はじめに
みなさん、こんにちは!
SCSKのDell™ 担当プリセールスSEチームです。
今回は、DellのAIブランド「Dell AI Factory」についてご紹介します。
1. AI導入のカギ:リファレンスアーキテクチャとは
生成AIが社会に急速に浸透する中、企業もまた競争力を維持するために迅速かつ効果的なAI導入を求めています。その際に重要となるのが「リファレンスアーキテクチャ」です。
一般的に、リファレンスアーキテクチャとは、特定の技術やシステムの設計において、ベストプラクティスを基にした標準的な設計図を指します。
顧客がハードウェア構成からソフトウェアまでを一から決めるDIY(Do It Yourself)アーキテクチャは柔軟性が高いものの、時間とリソースがかかります。一方、ベンダーが構成を決めている統合アーキテクチャ(ターンキーソリューション)はソフトウェアまで含めて迅速にデプロイできますが、構成が限定され幅広いユースケースに対応することが難しい場合があります。
リファレンスアーキテクチャはその中間に位置し、ベンダー検証済みのパターン化された設計図を提供することで、迅速な導入とカスタマイズ性のバランスを取ることができます。
本記事では、Dellによるすべてテスト済み・検証済みのリファレンスアーキテクチャを使用した、AIフレームワーク「Dell AI Factory」の内容をご紹介していきます。
2. Dell AI Factory
Dell AI Factoryとは、Dellが提供するエンドツーエンドのAI導入と実装支援をするソリューションフレームワークの総称です。
Dell AI Factoryは2024年5月にDell Technologies Worldで発表されました。その後、1年間で3,000以上の顧客で導入され、60%コスト効率化を達成するという実績も残しています。
Dell AI Factoryは、Factoryという名の通り、データを燃料としてさまざまなAIユースケースを完成させる工場のようなイメージです。
以下に示すDell AI Factoryの5つの構成要素(データ・インフラストラクチャ・オープンエコシステム・サービス・ユースケース)に触れながら、詳細を説明します。
図 1 Dell AI Factory イメージ図
はじめに、データはAI Factoryの燃料とされ、データセンター・クラウド・エッジなど様々な場所に広がる様々な種類のデータのことを指しています。それらのデータに対しDellは、AIを導入する支援をします。
次に、インフラストラクチャは、AIワークロードに特化したサーバ・ストレージ・ネットワーキング・データ保護・PC等の製品提供を指します。
そして、DellのAIインフラ製品に、幅広いエコシステムのソリューションを組み合わせることにより、さらなる付加価値を提供します。エコシステムの例には、NVIDIA、Meta、Microsoft Azure、Hugging Face、Red Hat等の企業が挙げられ、拡大し続けています。
さらに、DellのAI専門家によるMicrosoft Copilot導入支援サービス、Dell Enterprise Hub on Hugging Faceサービス等により、顧客のAI導入を加速させるサービスの提供もDell AI Factoryの一部です。
以上のような製品やサービスを経て完成するのが、ユースケースです。例として、推論、モデルトレーニング、デジタルアシスタントなどが挙げられます。ユースケースごとに検証済みのリファレンスアーキテクチャを記載したホワイトペーパーやデザインガイドが多数公開されています。これにより、顧客はどのようなユースケースでどのハードウェアを選択すべきか、どのソフトウェアを利用するかを迅速に判断できるようになります。
実際のリファレンスアーキテクチャの例
次章では、Dell AI Factoryのエコシステムの中でも、よりNVIDIAとのパートナーシップを反映させたフレームワーク「Dell AI Factory with NVIDIA」について紹介していきます。
3 Dell AI Factory with NVIDIA
Dell AI Factory with NVIDIA は2024年5月のDell Technologies WorldでDell AI Factoryと同時発表されました。さらに、2025年の同イベントでは、より内容が拡充した「Dell AI Factory with NVIDIA 2.0」が発表されました。同フレームワークの内容についてご紹介します。
まず、インフラストラクチャ部分においては、NVIDIA GPUを搭載可能なAIワークロードに特化したサーバや、Dell・NVIDIA各社のネットワークスイッチが提供されます。
また、NVIDIAとのエコシステムという点では、NVIDIA AI EnterpriseやNIM、OmniverseといったNVIDIAのAIソフトウェアをDellのインフラストラクチャ上で使用可能です。さらに、NVIDIA AI EnterpriseのライセンスをDellから直接提供可能であり、シームレスなAI開発環境が整備されています。
サービスにおいては、2025年6月時点において日本でのサービス展開は未定なものの、Dell AI Factory with NVIDIAのDellによるマネージドサービスも存在し、AIライフサイクルのあらゆる場面で支援をするサービスもあります。
参考:
Dell AI Factory with NVIDIAでAIへの道を開く
