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コンテナ技術はどこで使われている? VM はもう時代遅れなのか?

「コンテナ」をどう定義するかにもよりますが、コンピューティング・コンテナ・テクノロジーの概念は数十年ほど前から存在します。過去 10 年間で、エンタープライズ IT や Web スケールのクラウドプロバイダーは、コンテナを利用して多くのアプリケーションを実行するようになり、毎週数十億のアプリケーションが立ち上げられています。

さらに、パーソナライズされたデジタルサービスが多くの業界に破壊的革新をもたらしました。世界は、5G とエッジコンピューティングが私たちの生活をどのように変えるのかという話題で持ち切りですが、この盛り上がりは、スマートフォンが初めて登場した時をはるかに超えるものでしょう。5G の話に入る前にまず、通信事業者 (CSP) と IT 業界が現状のインフラストラクチャで成し遂げてきたことについて振り返りましょう。

Turkcell のような、Red Hat を利用する通信事業者は、過去数年の間にプライベートクラウドを積極的に構築して、ネットワーク機能仮想化 (NFV) を使用して既製のサーバーハードウェア上の仮想マシン (VM) 内でアプリケーションをパッケージ化し、モバイル (4G/LTE) およびビジネス (SD-WAN) ネットワークサービスのデプロイメントの迅速化と自動化を実現しています。

また、テクノロジーおよびビジネスパートナーとのコラボレーションにより、コンテナ、マイクロサービス・アーキテクチャ、およびクラウドネイティブ・アプリケーションを使用している企業もあります。そうしたお客様は、さまざまな IT、ネットワーク運用、ビデオ、および OSS/BSS アプリケーションの各環境にわたる実稼働環境でこれらのテクノロジーを Red Hat OpenShift Container Platform にデプロイすることにより、ビジネスをモダナイズし、収益化までの時間を短縮しています。

その流れで、Red Hat を利用する通信事業者の多くは、Red Hat OpenShift の導入を IT、運用、データアプリケーション全体で、そして急速に変化するネットワーク環境でさらに拡大することにより、OpenShift が提供するコンテナとクラウドネイティブ・アーキテクチャの ビジネスメリットを獲得したいと考えています。ネットワーク・アプリケーションの観点から見れば、コンテナ、マイクロサービス、およびクラウドネイティブのアプローチには、既存の VM 環境に比べて、明白な潜在的メリットがあります。

  • オーバーヘッドの削減:コンテナはハードウェアではなくオペレーティングシステム (OS) を仮想化するので、メモリ使用量は仮想マシンに比べて小さくなります。そのため、消費するハードウェアリソースが少なく、必要な時間も短縮されます。さらに、コンテナを使用してトランザクションまたはセッションを個別に開始および処理し、完了したらすぐにコンテナリソースを解放できる点も、サービスおよびアプリケーションの設計者にとってメリットとなります。
  • 起動時間の短縮:新しい VM を起動する際にはイメージをホストシステムに移動しなくてはならないため、秒単位の時間がかかります。コンテナイメージは小さなアプリケーション・モジュールであり、多くの場合、50 ミリ秒未満で起動できます。
  • 使いやすさ:コンテナは優れた可搬性により複数の運用環境間を移動させられるため、プライベートクラウドとパブリッククラウドの間でワークロードを簡単に移動できます。クラウドネイティブ・アプリケーションは、コンテナ内でパッケージ化したマイクロサービスのモジュール式コレクションであり、各機能の弾力性と拡張性を高め、デプロイを容易にします。
  • 保守作業の削減:コンテナ内のアプリケーションの保守は、さまざまなオペレーティングシステムを実行している仮想マシンに比べてはるかに簡単です。Red Hat OpenShift Container Platform のような製品を RHEL のベースイメージと組み合わせてアプリケーションの管理に使用している場合、自動化された方法で簡単に更新の適用や展開を実行できます。仮想マシンのオペレーティングシステムへのパッチ適用と比較すると、適切なツールで正しく使用すれば、コンテナの保守に必要な労力のほうがはるかに少ないことがわかるでしょう。

