大和ハウス工業株式会社 様

全社的なデータ活用推進を支える仕組みとして
統合データ基盤を構築
データ活用により建設DX加速へ

SCSKが持つ豊富なAzure開発実績・知見を生かし
全社的なデータ活用を支える仕組みを実現

事例のポイント

お客様の課題

  • ソリューション間のデータ連携に統一された仕組みや作法がなく、社内のデータ流通が非常にわかりにくい状態になっていた
  • 「データを活用する」という視点で使いやすい形でデータが提供されておらず、データ活用のハードルが高かった
  • やりたいことは明らかだが、どう実現するかは決まっておらず、社内のコンセンサスもとれていなかった

課題解決の成果

  • ソリューション間のデータ連携に統一された仕組み、プロセスが適用されることでデータ流通がガラス張りになり、ガバナンスも向上した
  • データ基盤としてのアーキテクチャが整備されたことにより、後続の施策も含めて何をどう実現していくか検討する土台が確立された
  • 開発チームを社内メンバーとSCSKメンバーとでワンチームとして運営することで、社内メンバーの育成に繋がった

導入ソリューション

  • Azure 導入支援サービス
  • Microsoft Azure(API Management, Azure Data Factory, Service Bus, Azure SQL Database Hyper-scale, Event Hubs, Azure Data Explorerなど)

大和ハウス工業株式会社
経営戦略本部 デジタル戦略部
データ分析室
室長

八木 希仁

大和ハウス工業株式会社
経営戦略本部 デジタル戦略部
データ分析室
主任

中村 晴貴

「完全に手探りの状態からスタートしたプロジェクトであり、難易度の高い要求や開発中の方針変更なども発生しましたが、SCSKは常に協力的であり、どんな課題に直面しても対策を一緒に考えながらプロジェクトに伴走していただきました」

大和ハウス工業 経営戦略本部 デジタル戦略部 データ分析室 室長

八木 希仁

背景・課題

建設DX実現に向けた開発が進むなか
データ連携・活用の課題が顕在化

 大和ハウス工業は、創業者・石橋信夫氏が発案した鋼管(パイプ)構造の規格型仮設建物「パイプハウス」を製作・販売する企業として1955年に創業。1959年にプレハブ住宅の原点となる「ミゼットハウス」が誕生すると、それを起点に住宅総合メーカーへと発展してきた。現在は戸建住宅や賃貸住宅のみならず、地域の生活インフラとなる商業施設や事業施設の建築、再生可能エネルギー発電や電力小売を手掛ける環境エネルギー事業など幅広い領域のビジネスを手掛けている。また近年は大規模ショッピングセンター「イーアス」やマルチテナント型物流施設「DPL(ディープロジェクト・ロジスティクス)」を全国展開するなど、ハウスメーカーとゼネコン、デベロッパーの顔を併せ持つ企業として成長を続けている。

 そんな大和ハウス工業では、デジタル技術の活用により建設現場における働き方の抜本的な改革を目指す「建設DX」を推進している。その一環として、2019年に現場の技術者・技能者減少という課題を解決する目的で建設プロセス全体の効率化・高度化を図る「デジタルコンストラクションプロジェクト」が発足。設計・施工・維持管理の情報を共有・連携するBIM、生産性向上や進捗管理、安全管理の強化を図るIoTシステムなどの導入・活用を進めてきた。

 「デジタルコンストラクションプロジェクトでは、様々なソリューションの開発が同時並行で進行しています。そうしたシステムを作れば作るほどデータが生まれるわけですが、バックエンドにある基幹システムなど既存システム群も含めたデータ連携・活用を考えたとき、従来のように必要なデータを人手で収集・分析して活用するというやり方では上手くいきません」(大和ハウス工業 経営戦略本部 デジタル戦略部 データ分析室 室長 八木 希仁氏)

 そうしたなか、デジタルコンストラクションプロジェクトを主導するリーダーのうち横串を通す役割を担当しているリーダーが「データの流れをきちんと整理しないと、プロジェクト自体が立ち行かなくなるという危機感を募らせた」(八木氏)という。そこからデータの整流化と今後のデータ活用を支える基盤として「統合データ基盤」の構築に向けて動き出した。

解決策と効果

Azureでの開発やデータマネジメント領域への
実績を評価しSCSKをパートナーに選定

 「デジタルコンストラクションプロジェクトは、各ソリューション開発が別個に進むボトムアップの取り組みを中心に進められていました。データを整流化し、今後のデータ活用に繋げていくための仕組みとして統合データ基盤を構築するというコンセンサスは取れていたものの、当初は最終的にどのような状態にしたいのかといった構想企画があるだけで、実際にどんな仕組みとして構築するべきなのかは何も決まっていませんでした。それぞれの立場から様々な要求があり、その都度方向性の修正も求められます。そうしたなかで、2020年に統合データ基盤構築の実働部隊となる外部のパートナーを探し始めました」(八木氏)

 大和ハウス工業では、複数のベンダーを候補に挙げて比較検討。最終的にパートナーとして選定したのが、SCSKだった。

 「パートナーを選定するにあたり、まずは当社の主要システムを担当するベンダーを選択肢から外しました。統合データ基盤というのはデータの流れとガバナンスに統一された仕組みと作法を適用しようとする中立性の高い取り組みとなります。既存の大きなシステムを支えてくれているベンダーに頼った場合、どれだけ注意しても周囲から中立性に疑念を持たれるリスクがあったためです。さらに数年にわたる継続的な支援にも対応できる事業規模があり、緊急時には本社へすぐに駆け付けてもらえるように関西に拠点のあるベンダー、と絞り込んだ結果、SCSKが最適なパートナーだと判断しました」(八木氏)

