帳票作成とは?種類や作成の流れ・注意点について徹底解説!
「帳票作成の流れが分からない」
「帳票作成をする際に気を付けておいた方がよいことが何か知りたい」
帳票作成は、業務情報を正しく整理し、必要なタイミングで正確に共有・保存できるようにすることを目的とした重要な業務であり、単なる書類作成以上の意味を持つものです。そのため、電子帳簿保存法の対応シーンだけでなく、あらゆる業務の中で効率化や品質向上が求められるケースはたくさんあります。
この記事を読んで、帳票作成の基本を理解し、業務改善のヒントとして活用してみましょう。
目次
1. 帳票作成とは
帳票作成とは、帳票を作成する業務全般のことを指します。
帳票とは事業における日々の取引内容やお金の流れを、体系的・継続的に記録するための記録帳のことです。日々の業務データを正確に管理し、社内外で共有するうえで欠かせない役割を果たしています。
事業を営む個人事業主や法人には、帳票を正しく作成し一定期間保存することが法律で義務付けられています。
2. 帳票の種類
帳票は大きく分けて以下の3つに分類することができます。
- 帳簿
- 伝票
- 証憑
(1)帳簿
帳簿とは、会社の取引内容やお金の流れを記録した書類です。
帳簿は会社で行われたすべての取引を記録し、収益・支出を正確に管理するうえで欠かせないものとなっています。日々の取引の記録だけでなく、決算書作成や税申告の根拠資料としても重要な役割を果たします。
具体的な例としては、日々の取引を記録する仕訳帳、勘定科目ごとに整理された総勘定元帳、現金の出入金を管理する現金出納帳などがあります。これらを正確に記帳・管理することで、会計監査や税務調査への対応もスムーズになります。
(2)伝票
伝票とは「いつ、どのような取引が行われたのか」を記録した書類です。取引や作業が発生した瞬間の情報を記録し、それらを証明するために作成されます。
伝票は一定の書式に基づき各取引を行った担当者が記入し、帳簿の1つである総勘定元帳に転記されるのが一般的です。企業内の各業務をつなぐ流れを作る役割を果たし、経理やチェック体制を整えるのに役立ちます。
伝票の具体例としては、仕入伝票、出荷伝票、経費精算伝票、支払依頼書などがあり、それぞれの取引や業務の発生事実を証明する重要な資料となります。
(3)証憑
証憑とは、取引や契約内容の事実を証明するための書類です。
帳簿や伝票と併せて保存することで、企業の取引の正当性や透明性を担保します。お金のやり取りや契約の事実を客観的に証明する役割を持ち、トラブル防止や税務調査への対応時の根拠となります。
証憑の例としては、領収書、請求書、契約書などが挙げられます。近年では、電子データとして保存されることも多く、電子帳簿保存法に準拠した形式での管理が求められるケースも増えています。
3. 帳票作成の流れ
ここでは、帳票作成の流れについて5段階で解説します。
- 帳票の目的と使用場面を明確にする
- 必要となる情報を洗い出し、整理する
- 出力形式と構成を考える
- テンプレートを作成しデータを反映させる
- 出力・レビューを行い、修正する
(1)帳票の目的と使用場面を明確にする
まず、帳票が「誰が」「どのような場面で」「何のために」使うのかを定義します。目的が明確になることで、記載すべき項目が定まり、無駄のない帳票作成につながります。
(2)必要となる情報を洗い出し、整理する
次に、帳票に記載すべきデータをリストアップし、必要となる情報を整理します。この段階で情報を整理しておくことで、後のテンプレート作成がスムーズになり、抜け漏れのない帳票作成が可能になります。
(3)出力形式と構成を考える
帳票がどの媒体で利用されるかを踏まえて、紙・PDF・Excel などから最適な形式を選びます。例えば、現場で紙を使う文化が強い場合は紙フォーマットを選択したり、メールで送る必要がある場合はPDFとの併用なども検討したりします。
併せて、情報の優先度や視認性を考慮しながらレイアウト構成を設計し、現場で見やすく使いやすい形を目指します。
