深層学習AI による解析結果予測ソリューション Neural Concept Shape

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自動車製造におけるAI

今日、自動車産業は多くの課題に直面しており、自動車会社の設計チームは常にプレッシャーにさらされています。では、このような自動車業界の製品設計チームに対し、人工知能(AI)は何を支援することができるでしょうか。AIとデータサイエンスによって、サプライチェーンはどのように効率化できるでしょうか。

私たちの身の回りには、AI技術があふれています。多くの人が先進運転支援システムを聞いたことがあるか、あるいはすでに使っています。エンドユーザーは、これからますますAIでアシストされた自動車の運転を体験することになるでしょう。自動車業界では、生産ラインで作用するIoTセンサーが、メーカーにとってかつてないレベルで品質管理を強化するメリットとされています。

それでは、ここから製造業向けのアプリケーションを中心に説明します。

自動車産業 - サプライチェーンにおけるTier1の役割

AI技術を語る前に、一歩踏み込んで、自動車産業におけるサプライチェーンの構造について見ていきます。どのような自動車分野でAI技術が役立つでしょうか。

自動車産業におけるTier1とは

Tier1は、従来の自動車、ハイブリッド車、電気自動車などのすべてにおいて主要な役割を担っているため、私たちはTier1サプライヤーの役割に注意を払う必要があります。OEMとの関係は、コモディティ製品のサプライヤーとは異なります。
OEMは、自社にとってTier1が付加価値を提供してくれることを前提としています。Tier 1は、そのための設計と製造の能力を要求されますが、この能力は、OEMとの取引の上で必要であると同時に責任でもあります。

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RFQから生産まで

RFQ(Request for Quotation,見積依頼)段階は、他のサプライヤーとの競争が正式に開始されるときです。Tier1は、OEMがブランド化した1つまたは複数の車両モデルの機器サプライヤーとなるための、技術的および商業的提案を提出するよう求められます。
選ばれたTier1とOEMの協力関係は、契約締結後も継続されます。アフターマーケット供給とOEM供給の違いは何でしょうか。アフターマーケットには既製品の部品がありますが、OEMサプライヤーは生産開始までの間、多くの場合新しいニーズごとに調整しなければなりません。
OEMは、耐久性やエネルギー効率など、性能要件を満たすことをサプライヤーに求めています。では、どうすればその要求を満たすことができるのでしょうか。90年代まで、サプライヤーは物理的な試作とテストサイクルに依存していました。その後、CAEとCADの組み合わせにより、上記のサイクルの期間とコストを短縮することができました。この革命は、アナログからデジタル(ソフトウェア1.0)エンジニアリングへの革命でした。そして、アナログからデジタルへのソフトウェア1.0の後、ソフトウェア2.0に向けた革命が起こりつつあります。

AI:Tier1やOEMを支援するソフトウェア2.0の登場

ソフトウェア2.0は、データという餌を与えることによってその能力(リアルタイム予測分析能力)を取得する、言わば「他のソフトウェアを食べるソフトウェア」です。データは、前述のCADやCAEのような「従来の」ソフトウェア1.0からもたらされます。ソフトウェア2.0革命は、私たちの経験から学び、より良い製品をより速く設計することを支援するツールを生み出しています。

自動車産業 - Tier1における技術的な専門性

従来の自動車用ラジエーターに焦点をあててみましょう。ラジエーターというシステムだけでも実に様々な製造プロセスやエンジニアリングスキル、サプライチェーンのメンバーが関わっています。例えば、図のウォーターポンプ、クーラントタンク、ラジエーターエンジンという3つの部品に、3社のサプライヤーが関わっています。

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異なる研究部門と設備、エンジニアが集まり、このシステムを管理しています。つまり、これらはそれぞれがすべて、高度な技術的専門性の集合体になっているのです。

AIは自動車産業をどう変えるか

OEMとそのTier1が、自動車産業においてAI技術をどのように活用しているか、その事例を紹介します。ここでは、人工知能が従来の手法の業務支援機能を、いかに向上できるかが明確に描かれています。自動運転車や自動運転技術、製造現場、そして最後に製品設計への影響について詳しくお話していきましょう。

自動運転車(Autonomous Vehicle)

自動運転車をテーマに、製造現場や設計部門について話を進めていきます。自動運転車は、さまざまな技術を用いて、運転上の課題解決を図っています。その課題とは、道路のナビゲーション、障害物の回避など、重要な意思決定に関わるものです。ここにもAI技術が使用されています。自動運転車には、センサーからのデータを解釈するコンピュータビジョンアルゴリズムが使用されています。これにより、周囲の環境を理解することができます。人工知能は、背景にある物体を識別することができますが、自動運転車の障害物の例としては、歩行者、他の車両、交通標識などが挙げられます(下図)。

