Data + AI Summit 2026で見えたDatabricksの進化|AIエージェント時代のデータ基盤は「作る・動かす・守る」まで一体化する

Data + AI Summit 2026で発表されたDatabricks新機能のイメージ

(※注意事項:本記事は、2026年6月時点で公開されている発表内容をもとに作成しています。製品名、機能、提供状況は変更される可能性がありますのでご注意ください。)

Data + AI Summit 2026では、Databricksのデータ・AIプラットフォームがAIエージェント時代に向けて大きく進化していることが示されました。

今回のキーノートで印象的だったのは、単に新機能が増えたという話ではありません。AIエージェントを作り、業務アプリとして動かし、リアルタイムデータにつなぎ、ガバナンスで守るところまでをDatabricks上で一体化しようとしている点です。

この記事では、公式キーノートや公式ドキュメントをもとに、Genie One、Lakebase、Lakehouse//RT、Agent Bricks、Unity AI Gateway、CustomerLake、OpenSharingなどの主な発表内容をざっくり解説します。

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1. DAIS 2026の発表を一言でいうと

Data + AI Summit 2026のキーノートでは、Databricksが「分析基盤」からさらに一歩進み、AIエージェント、業務アプリ、リアルタイム処理、ガバナンスまでを一体で支えるプラットフォームへ進化していることが示されました。

これまでDatabricksは、データレイクハウス、データエンジニアリング、AI/ML、BI、Unity Catalogによるガバナンスを統合する基盤として語られることが多かったと思います。今回の発表では、そこに「業務ユーザーがAIと一緒に働く」「AIエージェントを本番運用する」「データとアプリを同じ基盤で動かす」という要素が強く加わりました。

この記事では、キーノートで発表・紹介された主な新機能を、SCSKの視点から、ざっくりわかりやすく整理します。

2. キーワードは「Agentic」

今回の発表で何度も登場したキーワードが「Agentic」です。Agenticとは、AIが単に質問に答えるだけでなく、目的に応じて考え、ツールを使い、データを参照し、必要に応じてアクションまで実行するような考え方です。

これまでの生成AI活用は、チャットボットや文章生成のように「人が質問してAIが回答する」使い方が中心でした。一方でAgenticなAIでは、AIが業務の流れの中に入り込み、分析、レポート作成、異常検知、顧客対応、キャンペーン最適化などを継続的に支援します。

ただし、企業でAIエージェントを本番活用するには、正しいデータに接続できること、権限を守れること、コストを管理できること、監査できることが欠かせません。今回のDatabricksの発表は、この「AIエージェントを企業で安全に使うための土台」を広げるものとして捉えると理解しやすいです。

3. Genie One / Genie Agents / Genie Ontology:業務を理解するAIアシスタントへ

まず注目したいのが、Genie One、Genie Agents、Genie Ontologyです。従来のGenieは、自然言語でデータに質問できるBIアシスタントという位置づけでした。今回の発表では、業務ユーザーがデータやAIをより自然に使うための入口として、さらに広がっています。

Genie Oneは、業務ユーザー向けのシンプルなDatabricks体験です。ダッシュボードを見たり、自然言語でデータに質問したり、専門的なコンピュートやノートブックを意識せずにデータとAIを使うことを目指しています。

Genie Agentsは、特定業務に合わせたAIエージェントを作るための仕組みです。たとえば「毎朝、売上と在庫の変化を確認して異常があれば通知する」「商談前に顧客の利用状況と問い合わせ履歴をまとめる」といった業務支援がイメージできます。

その土台になるのがGenie Ontologyです。企業内のテーブル、カラム、ダッシュボード、ドキュメント、業務ルール、利用履歴などから、AIが業務文脈を理解するためのコンテキストを作る仕組みと捉えるとわかりやすいです。

AI活用でよくある問題は、AIがデータの意味を正しく理解できないことです。たとえば「売上」といっても、受注額、出荷額、請求額など、部署や業務によって定義が異なることがあります。Genie Ontologyは、こうした業務上の意味をAIに理解させるための重要なピースです。

