What is your DREAM??
挑戦し続ける現場社員へのインタビュー
アジャイルが拓く、
誰もが幸せに働ける未来へ。
SCSKでアジャイル開発と共に歩む若手社員。実践者から指導者へと成長する中で見えたのは、手法より「在り方」を問うマインドセットの重要性だった。チームに寄り添い、挑戦を続けたその技術者が描く「誰もがいきいきと幸せに働ける日本社会へ」という大きな夢の軌跡に迫る。
尼子 恵理佳
文系出身、開発未経験からのスタート。
固定観念なく受け入れた
アジャイルの本質。
尼子は2020年にSCSKへ入社。文系出身で、入社前までウォーターフォール型開発(※)の経験はなかった。「最初に学んだアジャイル開発を『こういうものなんだ』と新鮮に、素直に受け入れられたのは、そのおかげかもしれない」と当時を振り返る。
(※)各工程が完了してから次の工程に進める開発手法。「滝(ウォーターフォール)」のように一方向に流れるイメージからこのように呼ばれる。進捗管理がしやすい一方で、途中段階での仕様変更が困難であり、テスト段階で発覚した問題への対応が容易ではないという課題を持つ。
配属後すぐにアジャイル開発チームの一員となり、約2年間、実践の場で経験を積んだ。3年目からは技術戦略本部で社内全体のアジャイル推進を担う立場となった。プレイヤーとして現場で動く一方、研修のトレーナーとして知識を伝え、コミュニティ活動を通じてその魅力を広めている。「教えることで知識が深まり、チームを客観的に見る視点も得られました。その経験から、アジャイル開発は、やり方(フレームワーク)だけでなく、在り方(マインドセット)が重要だと腹落ちしていきました」。
アジャイル開発とは
短い開発サイクルで設計・実装・テストを繰り返す手法であり、変化の激しい市場ニーズに迅速かつ柔軟に対応できる。チームで価値を創出することを重視し、単なる作業遂行ではなく「どう働くか(マインドセット)」を大切にする点が特徴である。
・市場の変化に迅速に対応可能
・優先順位の高い課題から着手し、かつ価値を最大化できるチーム体制を構築できる
・個々のメンバーの成長とチーム全体の成長を両立可能
・ユーザーやお客様のフィードバックを取り入れながら、継続的に改善できる
アジャイルにおけるマインドセットの重要性を、尼子は野球チームに例える。どれだけ個々の技術が高くても、チームスポーツではコミュニケーションが円滑でなければ勝利は掴めない。優勝という共通の目標に向かって前向きに取り組む姿勢、これこそがアジャイル開発でも求められるマインドセットである。
この価値観の根底には、学生時代から持ち続けた「誰かのために貢献したい」という想いがある。大学時代、学園祭の映像演出を務めていた尼子は、ステージ上で起きる状況を瞬時に捉え、より良い映像を届けるために、複数のカメラ担当者とマイク越しに連携しながら制作に取り組んでいた。裏方として、ステージに立つ仲間を支えることにやりがいを感じていたという。それは入社してからも変わらない。
「新人時代、上司から『いろんな案件で尼子さんが貢献してくれていることが見えているよ』と言われました。好奇心からさまざまなことに関わるうちに、自然と周りを支える動きができていたのかもしれません」。
この姿勢が、アジャイルという「チームで価値を創出する」働き方と深く結びついた。
チームに寄り添い、共に創る。
ふるさと納税プロジェクトでの成長
尼子のキャリアにおける大きな転換点は、SCSKのふるさと納税サービスの立ち上げプロジェクトである。SCSKとしても数少ないBtoCの新規事業であり、尼子自身も初めての経験であった。約1年半、スクラムマスター(※)としてチームに伴走する中で、多くの学びと成長を得た。
(※)アジャイル開発の一手法である「スクラム」において、チームの円滑な運営を支援する役割を担う。「スクラム」には、その他、プロダクトオーナー(製品価値の最大化を担う責任者)や開発チーム(実際に製品化を進めるメンバー)といった役割が存在する。
「チームメンバーの多くはアジャイル開発も新規事業の立ち上げも未経験でした。一人ひとりの不安や悩みに耳を傾け、一緒に考え、解決することを大切にしました」。
「自分たちの企画する事業やシステムが本当にユーザーに受け入れられるのか」、「新規事業という特性上、責任範囲や役割を明確にしづらく、どこまで自分が前に出るべきか」など、チームメンバーの不安や悩みに尼子は親身に寄り添い、支えていった。
特にプロダクトオーナーとは密にコミュニケーションを取り、ビジネス成長の議論に対して、アジャイル開発の観点からの選択肢を示すなど、一歩踏みこんだ取り組みを続けた。新規事業の立ち上げを成功へ導くため、チーム内でも特に重責を担ってきたプロダクトオーナーにとって、尼子の存在の大きさは言うまでもない。プロジェクトを離れた後、プロダクトオーナーをはじめメンバーから「尼子さんがいなくて不安」という声を聞き、初めて自分の貢献を実感した。