(4)テンプレートを作成しデータを反映させる
設計した構成に基づいてテンプレートを作り、必要なデータを反映させていきます。システムとの連携がある場合は、データ差し込み設定や自動生成の設定もここで行います。
(5)出力・レビューを行い、修正する
帳票が完成したら試しに出力し、現場の利用状況に合っているかを確認します。レビューをもらい、レイアウトの崩れがないかや読みにくい箇所がないかなどを確認して、必要に応じて調整を行います。
4. 帳票作成時の注意点3選
帳票作成の流れを理解していただけたところで、帳票作成時の注意点について3つ解説します。
- 保存期間に気をつける
- 転記・計算ミスに注意する
- 記帳のタイミングを守る
(1)保存期間に気をつける
帳票には税務や会社法に基づいて、一定期間保存しなければならない法的義務があるため、保存期間に気をつけましょう。この保存期間は、税務調査や監査時に帳簿を提示できるようにするための重要な決まりであり、保存が不十分な場合にはペナルティや加算税の対象となることもあるため注意が必要です。
原則、法人における帳簿の保存期間は7年間です。
しかし、青色申告を行っている企業で、かつ欠損金が発生した年度の帳簿については、最長10年間の保存が必要です。青色申告の優遇である赤字の繰越控除を認めるために、10年前の赤字でも確認できる帳簿が必要となるからです。
そのため、帳票を紙で保存する場合には劣化・紛失防止のための保管環境の整備をしたり、電子保存する場合は電子帳簿保存法の要件を守った保存を行ったりすることが重要です。
(2)転記・計算ミスに注意する
帳票作成における代表的なトラブルが、転記漏れや転記間違い、金額の計算ミスであるため、細心の注意を払うようにしましょう。
また、特に手作業での転記や集計では誤りが生じやすいため、記帳後の確認や定期的な残高照合を行うことが重要です。このような人為的ミスを減らし、正確性・効率性を両立するためにも、必要に応じて、会計システムや管理ツールを用いるのがおすすめです。
(3)記帳のタイミングを守る
帳票は取引が発生したタイミングで速やかに記録することが基本です。後回しにすると、記録漏れなどが発生し、正確な会計処理が行えなくなってしまいます。
また、記帳が大幅に遅れてしまうと、税務調査で「事後作成」とみなされるリスクが高まってしまう恐れもあります。
よって、取引が発生した時点で速やかに記録したり、日や週単位で記録するなどのルールを定めておき、ミスが起きにくく記帳が滞らない仕組みづくりをするようにしましょう。
5. 帳票の電子化に関する要件
電子帳簿保存法により、帳簿や証憑を電子データで保存することが可能になりました。また、2022年の電子帳簿保存法改正により、帳簿や証憑の電子化に関する規定がより柔軟になったことで、実務上の運用がさらにスムーズになりました。
ただし「真実性の確保」「可視性の確保」「保管期間の遵守」の3つのルールを守ることが求められるため、帳簿の電子化にあたっては、よく要件を確認する必要があります。
区分は「電子帳簿保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つに分けられ、必要な要件が異なるため注意が必要です。そのため、システムや運用フローが法令要件を満たしているかをこまめに確認するようにしましょう。
帳票作成を適切に行って企業情報を正しく管理しよう
この記事では帳票の基本や種類、作成方法、注意点、さらに電子帳簿保存法に対応した帳票の管理のポイントについて解説しました。
帳票作成は会社や事業のあらゆる取引を正確に記録し、経営状況や社内の実態を明らかにするための基本的かつ重要な作業です。単に数字や取引を記録するだけでなく、記帳や転記の正確性を確保すること、計算ミスを防ぐこと、そして法定の保存期間を遵守することは、経営の透明性や監査対応に直結します。
正確な記帳と適切な管理を意識することで、経営の透明性や業務効率を高めることができます。まずは帳票作成の基本を押さえて、着実に実務に移していきましょう。