想定読者:
DX担当/情報システム担当/アプリケーション開発担当
はじめに
みなさん、はじめまして!
私は2024年9月にアジャイル支援チームに配属され、アジャイルコーチ見習いとして活動している新卒2年目社員です。(2025/5時点)
配属されるまでは「アジャイル」についてなんとなく聞いたことがある程度で、正直言って「アジャイルコーチって何?」という状態でした。開発経験も新人研修で簡単なWebアプリケーションを作成した程度しかありませんでした。そのため、アジャイルについて何もわからない私でも新人としてやっていけるのかという不安がありました。
皆さんも、「アジャイル」と聞くと難しそうでハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、そんな不安を抱えた私でも、アジャイルのフレームワークの一つであるスクラムを実践し、成果を上げることができました。
ここでは、どのようにしてアジャイルを始め、スクラムを活用したのかをお話しします。
1. アジャイル・スクラムとは
1.1 アジャイルとは
従来のプロジェクト運営とアジャイルのプロジェクト運営を比較しながら説明します。従来のプロジェクトはゴールが明確になっており、計画やプロセスをしっかり定めて、乖離を防ぎながら進めていきます。それに対して、アジャイルはゴールが見えない・変わることを前提に、臨機応変に進めていきます。そのために状況にあった計画やプロセスを効率的に活用し、その時のゴールが達成できるように方向転換していくことが特徴になります。
アジャイルについては、以下の記事にまとめられておりますのでご参照ください。
1.2 スクラムとは
今回の取り組みではスクラムを活用しました。
スクラムは、アジャイル開発のフレームワークの一つで、10人以下のチームが短い開発サイクルであるスプリントを繰り返すことで、プロダクトとプロセスの改善を継続的に進める手法です。スクラムでは、頻繁に成果物を見直し、フィードバックを受けることで、チームが自立的に作業し、柔軟に計画を調整することができます。これにより、プロジェクトの進行を円滑にし、より迅速に課題に対処できるようになります。
スクラムの基本的な枠組みとルールはスクラムガイドに記載されており、それを遵守することが求められます。それ以外の部分では、チームが自らの経験を振り返り、改善し、学ぶことを繰り返すことで成長を目指します。このプロセスは、試行錯誤を通じてチームが最適な方法を見つけ出すことを目的としています。チームの連携とコミュニケーションを重視し、プロジェクトの進行をスムーズに保ちながら開発が行われます。
- スクラムガイド
https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf
2. アジャイルやってみた
2.1 アジャイルで、何をしたのか?
私は、配属された週から4ヶ月の間、新卒アジャイルコーチの教育の一環で、アジャイルを体験しました。アジャイルを実際に体験することで、自分事として学び、体得することを目的とし、試験的に取り組む活動を実施しました。 この活動では、スクラムを用いてアプリケーション開発を行い、営業で活用できる実際のデモを作成しました。
この活動は、2週間のスプリントで実施し、以下が実際のスケジュールになります。
2.2 作成したもの
この活動では、ルールエンジンを活用して、とある生命保険の約款に基づき給付金額を計算するシステムを開発しました。このシステムは、病気や怪我、入院日、退院日などの様々な条件を考慮して、正確に給付金額を算出します。
2.3 体制
各メンバーの専門性と経験をバランスよく伝授していただけるような体制を組んでいただき、プロジェクトに臨みました。
今回、プロダクトオーナーには製品のプリセールスリーダーである課員Aさんが担当し、その知識と経験を活かしてデモの作成をサポートしていただきました。
スクラムマスターには、私の指導員でありアジャイル支援チームのアジャイルコーチでもある課員Bさんが担当していただきました。課員Bさんのアジャイルコーチとしての専門知識により、アジャイル開発のフレームワークが適切に導入され、チームの効率的な進行を支えていただきました。
また、ステークホルダーには所属部署の課長に担当していただきました。
2.4 技術要素、使用したツール
今回のプロジェクトで、使用した主なツールは以下のものです。
・ルールエンジン
今回対象となる販促製品です。使用したルールエンジンは、業務ルールを表形式で管理や編集できるため、専門知識がなくても利用することができ、新人の私でも簡単に扱うことができました。