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自動車製造におけるAIの適用例

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人工知能(AI)は、自動車製造において多くの応用の可能性を秘めています。例を挙げると、品質管理、予知保全、サプライチェーンの最適化などがあります。

ジェネレーティブデザインの役割

自動車メーカーが、AIにより空力性能を最適化した新しいスポーツカーの設計を検討するとします。既存のスポーツカーの形状のデータセットで学習させた機械学習モデルなら、短時間で数千の設計案を生成できるでしょう。

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その設計には、スポイラーやエアダム、ディフューザーなど、さまざまな機能が盛り込まれています。では、それらを設計変更した場合、空力性能はどう変化するのでしょうか。ここでも、設計変更と同期して、それらに伴う空力性能の予測分析もAIで行う必要性があります。形状変更と工学的予測を組み合わせて行うことで、AIは空力性能を最適化した形状を瞬時に作り出すことができます。そして、設計者による最終的な改良と、従来のテスト/シミュレーションによる最終的な検証によって、メーカーは、最適な設計案を絞り込むことができます。

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DEBOSH(Deep Bayesian Optimization)により、基本設計(左)を最適な空力性能を持つ設計(右)に形状変更可能

自動車設計に応用されたAIの実例

自動運転と製造におけるAIの一般的な考察と概要説明を述べさせていただきました。今度は、CADやCAEから取得できるデータを用いて、車両設計に適用されたAIの3つの適用例を詳しく見ていきましょう。

自動車産業事例1-乗用車のエアロダイナミクス

乗用車の空力設計では、いくつかの重要な項目を考慮する必要があります。それらは、空力シミュレーション(CFD)やAIによる予測が活用されます。その中から、バッテリー/燃料消費、車両のハンドリング、ドライバー/乗客の快適性に影響を与える3つの項目(空気抵抗、ダウンフォース、騒音)を考えましょう。CAE/CFDのようなソフトウェア1.0は、数時間ですべてをシミュレーションすることができますが、ソフトウェア2.0の概念は、AI / ディープラーニングで数秒以内に答えを得ることを可能にするでしょう。

1. 空気抵抗

自動車の空気抵抗を減らすと、燃費や最高速度を向上させることができます。抗力係数を下げるには、さまざまな方法があります。古典的な方法としては、車の形状を合理化することや、アクティブ・エアロダイナミクスを採用したデバイスを使用することが挙げられます。空力性能向上を図るデバイスの例としては、スポイラーやエアダムなどがあります。ここではスポイラーについて詳しく説明します(図参照)。

参照図

スポイラーなどの空力デバイスは、ダウンフォースや空気抵抗の面で性能向上に貢献

2. ダウンフォース

ダウンフォース(負の揚力)を発生させることで、高速走行時やカーブなどの特定の状況下での車両のハンドリングと安定性を向上させることができます。これは、スポイラーやエアホイールなどのアクティブ・エアロダイナミクス・デバイスを使用することで実現できます。

3. 騒音

ドライバーや同乗者にとっての悩みの種となるのが、車内外の騒音です。車外騒音は、車の周囲を流れる空気やサイドミラーなどの特定の装置から発生する騒音です(図参照)。車の空力設計では、車の周りの空気の流れによって発生する騒音を考慮し、それを低減する必要があります。

参照図

自動車用サイドミラーの空力/空力音響性能の最適化を目的としたジェネレーティブデザイン

乗用車のエアロダイナミクス:リソース要件の削減

前述はすべて、最適化が必要なKPIに絞り込むことができます。例えば燃料消費のための空気抵抗最小化、安定性のためのダウンフォース最大化、快適性のための空力騒音最小化など、それぞれの指標を達成する必要があります。
理論的には、CFDシミュレーションがKPIの最適化を支援することは容易に想像がつきます。
ここには2つの問題点があり、ハードウェアリソースと高度な専門スキルがどれだけ必要なのか、ということです。ご想像のとおり、通常は多くのリソースと高いスキルが必要となります。実際にCFDを利用できる設計者は何人いるでしょうか。現実的にはほんの数人です。

労せずして、高度なスキルとより多くのリソースをもたらすもの:AI

AIシステムの学習プロセスにより、CFDの効果を大多数のエンジニアに提供することができます。図の右に示されるAIによる予測結果は、左のCFDシミュレーション結果とほぼ同じです。