NFV は近年になって飛躍的に成熟度を深めています。それに伴い、テクノロジーパートナーが提供するモバイルパケットコア、ファイアウォール、ポリシー、ディープパケット・インスペクション、ビデオ最適化は、多くの本番環境で主要機能が物理から仮想に移行しています。通信事業者はこれまで、自動化によってサービスのデプロイにかかる時間を短縮し、運用コストを削減しながら、Red Hat OpenStack Platform をベースとする水平型クラウドプラットフォームを使用して、世界中の数億人に及ぶ利用者をサポートしてきました。

それでは、次世代の 5G モバイル・インフラストラクチャが発表され、電気通信事業者各社がそれに関する計画を立てつつある状況において、コンテナやクラウドネイティブ・テクノロジーはどのような意味を持つのでしょうか。通信事業者が 5G に見ているのは、高速無線アクセスネットワーク (RAN) だけではありません。エッジにつながるその高速ネットワーク上に、企業顧客向けの革新的な新しいアプリケーションやサービスを展開していくチャンスだと考えており、そのような分散 5G/エッジ・モバイル・インフラストラクチャの複雑さを最適化および軽減する上で重要な役割を果たすコンテナおよびクラウドネイティブ・テクノロジーに熱い視線を注いでいます。

前途洋々にも見えますが、落とし穴はないのでしょうか。また、実現するのはいつになるでしょうか。重要な課題は実際にいくつか存在していて、私たちは業界一丸となって、その課題の克服に取り組んでいます。

アプリケーションのモダナイゼーション

通信事業者は、テクノロジーパートナーの提供するさまざまな機能にわたり、多くのネットワーク・アプリケーションを物理インスタンス、そして最近では仮想インスタンスにデプロイしています。それらのアプリケーションをコンテナに配置できるようモジュール型のマイクロサービスに分解する作業は複雑であり、こうしたモダナイゼーションから最大限の利益を得るためには相当な思考と努力が必要です。その結果、完成に至る開発コストやかかる時間は大きく変動します。

ネットワーク

物理ネットワークの要素としては当然のように期待されていたさまざまな機能を NFV でサポートするため、これまで通信業界は OpenStack を用いた NFV の成熟に多大な努力を費やしてきました。これにはたとえば、マルチテナント、負荷分散、セキュリティ、転送パフォーマンス、ソフトウェア定義ネットワークおよびルーティングなどの機能が含まれます。RAN や 5G が必要とする規模に拡張するためには、さらにリアルタイム・アプリケーション、同期、IPv6、および分散コンピューティングをサポートする必要があります。

そして通信事業者は、NFV により仮想化のメリットを活用したように、今度はコンテナ化されたクラウドネイティブ・アプリケーションが持つメリットをネットワーク機能のために活用する方法を模索しています。Kubernetes は、コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ、スケーリング、自動化、および管理を制御を行う際に第一の選択肢となるオープンソース・プロジェクトになりました。そのシンプルなネットワークモデルは Web アプリケーションとマイクロサービスに適していますが、今のところ、より高いサービスレベル目標 (SLO) の提供を必要とする高性能な仮想ネットワーク機能 (VNF) アプリケーションには十分ではありません。

Kubernetes の機能を補うため、多数のオープンソース・プロジェクトやワーキンググループ (コンテナネットワーク・インタフェース、Multus、リソース管理、ネットワークなど) が活発に活動しており、通信事業者向けのクラウドネイティブ・ネットワーキング・アプリケーションをデプロイする堅牢で安全な運用管理のニーズに対応しています。イノベーションのペースを数値で示すと、300 万行に上る Kubernetes 自体のコードのうち 95% が、過去わずか数年間のうちに変更されています。

可搬性

Linux コンテナは複数のクラウド環境間を移動でき、アプリケーションはオンプレミスとパブリッククラウドのどちらでも実行できます。とはいえ、よくある誤解ですが、複数のアプリケーションをコンテナ化しても、それらを組み合わせてあらゆる Kubernetes 準拠コンテナ管理プラットフォームで実行できるというわけではありません。