組織間・個人間の想いや価値観の違いで衝突することは必ず起こる。しかし、うまくいっているときには称賛し合う場を作り、うまくいかないときには客観的に状況を理解できるようサポートするなど、技術支援に加え、チームの士気を高め、一体感を生む働きかけもスクラムマスターの重要な役割なのである。
特に印象的だったのは、サービス初リリースの日の出来事だった。
「ファーストリリースはチームにとって特別な瞬間。大変な開発を乗り越えたメンバーとリーダーをねぎらうため、くす玉を用意してお祝いしました。メンバーが見せた、どこか安堵したような笑顔が今でも忘れられません」。
新規事業の立ち上げからサービスリリースに至るまでの経験を通じて、尼子はチームの自律的な成長を促すために自分が何をすべきか、常に考え行動する姿勢を身につけた。
社内唯一の資格、社外コミュニティへの挑戦広がる「貢献の輪」
ふるさと納税プロジェクトで得た成功体験は、尼子のチャレンジ精神をさらに加速させた。象徴的なのが、国内で約30名、SCSK社内では当時初となる「Management 3.0 Licensed Facilitator(※)」の資格取得である。
(※)オランダの組織心理学者・コンサルタントであるJurgen Appelo氏によって提唱された、アジャイルな組織運営とリーダーシップのためのフレームワーク「Management 3.0」の考え方や実践を広めるために、公式に認定されたファシリテーターのこと。
「2年目の頃、『やってみない?』と声を掛けてもらったのがきっかけでした。専門性が高く、誰も挑戦したことがない領域でしたが、アジャイルを実践し広める者として自分にしかない武器を身につけたいと思っていました」。
Management 3.0は自律した組織づくりに重要な権限委譲や文化醸成に対し、すぐにでも使えるワークが詰まっているという。資格取得を通じて活動の場は社内から社外へも広がり、ワークショップ開催などでアジャイルの考え方を伝える機会が増えた。
「『この考え方に出会えてよかった』『自分たちのチームでも使えそう』と直接声を聞ける瞬間は、自分たちの活動が誰かの役に立っていると実感できる大切な瞬間ですね」。
社外コミュニティや勉強会への参加も多くの学びをもたらした。特に研修で出会った講師の「我々は『世直し』をやっているんだ」という言葉に触れ、アジャイルを通じた社会貢献の確信が強まった。
夢は「誰もがいきいきと働ける社会」。
変革を支える存在を目指して
技術戦略本部で全社のアジャイル推進を担った後、尼子は新たな挑戦のステージへと歩みを進めた。現在は、アジャイル開発支援と、クラウドを最大限に活用して迅速な開発を目指す「クラウドネイティブ」の考え方を融合させたサービス「NebulaShift(ネビュラシフト)」に携わっている。
「NebulaShiftでは、単にアジャイル開発支援をするだけではなく、クラウドネイティブの技術も組み合わさることで、お客様にとってより実践的で高い価値を提供しています。私個人としても、これまでアジャイル開発の推進を積み重ねてきたからこそ、NebulaShiftを通して、アプリケーション基盤からコンサルティングまで支援できるようになれたのは大きな一歩です」。
「これまでアジャイル開発を通じて培ってきた“チームで成果を生み出す喜び”を、これからは他の技術領域とも掛け合わせながら、さらに広いフィールドで実感していきたい」と尼子は語る。そして、ITの各分野が持つ可能性を融合させることで、社会に新たな価値を創出できる——そんな未来志向の考え方を、より多くの人に広めたいと願っている。アジャイルとともに歩んできた入社以来の経験を土台に、尼子は今、自身の活動の先により大きな夢を描いている。
「ビジネス成長の加速を生み出し、誰もがいきいきと幸せに働ける日本社会となるための変革を支える存在になること。それが私の夢です」。
経済成長率や生産性で国際的に遅れをとる現状に対し、未来を担う子どもたちが、仕事を生きがいに感じたり、この国の未来に希望を持てるようにする必要があると強い問題意識を持っている。
「その鍵となるのがアジャイルとクラウドネイティブ、DXといったITの力です。変化を恐れずに、まずやってみる。対話とフィードバックを重ね、より良いものを創り上げる。このマインドセットが社会全体に広がり、ITによる組織と働き方の変革が進むことで、日本はもっと元気になるはずです」。
尼子の視線は、単なる開発手法の専門家にとどまらない。組織変革を促し、インフラからビジネスまで課題を一丸となって解決できるSCSKを実現すること。そしてお客様にとって「夢ある未来を共に創る」真のパートナーとなること。その大きな目標に向け、尼子の挑戦はこれからも続く。
※このインタビュー記事は2025年11月に作成されたものです
PROFILE
尼子 恵理佳
SCSK株式会社
ITインフラサービス事業グループ ITインフラ・ソフトウェア事業本部
サーバ・ストレージ部 技術第二課