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AIによる予測を活用することになる対象者として、CFDの専門家ではないエンジニアを想定しましょう。また、HPC(ローカルクラスタやクラウド)リソースの要件も避けることとします。AIアプリケーションは、ローカルコンピュータやノートパソコンでも動作させることができます。これは、自動車業界にとって非常に喜ばしいニュースです。これまで"自動車におけるAI "といえば、協働ロボットや自動運転車を連想するのが普通でした。新しい自動運転車市場だけでなく、AIが自動車のバリューチェーンにどのような影響を与えるかは、もっと早い時期にわかるでしょう。

設計業務に対するAIの雪玉効果

雪玉効果とは、AIと自動車産業において何を意味するのでしょうか。AI投資は、AIソリューションが初期の概念設計段階で展開された場合、革命的な効果を発揮する可能性があります。雪山を転がる雪玉のように、転がることで雪を拾い、質量も表面積も増大する仕組みを想像していてください。
自動車の設計部門では、初期の概念設計段階(例えば、経営層が新車の発売について議論するとき)にAIを導入することで、自動車の残りのプロジェクトに重大な影響を与えることができます。雪玉効果がポジティブで有益な方向に働くことで、従来の方法よりもはるかに幅広いデザインの可能性が生まれ、そこから最適なソリューションが早い段階で選択されるようになるでしょう。
実際、AIを使えば、生産ラインや組み立てライン、もっと言えば詳細なCAD作業のかなり前に、車の性能をシミュレーションすることができます。形状修正と連動したAIによるシミュレーションは、ハイレベルな会議をサポートする理想的なツールなのです。会議では、ノートパソコンを含むあらゆるプラットフォームで、設計変更に対する技術的な評価をリアルタイムに行うことができます。経営陣や設計者がCAE部門にシミュレーションの依頼をし、数時間、数日、数週間後にシミュレーション結果のフィードバックやディスカッションを行うという従来のプロセスと比較し、劇的な変化と言えるでしょう。

自動車産業におけるエンジニアの新しい人口動態

多くの企業では、CFDやCAEを専門とするエンジニアの10倍から100倍の設計者がいるのではないでしょうか。今後AIベースのシミュレーションにより、CFDやCAEの大規模な展開が考えられます。以下は、AIベースのシミュレーションを一般化し、大規模な展開を可能にする3つの主要な成功要因です。

  • 1. AIは、AIの専門家ではない自動車業界の設計者が簡単にアプリで展開することが可能です。
  • 2. 人工的なネットワーク構造により、AIは数時間や数日ではなく、数秒で動作します。
  • 3. AIは、メッシャーやソルバーといった手間のかかる専門ソフトを使わずに、CADによる機械設計を処理します。
    したがって、ソフトウェア2.0に労力的な2.0は出現しません。ディープラーニングの最終的な展開は、簡単というよりも、むしろ素直という表現が近いでしょう。

技術的な詳細 - AIシステムが学習するとはどういうことか

この図では、CNN (Convolutional Neural Networks:畳み込みニューラルネットワーク) が動作しているところを表しています。
CNNは、画像認識や画像処理のために設計されたニューラルネットワークです。相互接続された複数のニューロン層で構成されており、層状の人工ニューロンは、階層的なアプローチで視覚データを処理・分析します。最下層は、エッジや形状などの基本的な特徴を認識します。上位層はこれらの特徴を組み合わせて解釈し、より複雑なパターンやオブジェクトを識別します。このプロセスは図に示すように、左から右へ進むにつれて、より詳細な情報を学習します。CNNは、画像の分類などのタスクに特に効果的です。エンジニアリングの結果をCADの入力に関連付けることは、非常に高度なものではありますが、一種の画像分類です。

参照図

入力F(右)とCAD入力X(左)の関連付けを学習する測地線畳み込みニューラルネットワーク

通常のディープラーニングの普及版では、2D画像を使用しますが、出力データ(FEAやCFDの結果)や入力データ(3D CADの形状)の性質は、それ以上に複雑なのです。

技術的な詳細 - 学習プロセスの効率化

特定の転移学習の手法により、どのように学習効率を高めることができるかを示します。シミュレーションにAIを導入することで、想定していたよりもはるかに少ない労力で済むようになります。例として、NCS(Neural Concept Shape)は、すべての機能要件を満たしながら、自動車の空気力学に必要なCFDシミュレーション作業を97.5%削減しました。

