかりやすくご紹介します。
2.HPEとは?
**Hewlett Packard Enterprise(HPE)**は、エンタープライズ向けのサーバ、ストレージ、ネットワークソリューションを提供するグローバル企業です。特に以下の分野に注力しています:
- HPE GreenLake:オンプレミス環境にクラウドの柔軟性をもたらす「as-a-Service」型IT基盤
- HPE Morpheus
VM Essentials Software:KVMとMorpheusが組み合わさった仮想化ソリューションで、脱VMwareを実現
- NVIDIA AI Computing by HPE:NVIDIAとの協業により、AI向けポートフォリオを展開
これらの技術を背景に、私たちは企業のAI活用を支える次世代インフラとして「PCAI」に注目しています。
3.PCAIとは?
PCAI(HPE Private Cloud AI)は、企業が自社内で安全かつ効率的にAIを活用するためのAIターンキーソリューションです。ハードウェアとソフトウェアが統合されたこの基盤は、オンプレミスやハイブリッドクラウド環境に対応し、データを社外に出すことなく、AIモデルの開発・学習・推論・運用を可能にします。
<PCAIが解決する主な課題>
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AI基盤の構築・運用に伴う高コストと高度なスキルの要求
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モデル開発から運用までのプロセスにおける断絶
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クラウド依存による制約と、データ主権の確保が困難な状況
https://www.hpe.com/jp/ja/private-cloud-ai.html
PCAIのアーキテクチャ紹介
PCAIは、S/M/L+Developer Systemの4サイズ(Tシャツサイズ)で提供され、用途に応じた最適な構成があらかじめ定義されています。すべてのコンポーネントは事前に組み立てられた状態で納品されるため、導入後すぐにAI活用を開始することができます!
プラットフォーム構成
ワーカーノード(AI処理):HPE ProLiant DL380a Gen11(Intel)
- NVIDIA H100 NVL / L40S対応
- NVLinkによるGPU間高速通信
- 4電源対応で電力供給不足をカバー
・ストレージ:HPE GreenLake for File with Object Storage
- ファイル(NFS/SMB)とオブジェクト(S3互換API)を同一基盤で提供
- 高スループットでRAGやファインチューニングに最適
・ネットワークスイッチ:Nvidia 4600cM(SN4700M)+Aruba 6300M
- Aruba 6300MをOOBM用に使用し、セキュアな運用を実現
- 最大400Gbps対応で高速なGPU間通信を実現
■G1構成(ProLiant Gen11ベース)
サイズ | 用途 | GPU構成 | ストレージ | ネットワーク |
Developer System | 開発 | 2x H100NVL | 32TB |
200Gb NIC |
Small | 推論 | 4〜8x L40S | 109TB | 100Gb NIC |
Midium | 推論+RAG | 8〜16x L40S | 217TB | 200Gb NIC |
Large | 推論+RAG+ ファインチューニング |
16〜32x H100 NVL | 670TB |
400Gb NIC |
PCAIは、用途に応じて適切な構成でお手元に届くため、届いたその日から本格的なAI活用を可能にします!
4.PCAIでできること(ソフトウェアと統合機能)
PCAIは、NVIDIA AI EnterpriseとHPE AI Essentialsという2つの強力なソフトウェアスイートを統合し、AIの導入から運用までをトータルに支援します。
NVIDIA AI Enterprise
NVIDIA AI Enterpriseは、エンタープライズ向けに最適化されたAIソフトウェアで、PCAIに標準搭載されています。これにより、AIの開発から運用までを加速・安定化し、商用利用に必要なサポートと信頼性を提供します。
構成要素と機能の一例
- NGC:企業向けのサービス、ソフトウェア、管理ツールを提供するポータルサイト
- NIM:LLMをAPI経由で即座に利用可能な推論マイクロサービス
- Triton Inference Server:トレーニング済みの機械学習やディープラーニングモデルの推論を実行
HPE AI Essentials
HPE AI Essentialsは、HPEが提供するAI導入支援のためのソフトウェア・サービス群で、PCAIの導入と運用をよりスムーズに、より実用的にするための機能が含まれています。
構成要素と機能の一例
- Apache Airflow:ETLやMLワークフローの自動化・管理
- Apache Superset:データの可視化とダッシュボード作成
- Kubeflow: MLワークフローの構築・トレーニング・デプロイをKubernetes上で管理するためのプラットフォーム
このように、PCAIはハードウェアに加え、NVIDIA AI EnterpriseとHPE AI Essentialsの多種多様なAIソフトウェア・サービス群を利用することで、AIの開発・実装・運用をトータルに支援するプラットフォームとなっています!
5.SCSKのPCAI検証機について
SCSKは国内初、PCAIを導入いたしました!2025年7月より、当社の印西データセンター内に開設を予定している、AI共同検証センターの中核システムとして活用します。この検証センターは、企業のAI導入支援を目的としており、お客様のAI活用の伴走支援サービス、PoC環境の提供など、様々な取り組みを推進してまいります。SCSKの取り組みについては、以下の記事にもまとめられておりますので、ぜひご参照ください。
www.scsk.jp/news/2025/pdf/20250516i.pdf
6.おわりに
PCAIは、企業のAI活用を加速するための次世代インフラです。オンプレミスの機密性とクラウドの柔軟性を兼ね備え、企業が自身のデータを安全に、最大限に活用できる環境を提供します。生成AI、マルチモーダルAI、エッジAIなど、AIの進化が続く中、PCAIはそれらを支える基盤として選択されるでしょう。
PCAIに関するお問い合わせは、国内初導入したSCSKにご連絡ください!
次回のブログでは、実際にPCAIを触ってみた感想&体験をシェアしていきたいと思います。お楽しみにお待ちください!