・ローコードツール
今回はOutSystemsを活用しました。アプリケーションの設計をドラッグ&ドロップで行えるため、コードの記述を大幅に削減できました。初心者である私にも非常に理解しやすい環境が提供されました。
・ホワイトボードツール(Miro)
ホワイトボードツールには、Miroを採用しました。このツールはリアルタイムで編集が可能で、進捗状況の更新やボードの共有をスムーズに行うことができます。
3. 新卒1年目がアジャイルやってみて
アジャイルを実際に体験し、私が特に実感したのは以下の3つのポイントです。
- 突然の要望変更にも柔軟に対応できる
- 働き方・取り組み方を改善して成長
- 目的意識の維持と共通認識の重要性
3.1 突然の要望変更にも柔軟に対応できる
当初は、保険内容の主契約から特約といった約款内容をすべて考慮して保険金額を算出するシステムを開発し、開発ツールの実際の画面上で、デモを実施する予定でした。
スプリントレビュー時に開発ツールの画面をステークホルダーに見せながらデモした結果、「初見の方は分かりづらいかもしれない。Web画面でデモをした方が分かりやすい」というフィードバックをいただきました。
一方で、全て保険内容を実装すると、システムが複雑となり、お客様の理解につながりにくいとステークホルダーからご意見をいただきました。
そこで急遽、特約などを考慮したシステム開発というゴールからWebアプリの実装を完了させるゴールへと変更しました。
【変更前】
【変更後】
お客様に良いと思ってもらえるように方針変更ができたのはアジャイルのおかげであり、もしウォーターフォールで進めていたら、柔軟な対応は難しかったと思いました。
3.2 働き方・取り組み方を改善して成長
初めてのスプリントでは、デモの内容や方法などについて多くのフィードバックをいただきました。しかし、次のスプリントレビューでは、指摘事項が改善できていない部分がありました。フィードバックを受け取った際の共通認識を合意するプロセスが十分に確立されていなかったことが挙げられます
そこで、レトロスペクティブを通して改善策を考え、ホワイトボードツール(Miro)を利用してフィードバックを共有するようにしました。この方法により、ステークホルダーからもメモした内容が確認できるようになり、認識の齟齬を減らすことができました。メモを見せることで、認識に違いがある場合は指摘され、修正することが可能になりました。
加えて、チーム内のコミュニケーションが向上し、プロジェクトの全体像を可視化することができました。この可視化により、チームメンバーはより協力的に作業を進めることができました。
また、開発面では、初めて触れるツールばかりでわからないことが多くありました。しかし、デイリースクラムという毎日のコミュニケーションの場が設けられていたことで、先輩社員と密なコミュニケーションを取ることが可能になり、課題や疑問を解決し、毎日少しずつ成長していくことができました。
3.3 目的意識の維持と共通認識の重要性
プロジェクトを進める中で、目的を見失いデモの軸がぶれることがありました。そこで、スプリントごとにゴールを明確に設定し、目的を具体的にしました。さらに、Miroに記載したゴールを毎朝確認することで、その日のタスクの目的を意識し続けることができました。この方法により、メンバー間で認識を一致させ、目的の達成に向けた行動を維持することができました。
定期的なコミュニケーションを通じて認識のズレを減らし、フィードバックをもとに柔軟に対応することで、常にプロジェクトの目的を意識しながら前進できたことが、アジャイルの大きな強みだと実感しました。
4. まとめ
この活動でアジャイルを経験したことで、アジャイルに関する知識の向上はもちろん、発表やデモの方法といったビジネススキルも磨かれ、開発業務の実践的な側面や新しい技術を学ぶことができました。この4ヶ月間で、貴重な経験を積むことができたと実感しています。
次の目標は、スクラムマスターとしての役割をしっかりと果たすことです。スクラムマスターとしてのノウハウや役割を十分に習得した後、アジャイルコーチへとステップアップできればと考えています。
そのために、よりチームが成長できるような働き方を追求し、そこで気づいた課題を迅速に解決する能力を高めることを目指しています。この能力を磨いていき、チームメンバー全員に主体性を持たせ、自己成長を実感していただけるように導きたいと考えています。
アジャイルな働き方を活かし、私個人としても継続的に成長し、チーム全体を支える存在になれるよう努力していきます。