自動車産業事例2-F1マシンのエアロダイナミクス

あらゆる技術的なアプリケーションにおいて、魅力的で挑戦的なベンチマークがFormula 1です。要約すると、エアロダイナミクスの観点から、F1には3つの重要な技術的課題と政治的・組織的課題があります。自動車分野、特にエアロダイナミクスにおけるAIが、どのように技術的・組織的な課題を解決できるかを見ていきます。

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F1における技術的な課題

空力の技術的な課題は、乗用車とは異なります。F1マシンでは、直進スピードを維持しながら、できるだけ多くのダウンフォースを生み出すことに注力しなければなりません。これにより、ドライバーはより良いグリップを得ることができ、高速走行中のコーナーハンドリングが可能になります。このF1のダウンフォースの威力は非常に大きく、天井に張り付いた走行も理論上はできるようになるほどの力です。
F1の空力抵抗を低減することは、車の最高速度を上げることにつながるため、必須です。しかし、乗用車に比べると、その影響は低くなります。一方、乗用車よりも影響が大きいのが空力弾性です。F1マシンには、空力的な負荷にさらされる外部構造が多く存在します。それらの荷重を受けると、車体やウィングがたわんだり変形したりして、車の性能に影響を及ぼすことがあり、いくつかの大きな事故が発生しています。

F1における組織的な課題

AI開発で重要になりうる最後のポイントは、「レギュレーション」です。F1の世界では、マシンの空力設計に厳しいレギュレーションがあり、ウィングやフロント・リアディフューザーなどの空力デバイスの形状やサイズに決まりがあります。このレギュレーションにより、エアロダイナミクスチームが選択できるデザインは限定されます。しかし、車の開発に活用できる風洞実験の回数やCFDシミュレーションの時間にも規制があります。この点は、外部からのコントロールによってリソースの利用が規制されない自動車メーカーとは異なります。

F1における空力設計の実例 - 従来のアプローチ

ここでF1の設計者が、図(重ね合わせ)のように、5種類の車のデザインを検討する必要がある場合を考えてみましょう。

参照図

5種類のF1デザイン

従来、設計者はCFD部門と協力して、流れ場(下図)やダウンフォースなどの空力パラメータを計算することで、事実上何が起こっているかを繰り返し確認していました。

参照図

空力F1シミュレーション

従来のシミュレーション手法では(AIの利点を理解するためには、この概念が不可欠)、CADからCFDへ作業の移行がすぐにできるわけではありません。F1チームのCFD部門では、専任のスペシャリストがいくつかのフェーズを担当します。この作業をより高度化したシナリオでは,ユーザーがポータル(Web ベースのサービス)の前に座っていて、CADファイルといくつかのパラメータを入力すると、空力に関する報告が自動的に戻ってくるようになっているかもしれません。そのような場合でも、重要なのはレスポンスの速さです。

F1における空力設計の実例-AIによるアプローチ

では、AIはこのレスポンスまでの待ち時間を3時間から0.3秒に短縮できるのでしょうか。AIを使用することにより、設計者は桁の違う種類の設計を管理し、AIで広範かつ詳細な設計空間を探索できるようになります。そして、彼らはCFDや風洞実験による最終的な検証に集中することができます。
設計者は表面や体積に関わるデータが欲しいはずです。最も重要な表面データは、表面圧力で表されます(下図)。

参照図

例として、車両断面の圧力場と速度場が挙げられる

ここでは設計者は空力特性を短時間(ノートパソコンで0.3秒,コンピュータクラスタで3時間)で確認することができます。空力特性の詳細のひとつに、さまざまな車両断面における渦の発生があります。下図のようにシミュレーション結果には大きな違いはありません。重要なのは、CFDシミュレーションの時間がAI予測で桁違いに短くなることです。もちろん、AIシミュレーションの場合はメッシュ生成の工程は存在しません。

参照図

F1マシンのエアロダイナミクスを流線表示した断面図。CFD(左:Groundtruth)とAI(右:Prediction)ミラーリング比較

自動車産業事例3-HVACシミュレーション

計算流体力学(CFD)シミュレーションは、システム内の空気の流れや乗員の温度と快適性に与える影響を予測することで、自動車の暖房・換気・空調(HVAC)システムの設計を最適化するために利用することができます。
しかし、CFDは一部の専門家だけのテーマであり、自動車業界と同様、一部のHVAC設計者だけが知っているものです。AI技術はどのようにHVACの設計者を助けることができるのでしょうか?自動車産業におけるAIは、顧客(OEM)、設計者、シミュレーションの専門家の間のギャップを埋めることができるのでしょうか?
Neural Concept Shapeは、Ter1のコンポーネントやアセンブリのリアルタイムシミュレーションをどのようにAIが実現するかを示します。
自動車業界における数年、数十年の経験から来るビッグデータと、近年のAIや機械学習の進歩が相まって、次世代自動車に向けた自動車業界の変革が進んでおり、空調設計者にも次の2つの点で支援することができます。

