事業の根幹を支えるシステムの基盤をOCIに移行
データベースの拡張性・処理性能を劇的に向上
株式会社ニトリホールディングス
情報システム改革室
システム基盤チーム マネジャー
株式会社ニトリホールディングス
情報システム改革室
システム基盤チーム シニアリーダー
「当社事業の要となる基幹システムを支えるITインフラのOCI移行を完遂できたのは、SCSKの貢献が大きく、プロジェクトマネジメント力とクラウドに関する深い知見に助けられました」
株式会社ニトリホールディングス 情報システム改革室 システム基盤チーム マネジャー
舘岡 徳弘 氏
ニトリホールディングスを中核とするニトリグループは、家具・インテリアなどの商品の企画から原材料調達、製造、物流、販売までを、中間コストを抑えながらグループ全体でプロデュースする独自の事業モデル「製造物流IT小売業」を確立し、成長を遂げてきた。2026年8月末時点におけるグループ全体の店舗数は、国内外合計1,087店舗(国内873店舗・海外214店舗)に上る。
その事業を支えているのが、1999年に内製化された基幹システムだ。システムの規模は約1,578万ステップに及び、現在も1日平均7.5件、多いときで20件超の機能追加・更新が行われている。
ニトリホールディングス 情報システム改革室 システム基盤チーム マネジャーの舘岡 徳弘 氏は「基幹システムは、まさに我々の心臓部です。調達・製造・販売・在庫管理・物流の各業務を一気通貫で支えています」と語る。
基幹システムのデータベース(DB)は、かつて業務領域ごとに複数の「Oracle Database」に分かれた構成になっていたが、2010年に一つのデータベースに統合され、その基盤としてUNIXサーバーが導入された。以降、この統合DB基盤は2014年と2018年に世代更新が重ねられてきた。しかし、事業成長に伴うトランザクション量・データ量の増大により、基盤の処理性能が限界に近づいていた。舘岡氏と同じシステム基盤チームでシニアリーダーを務める熊谷 聡 氏は、当時をこう振り返る。
「基幹システムでは、引っ越しシーズンなどの繁忙期には、トランザクション量が毎秒約6,000件に達します。統合DBの規模は約20TBで、毎日約5TBのアーカイブログが発生します。2018年に導入した従来基盤(UNIXサーバー)では、こうした大量のトランザクションやデータ処理への対応が難しくなり、繁忙期には店舗でシステムが利用できなくなる障害が発生することがありました。また、日次で行われる商品の需要予測計算処理や自動発注処理が遅延し、店舗への商品供給に影響を及ぼすケースも発生していました。」
こうしたなか、UNIXサーバーの保守期限も迫ってきたことから、同社は統合DB基盤を含む、基幹システムを支えるITインフラの抜本改革に乗り出した。そこで選択したのが、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」への全面移行である。
OCIへの移行に当たり、同社は統合DBの移行先として占有型Exadata環境を利用できる「Exadata Database Service Dedicated Infrastructure(ExaDB-D)」(2025年1月に提供された最新世代「Oracle Exadata X11M」)を選択した。また、基幹システムのAPサーバー実行環境には「Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)」を選択し、既存VMware資産を活用しながらクラウド移行を実現した。さらに、災害対策(DR)強化に向けてOCIの東京リージョン・大阪リージョン間でDB環境を「Oracle Data Guard」で構成し、待機系DBを常時稼働させることで、障害時の迅速な切り替えに加え、バックアップ処理のオフロードも可能としている。加えて、APサーバー実行環境については「Veeam Backup & Replication」を活用し、リージョン間でのレプリケーションおよび切り替え体制を整備することで、システム全体として高い事業継続性を確保した。2016年から利用しているEquinix社のクラウドハブを通じ、OCIと主要クラウドを低遅延で相互接続するマルチクラウド環境も実現している。
OCI移行を決める以前、同社にはオンプレミスにExadataを導入する選択肢もあった。熊谷氏は「当社の基幹システムはOracle Databaseを前提とした複雑なSQL文を多用しており、刷新後も使い続けることが前提でした。また既存システムで利用しているOracle Databaseの資産を移行しつつ処理性能を高められる基盤を探し、結果として現行基盤の踏襲か、ExaDB-DでOCIにクラウドリフトするかの二択になりました」と振り返り、こう続ける。
「APサーバー群も含めた基幹システムの全基盤をOCIにリフトすることで、ハウジングコストや回線コスト、運用の手間を削減でき、トータルコストではオンプレミスより低く抑えられることが分かりました。加えて、ハードウェア更新の負担がなく、ビジネス要件に応じたスケールアップ/ダウンも迅速に行えます。これらの利点からOCIへの移行を決断しました」
移行プロジェクトのメインパートナーにはSCSKを起用した。SCSKが全体管理からOCI上のシステム設計・構築、マルチクラウド接続までを担い、アシストとともに基盤移行を推進した。日本オラクルもメーカーとして技術面から支援し、円滑な移行をサポートした。