4. Lakebase と LTAP:分析基盤と業務アプリの境界が近づく

Lakebaseは、Databricksに統合されたフルマネージドのPostgresデータベースです。従来のDatabricksは、データレイクやDWH、分析・AI処理に強い基盤というイメージがありました。一方、業務アプリケーションで使うトランザクション処理は、別のデータベースで管理するケースが一般的でした。

Lakebaseの登場により、Databricks上で分析データだけでなく、アプリケーションが利用するトランザクションデータも扱いやすくなります。AIエージェントや業務アプリを作る場合、過去データの分析だけでなく、ユーザー操作、注文、問い合わせ、在庫変動など、リアルタイムに変わる業務データも重要です。

ここで出てくる考え方がLTAPです。これは、Lakehouse Transactional / Analytical Processingの略で、トランザクション処理と分析処理を同じデータ基盤上でより近い形で扱うという発想です。

Lakebaseは、Databricksを「分析する場所」から「データとAIを使ったアプリを動かす場所」へ広げる重要な機能だと考えられます。

5. Lakehouse//RT:リアルタイム分析をLakehouseの中へ

Lakehouse//RTは、DatabricksのLakehouse上でミリ秒レベルの応答を目指すリアルタイムデータウェアハウスです。

これまで、リアルタイム性が求められるダッシュボードやアプリでは、分析基盤とは別に高速なサービング層を用意するケースがありました。しかしその場合、データコピー、追加パイプライン、別製品の運用、別々の権限管理が必要になり、アーキテクチャが複雑になります。

Lakehouse//RTは、このリアルタイム処理をDatabricksのLakehouseに統合しようとする取り組みです。同じデータ、同じガバナンス、同じプラットフォーム上で、BI、アプリ、AIエージェント向けの高速な応答を実現する方向性です。

AIエージェントが「いま何が起きているか」を判断するには、最新データに高速アクセスできる必要があります。Lakehouse//RTは、まさにそのための基盤になる可能性があります。

6. Agent Bricks:AIエージェントを“作って終わり”にしない

Agent Bricksは、AIエージェントの構築・評価・改善・運用を支援する仕組みです。AIエージェントは、デモを作るだけなら比較的簡単ですが、本番で使うには回答品質、セキュリティ、監視、コスト、権限、継続改善まで考える必要があります。

企業システムでは、PoCで動いたAIをそのまま本番投入できることはほとんどありません。回答品質をどう測るか、間違った回答をどう検知するか、どのデータを参照したか、コストが膨らんでいないか、といった運用設計が必須です。

Agent Bricksは、AIエージェントを実験から本番へ進めるための重要なピースと言えます。今後は「エージェントを作る」だけでなく、「評価しながら改善し続ける」提案が重要になりそうです。

7. Genie Code と Genie ZeroOps:開発も運用もAIが支援する時代へ

開発者・データエンジニア向けには、Genie CodeとGenie ZeroOpsが注目です。

Genie Codeは、Databricks上でコード生成、パイプライン作成、ダッシュボード作成、エラー調査などを支援するAIアシスタントです。ノートブック、SQLエディタ、Lakeflow、AI/BI、MLflowなど、Databricksの各作業画面に合わせて支援する点が特徴です。

Genie ZeroOpsは、運用を支援するAIエージェントの方向性です。データパイプライン、ジョブ、テーブル、MLモデルなどを監視し、問題が発生したときの原因調査や修正案の提示を支援する世界観です。

データ基盤の現場では、開発よりも運用保守に多くの時間が取られることがあります。スキーマ変更、データ遅延、パイプライン失敗、モデルドリフトなど、日々さまざまな問題が起きます。こうした運用負荷をAIで下げる流れは、今後のDatabricks活用でも重要なテーマになりそうです。

8. Unity AI Gateway:AI時代のガバナンス基盤

AIエージェントが増えるほど重要になるのがガバナンスです。Unity AI Gatewayは、AIモデル、AIエージェント、MCPサーバー、コーディングエージェントなどの利用を一元的に管理するための仕組みです。

AI利用が増えると、どのチームがどのモデルを使っているのか、どれくらいコストが発生しているのか、どのデータにアクセスしているのか、どのようなリクエストが投げられているのかを把握する必要があります。

Unity AI Gatewayでは、利用状況の可視化、コスト管理、レート制限、ガードレール、監査ログ、モデルルーティングなどを通じて、企業のAI利用を統制しやすくします。