 八木氏によるともう一つ、SCSKの技術的な優位性も選定の決め手になったという。

 「当社ではMicrosoft Azureを標準のクラウドプラットフォームとして採用しており、統合データ基盤もAzure上に構築することを想定していました。その点、SCSKはAzureを利用した開発実績が豊富にあるだけでなく、データマネジメント領域において多くのサービスを提供しており豊富な知見を有しています。こうした技術的な優位性も、SCSKを選定した理由です」(八木氏)

 SCSKをパートナーに選定し、統合データ基盤の構築に向けたプロジェクトが始動したのは2021年初めのこと。

 「当初はウォーターフォール的な要素が強いスタイルで構築に着手し、最初は利用頻度が最も高いと思われるAPI連携プロトコルを整備しました。ある程度アーキテクチャの全体像が固まり、形が出来上がってからは、アジャイル開発的な要素が強いスタイルに切替え、2週間スプリントで各システム側の業務要件に合わせた機能強化・改良に取り組みました」(大和ハウス工業 経営戦略本部 デジタル戦略部 データ分析室 主任 中村 晴貴氏)

 「アジャイル開発的なスタイルに切り替えた目的はプロジェクトの見通しを良くするためです。開発が進むとともに様々な要求が具体化してきたため、その対応をしていくなかでプロジェクトの現状把握やマイルストンがわかりにくくなっていました。やりたいことをユーザーストーリーに整理し、タスクの依存関係や優先順位などを改めて見える化した上で、2週間サイクルのスプリントによって同じリズムで仕事が進められるようにしました。普段は開発業務の実践の場が少ない若手メンバーを育成したいという期待もありました。結果的に当社、SCSKを問わず、開発業務に関わるメンバー間のコミュニケーションコストが下がり、プロジェクト全体の見通しが良くなって、当社メンバーも実務を担当できるようになるなどプロジェクト全体のパフォーマンスは大きく向上しました」(八木氏)

 こうして段階的にスタートした統合データ基盤開発は、2022年3月から段階的に運用を開始。2025年3月に当初構想した初期開発フェーズの開発を予定通り完了した。

 「当社には標準のアプリケーション開発基盤もあるのですが、それと同様に統合データ基盤を標準の仕組みとして位置づけ、統合データ基盤を通してデータ連携してもらうことを奨励しています。これによりデータ連携・活用の仕組みが一元化されるので、データのトレーサビリティやガバナンスを担保できるようになり、中長期的にはデータ連携部分の開発・保守の効率化にも繋がると想定しています。当初掲げた『データの流れをガラス張りにし、今後のデータ活用を支える土台を作る』という目的に近づきつつあると実感しています」(中村氏)

図:統合データ基盤の概要図図:統合データ基盤の概要図

今後の展望

初期開発フェーズの完成により
継続的改善フェーズを内製化

 統合データ基盤の初期開発フェーズが成功裏に完了したことで、ユーザーからのフィードバックの取り組みや計画的な機能拡張、定常保守を含む継続的改善フェーズへ移行した。体制面でもこのタイミングでSCSKとの契約は終息を迎え、内製化する体制に切り替えた。体制切替においてはプロジェクトに蓄積されたノウハウのドキュメント化、開発メンバーに求められるスキルマップの整備、引継ぎのためのスキトラなど年間計画を立て円滑に移行することができた。大和ハウス工業では、ここまでに至ったSCSKの支援を高く評価しているという。

 「プロジェクトが始まってからおよそ1年は、何もないところから開発を進めていかなければいけませんでした。当社の進め方に不備があった場面もありました。そうした状況のなかでもSCSKは急な対応へのフットワークが軽く、直面した課題に対する解決策も一緒に考えながら進めてもらえました。SCSKが培ってきたAzureの知見、構築実績や経験も今回の統合データ基盤に大いに役立てられています」(八木氏)

 現在、大和ハウス工業では全社でデータが日常的に活用されている組織風土を確立するという目標に向けた取り組みを進めているという。日常的なデータ活用を支える仕組みとして統合データ基盤開発をはじめ、データカタログの導入など複数の取り組みを並行して進めているとのことだ。

 「新しいシステム構築プロジェクトが始動することになれば、SCSKにもまた相談させてもらいたいと考えています」(八木氏)

集合写真

SCSK担当者からの声

大和ハウス工業様のデータ活用を支える全社的な仕組みの開発に携わらせて頂けたことを大変光栄に思います。変化が激しい状況で適応力を発揮して成果を上げるためには、お客様と一緒に共通の目標をもって協力する「ワンチーム」を組成できるかが鍵を握ります。大和ハウス工業様のプロジェクトへの強力なコミットメントがあってこそ、SCSKがこれまで培ってきたAzureの知見や開発力を最大限発揮することができ、お客様のご期待に応えることができたものと確信しています。統合データ基盤の初期開発はこれにて一区切りとなりますが、今後も大和ハウス工業様と共に新たな挑戦に取り組む機会を心から楽しみにしております。

ソリューション事業グループ クラウドサービス事業本部 クラウドサービス第一部 第三課

中村 立人


お客様プロフィール

大和ハウス工業株式会社 様

所在地:大阪市北区梅田3-3-5
創業:1955年4月5日
U R L:
https://www.daiwahouse.co.jp/

1955年に「建築の工業化」を目指して創業。現在は戸建住宅、賃貸住宅、分譲マンションの企画・設計・施工・販売から、オフィスビル・商業施設・事業施設(工場・物流施設・医療施設など)の企画・設計・施工、都市開発事業や環境エネルギー事業など、幅広い領域の事業を手掛けている。近年は大規模ショッピングセンターやマルチテナント型物流施設の開発・運営も行う。北米・アジア太平洋・欧州を中心とする海外進出も積極的に展開している。

2025年3月初版