舘岡氏はこの体制について、「アシストには2010年のDB統合時から長年にわたり、当社のデータベース環境の保守をご支援いただいており、既存環境についても深く理解していただいています。日本オラクルからも製品ベンダーとしてOCIやExadataに関する技術支援を受けられる環境がありました。その上で、プロジェクト全体の推進役としてパートナーにSCSKを選定しました。大規模クラウドリフトの実績に加え、グループのSCSK北海道には、当社に常駐するITパートナーとして長年支援いただいており、揺るぎない信頼関係があります。それがSCSKに任せる安心感につながりました」と語る。
さらに、熊谷氏は「OCIへの基盤移行に際して約300項目に及ぶ要件を設定し、ベンダーに提案を求めたところ、SCSKはすべてに明確な回答をいただきました。その真摯な対応と経験に裏打ちされた課題解決能力の高さが採用の決め手になりました」と付け加える。
プロジェクトの始動後も、SCSKではPMに加え、ラインマネージャーも積極的に参加し、課題解決やスケジュール調整、レビューなどを通じて組織的に支援した。舘岡氏は「リスクを洗い出し、タスクの組み替えを柔軟に行うマネジメント力が、プロジェクトを淀みなく前進させました」と評価する。熊谷氏も「設計・構築にミスがなく、ネットワーク設計の追加要望にも親身になって最適なプランを提案していただきました。さらに、月に2~3回のペースで担当者が東京から我々のいる札幌に足を運び、対面で綿密な打ち合わせを重ねられたため、プロジェクトにスピード感が生まれました」と話す。
基盤の移行は入念なリハーサルを経て、店舗の営業終了時間が通常より早まる2025年12月31日から翌1月1日にかけて実施され、4時間半で完遂した。この成功にも、SCSKの貢献があったと熊谷氏は振り返る。
「基盤の移行は大容量DBを遠距離で移行するもので、難度の高い作業でした。本番移行前の初期データ移行だけで2週間を要するうえ、やり直しがきかず、本番移行での失敗も許されません。そこで、本番前にはリハーサルを繰り返して課題を徹底的に洗い出し、事前に解決を図りました。それでも移行時にはデータ同期の遅延という想定外のトラブルに見舞われ、対応に苦慮しましたが、SCSKを中心に全体への影響を考慮しつつ、関係者が一丸となって移行計画を適切に見直しながら対応しました。このように、困ったときには目的達成の方法を我々と一緒に考え、タスクを推進してくれるSCSKの姿勢とプロジェクトマネジメント力の高さには本当に助けられました」(熊谷氏)
こうして実現した基盤移行の効果は数字に表れている。
「統合DBの処理性能は従来比で300%向上し、2026年春の繁忙期も性能起因のトラブルや夜間バッチ遅延はゼロ件でした。DRのシステム切り替え時間も12時間から3時間に短縮され、Data Guard環境ではスタンバイDB優先のパッチ適用が可能になり、セキュリティ対策の柔軟性が増しています」(熊谷氏)
さらに、スケーリングにより閑散期・繁忙期に応じた柔軟なリソース調整も可能になり、「クラウドコストを最適化し、リソースを戦略的に配分しようという機運が高まっています」(熊谷氏)という。

同社では今後、基幹システムを支えるITインフラの「クラウドシフト」に本格的に取り組み、APサーバー群をContainer InstanceあるいはOKE(Oracle Kubernetes Engine)化することを検討するほか、OCIの自律型DBサービス「Autonomous Database」を活用したAIセキュリティの向上、API基盤の構築を検討している。また、今回移行したOracle Databaseのバージョンを現行の「19c」から、AIネイティブDBの「Oracle AI Database 26ai」へとアップグレードすることも視野に入れている。
熊谷氏は「これからは、システム基盤を長く使い続けることではなく、事業の成長・戦略を担える基盤へと刷新し続けることに注力していきます。その取り組みにも、マルチクラウドに精通するSCSKの貢献を期待しています」と抱負を示す。舘岡氏も「SCSKの力を借りながら、システム基盤を、業務を支える仕組みから、ビジネスに価値をもたらす基盤へと進化させたい」と力を込めている。
*1 Kubernetes:コンテナの運用管理を自動化するオープンソースのプラットフォーム。複数コンテナを一括管理し、デプロイ、負荷分散、復旧(ヒーリング)などの運用を自動化できる。

本プロジェクトは、ニトリホールディングス様をはじめ、アシスト社、SCSK北海道、SCSKがワンチームとなって推進できたことが成功の最大の要因です。SCSK内でもPMを軸に、マネジメント層や技術メンバーが連携し、課題解決やスケジュール調整、レビューなどを組織的に支援しました。こうしたSCSKの推進体制のもと、関係各社の高い専門性を結集することで、大規模な基幹システム刷新を計画どおり完遂することができました。移行後も新環境の効果を実感いただいており、お客様のビジネス価値向上に貢献できていることを大変嬉しく思います。
岩川 省吾
所在地(札幌本社):北海道札幌市北区新琴似七条1丁目2番39号
U R L:
https://www.nitorihd.co.jp/
1967年の創業以来、「お、ねだん以上。」の価値を提供すべく「自前主義」を基本方針として掲げ、商品の企画から原材料調達・製造・物流・販売までを一気通貫で担う独自の事業モデルを確立・展開している。「暮らしの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマン(志)のもと、国内外にグループ全体で1,000を超える店舗を展開。自前主義に則り、独自の事業モデルを支える基幹システムも1999年に内製化し、スピード感ある開発体制を築いている。
2026年11月初版