DatabricksはUnity Catalogを中心に、データだけでなくAIの利用そのものもガバナンス対象に広げようとしていると捉えられます。

9. CustomerLake:Databricksがマーケティング領域へ本格参入

CustomerLakeは、Databricksに組み込まれたAgentic CDPです。CDPとはCustomer Data Platformのことで、顧客データを統合し、顧客理解やマーケティング施策に活用するための基盤です。

従来のCDPでは、顧客データを別のCDP製品にコピーして、名寄せ、セグメント作成、配信連携を行うことが一般的でした。しかしCustomerLakeでは、顧客データ、AIモデル、ガバナンスがすでに存在するDatabricks上でCDP機能を実現します。

特徴的なのは、Profile AgentsとCampaign Agentsです。Profile Agentsは統合顧客プロファイルの作成を支援し、Campaign Agentsはセグメント作成、次に取るべきアクションの提案、チャネルへの配信、施策の継続的な最適化を支援します。

発表の中では、従来型の単発キャンペーンから、顧客状況に応じて継続的に動く「Infinity Campaigns」という考え方も示されました。これは、マーケティング担当者が毎回キャンペーンを設計する世界から、AIエージェントが顧客の変化を捉え、継続的に最適なアクションを提案・実行する世界への転換です。

10. Databricks Apps / Marketplace / Free Edition:作ったものを届ける・試すハードルも下がる

Databricks Appsは、Databricks上でデータアプリやAIアプリを構築・公開するための仕組みです。今回の発表では、エンタープライズ向けにアプリ開発をしやすくする機能や、Databricks Marketplace上でアプリを見つけて実行する仕組みも紹介されました。

これにより、データやAIの成果物を「分析結果」で終わらせず、業務ユーザーが使えるアプリとして届ける流れが加速しそうです。

また、Free Editionにもさまざまな機能が追加される方向性が示されており、学習者や検証ユーザーが、より実践的にDatabricksのデータ・AI機能を試せるようになる点も大きなポイントです。

11. OpenSharing:データだけでなくAI資産も共有する時代へ

OpenSharingは、データやAI資産をプラットフォームや組織をまたいで安全に共有するための新しいオープン標準です。

これまでDatabricksではDelta Sharingによって、データ共有のオープン化を進めてきました。OpenSharingでは、その考え方をさらに広げ、データだけでなく、AIモデル、AIエージェント、スキル、アプリケーションのようなAI時代の資産共有も視野に入っています。

AI活用が進むほど、企業は自社内だけで完結せず、パートナー、顧客、データプロバイダー、アプリベンダーと連携する必要があります。そのときに、コピー前提ではなく、安全に、統制された形で共有できる仕組みが重要になります。

12. まとめ:Databricksは“AIエージェントの実行基盤”へ進化している

DAIS 2026の発表を全体で見ると、Databricksの方向性はかなり明確です。それは、AIエージェントを単体で作るのではなく、データ、アプリ、リアルタイム処理、ガバナンス、運用、共有まで含めた実行基盤を提供するという方向性です。

今回の主な発表を整理すると、以下のようになります。

  • Genie One / Genie Agents / Genie Ontology:業務文脈を理解するAIアシスタント
  • Lakebase / LTAP:トランザクションと分析を近づける基盤
  • Lakehouse//RT:リアルタイム分析をLakehouseへ統合
  • Agent Bricks:AIエージェントの本番化を支援
  • Genie Code / Genie ZeroOps:開発と運用をAIで支援
  • Unity AI Gateway:AI利用のコスト・権限・監査を統制
  • CustomerLake:Agentic CDPとしてマーケティング領域へ展開
  • Databricks Apps / Marketplace:データ・AIアプリを業務に届ける
  • OpenSharing:データとAI資産をオープンに共有する

企業にとって重要なのは、AIエージェントを試すことだけではありません。正しいデータにつなぎ、安全に使い、コストを管理し、業務アプリとして現場に届け、継続的に改善していくことです。

Data + AI Summit 2026の発表は、Databricksがその一連の流れを1つのプラットフォーム上で実現しようとしていることを示す、大きなアップデートだったと感じました。

参考情報

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