Dell AI Factory with NVIDIA | Dell 日本
4 プロダクト紹介
ご紹介してきたように、Dell AI Factoryのポートフォリオは、クライアント製品からエンタープライズ製品、サービスまで幅広く展開されていますが、今回はDell AI Factory with NVIDIAに関連する製品を中心に紹介していきます。
まずは、Dellの最新AIサーバを紹介します。
参考情報:PowerEdge™ 命名規則
・最後の数字が0:Intel CPU、5:AMD CPU
・最後の文字が数字:空冷モデル、L:液冷モデル
PowerEdge XE9780(L)/9785(L)
特徴:
・チップの直接水冷で最大192基のNVIDIA Blackwell Ultra GPUをサポート
・「Dell IR7000」ラックあたりNVIDIA Blackwell Ultra GPUを最大256基までカスタマイズで増設可能
・8way NVIDIA HGX B300を搭載可能
ユースケース:
AIモデルのトレーニング、ファインチューニング等
PowerEdge XE7740/7745
特徴:
・最大8基のNVIDIA RTX Pro 6000 Blackwell Server Edition PCIe GPUサポート
ユースケース:
フィジカル/エージェンティックAI(ロボティクス、デジタルツイン、マルチモーダルAIアプリケーション)
PowerEdge XE9712
特徴:
・NVIDIA GB200 NVL72/GB300 NVL72アーキテクチャ
・次期NVIDIA Vera Rubin NVL144およびNVL576をサポート予定
ユースケース:
LLMトレーニング、リアルタイム推論
次に、AIストレージを紹介します。
PowerScale™
特徴:
・スケールアウト型NAS/オブジェクトストレージ
・NVIDIA DGX SuperPOD認定
・NVIDIA Cloud Partner(NCP)認定(PowerScale F710)
ユースケース:
・AIアプリケーション
・ディープラーニング
参考:
PowerScale - スケールアウトNASストレージ | Dell 日本
ObjectScale™
特徴:
・オブジェクトストレージ
・NVIDIA BlueField、Spectrum-4に対応
・NVIDIA CUDAライブラリを使用し、S3 over RDMAに対応
ユースケース:
・AIモデルトレーニング
・AI対応データ管理
・AIデータレイク
参考:
ObjectScale - 効率的で拡張可能なオブジェクトストレージ | Dell 日本
Dell Data Lakehouse
また、上記で紹介したオブジェクトストレージを使用したデータレイクハウスソリューション「Dell Data Lakehouse」も提供されています。従来のデータ管理手法であるデータレイクとデータウェアハウスの利点を組み合わせたデータレイクハウスは、データのサイロ化や品質の低下、コスト増加といった課題を解決し、統合されたデータ管理とリアルタイム分析を可能にします。これにより、企業は効率的かつ迅速にAIワークロードを処理できるようになります。
Dell Data Lakehouseは、ハイブリッド/マルチクラウドのアーキテクチャ全体に分散するデータの検出、クエリー、処理、分析を実行し、AI-Readyなデータプラットフォームを提供する統合ソリューションです。
ソリューションコンポーネント:
・Starburst提供データ分析エンジン「Dell Data Analytics Engine」
・Kubernetesベースシステムソフトウェア「Dell Data Lakehouse System Software」
・ハードウェア(コンピュート):DDAEノード(PowerEdge R660ベース)
・ハードウェア(オブジェクトストレージ):PowerScale、ObjectScale
Dell Data Analytics Engine画面イメージ
Dell Lakehouse System Software画面イメージ
また、2025年3月に開催されたNVIDIA GTC2025にて、Apache Spark 用の NVIDIA RAPIDS Accelerator を使用し、コンピュートに使用される PowerEdge R660 に NVIDIA L4 GPU を直接組み込み可能になることが発表されました。これにより、ETL、機械学習、分析フローの処理がより一層高速化されるようになります。
このように、今後のアップデートにも注目が集まる製品です!
参考:
dell-data-lakehouse-solution-brief.pdf
最後に
今回は、Dell Technologies社のDell AI Factory全体像と代表的なプロダクト紹介をさせていただきました。SCSKでは、AI基盤・データ統合基盤サービス「NebulaShift ai」を提供しており、今回ご紹介したDell AI Factoryの製品をご購入の際にもご活用いただけます!ぜひこの機会にご検討ください。
NebulaShift aiについてはこちら
次回以降のブログでは、AI・LLMアプリケーションの検証等の記載を予定しております!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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