  • 1. AIベースのアルゴリズムで設計に関連する熱と流れの予測を高速化
    AIアルゴリズムは、設計と周囲温度の条件に基づいて、HVACシステムの性能を推定できるデータドリブン型の予測モデルを構築するために使用することができます。これらのモデルは、設計者がシステムのサイズと構成を最適化するのに役立ちます。
  • 2. AIシステムによる新たな設計の創出(最適化)
    AI最適化アルゴリズムは、一連の制約条件と目的、そしてやはりこれまでのAI予測能力に基づいて、HVACシステムの最適設計を探索するために使用することができます。これらのアルゴリズムは、ほぼリアルタイムで多くの設計変数を考慮し、目的の性能目標を満たす最適な組み合わせを見つけることができます。

データ取得とデータ利用

ここでは、空調シミュレーションの実際の使用例(下図)を見ていきます。

参照図

エンジニアリングにおける業務支援機能の向上は、Neural ConceptのAIシステム(NCS: Neural Concept Shape)の導入によって示されています。AIツールNCSは、同社の過去の経験から得られたデータセットと組み合わされ、PLMシステムに適切に保存されています。技術トレンドのキーワードである「ビッグデータ」を語るとき、そのビッグデータがどこにあるのかを具体的に追跡することが重要です。
PLMにはCADやシミュレーションデータからセンサーデータまで、製品の履歴に沿ったあらゆるデータを蓄積することができます。これらはNCSのディープラーニングAI技術の学習プロセスで活用されるのを待っているのです。
HVAC設計のシナリオでは、製品設計者が提供するAIツールへの入力は、生のCAD形状と動作パラメータ(例:吸気流量と温度)です。出力として期待されるのは、気圧、流速、温度で、CADを取り込んでから3秒で利用できます。
この予測ツールは、「設計者のための使いやすいソフトウェア」以上のものです。なぜなら、それはエンドユーザーのニーズをもとに作られたワークフローを内包しているものだからです。

HVACの事例概要

AIを「ソフトウェア2.0」アプローチ、つまりCADやCFDのような従来のソフトウェアのデータを餌(学習用データ)として与えたものと認識することで、AIを解明することができます。上記の事例1で示された必要な学習データは、予想よりもはるかに少ないものでした。1000以上のサンプルが必要という気の遠くなるシナリオではなく、わずか100のサンプルで、AIは望ましい精度に到達することができたのです。
データ効率化のための重要な要素は2つです。

  • 1. CADデータをノンパラメトリックで一般化された自由な読み取りを可能とすること。これはノンパラメトリックであるNeural Concept Shapeだからこそ可能です。
  • 2. 転移学習を活用する。転移学習を利用すれば、AI ディープラーニングをゼロからではなく、事前に学習させた予測モデルから「リスタート」させることができます。

結論

AIとディープラーニングは、最も初期の製品コンセプトの段階から、自動車産業の設計プロセスを革新する可能性があります。私たちは、AIが自動車設計のコンセプト段階から、以下のように自動車産業を支援できることを示しました。

著者:Anthony Massobrio
1990年以来、長くCFDの専門家として活躍。競争の激しい自動車業界のTier1サプライヤーで、初期は上級研究員として、その後エンジニアリング部門に移り、テクニカルディレクターも務める。2001年からは、ソフトウェアとエンジニアリングのコンサルタント会社で、セールスエンジニアおよびマネージャーを担当。2020年、AIに魅了され、以来Neural Concept社で「CAEのためのAI」の分野で活動。

本記事は、Neural Concept社の下記ウェブサイトに公開されている記事「Artificial Intelligence in Car Manufacturing」を日本語訳したものです。

Neural Conceptについて

Neural Conceptは、エンジニアリングを強化するためのAIディープラーニングアルゴリズムを開発しています。研究開発サイクルの高速化、製品性能の増強、次世代におけるエンジニアリング課題の解決により、これまでに80社以上の顧客の製品設計方法を革新してきました。同社は2018年、スイスのEPFLにある一流のAI研究室で設立されました。私たちは30人以上のメンバーで構成され、インテリジェンスで産業エンジニアリングの未来を変革するというビジョンに向かい全力を尽くしています。詳しくはこちら

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