OCI 準拠のコンテナイメージと OCI 準拠のコンテナエンジン (CRI-O など) の間の標準インタフェースは OCI によって定義されていますが、アプリケーションと基盤カーネルの間でどのような相互作用が実際に行われているかはわかりません。たとえば、アプリケーションの起動と実行で発行される何百ものシステムコールに関する可視性は、OCI では提供されません。

今後の動き

では、業界の現状はどのようなものなのでしょうか。Telenor を始め 50 社を超える通信業界の Red Hat ユーザー企業は、Red Hat OpenStack Platform を用いた NFV を拡張し続けています。

同時に、Red Hat OpenShift は、金融 (BBVA)、自動車 (BMW)、医療 (HCA)、そして通信事業 (Telstra) に至るまで、あらゆる業界の多くのお客様に選ばれるオープンプラットフォームであり、そのユーザーは、オンプレミス、複数のパブリッククラウド、および as-a-service 型でのクラウドネイティブ・アプリケーションのデプロイ規模を拡大し続けています。

Open Network Automation Platform (ONAP) にあるような一連のサービスをコンテナ化し、Red Hat OpenShift のようなサポート付きのコンテナ管理プラットフォームで実行する事例の積み重ねにより、通信事業者のお客様がコンテナおよびクラウドネイティブ・テクノロジーをどのように使用しているかに関する貴重な分析情報が蓄積されてきました。

たとえば、Red Hat のお客様である X by Orange は、クラウドネイティブのビジネス・セキュリティ・サービスと音楽ストリーミングのアプリケーションを Red Hat OpenShift で完全に自動化およびデプロイし、同社のテクノロジーパートナーが現在も VM でパッケージ化して提供しているネットワーク機能と組み合わせて、Amazon Web Services のパブリッククラウドで配信しています。

Red Hat が擁するテクノロジーパートナーのグローバルなエコシステムは、Red Hat および通信事業者のお客様と非常に緊密に連携して、他の多くのアプリケーションとともに Red Hat OpenShift にクラウドネイティブ方式でデプロイできるよう、次世代の 5G コアと RAN アプリケーションのモダナイゼーションを加速しています。

とはいえ、「仮想マシンは消えていくのか?」と問うなら、「当面はなくならない」が答えとなります。物理ネットワーク要素 (特に光、無線、アクセス、ルーティング) のデプロイメントはまだ続いています。それと同様に、通信事業者による Red Hat OpenStack Platform への仮想ネットワーク機能 (VNF) のデプロイメントは今後も継続し、仮想マシンは、独立した VM ベースの環境ではなく、コンテナやマイクロサービスと組み合わされたクラウドネイティブ・ファブリックの一部になるように進化するでしょう。

Red Hat を利用している通信事業者の間では、本番環境でデプロイしているテクノロジーをすぐに変更する動きは見られません。そうした取り組みは運用コストが非常に高く、投資に対する収益を最大化したいと考えるためです。多くの通信事業者は、インフラストラクチャとサービスの成長および拡大のために、古いテクノロジーに制限をかけ、新しいテクノロジーを導入することで、リスクとコストを軽減しています。

仮想マシンからコンテナおよびクラウドネイティブ・デプロイメントへの進化においては、4G/LTE から次世代の 5G/エッジ・コンピューティング・サービスへの進化と同じアプローチが取られることが予想されます。Red Hat OpenShift によってテクノロジーパートナーのアプリケーションとともに、さまざまな方法を使用し、ニーズに合ったクラウド・インフラストラクチャで、自由にアプリケーションを開発およびデプロイすることができます。

Red Hat 製品を利用する通信事業者は、一部のアプリケーションをベアメタルにデプロイし、他のアプリケーションはコンテナ内にパッケージ化した VM の VNF として、さらにはモジュール式のクラウドネイティブ・ネットワーク機能 (CNF) マイクロサービス・アプリケーションとしてデプロイすることができます。これらのサービスには、ステートフルなものもあれば、ステートレスなものもあります。これらすべてを管理し、個々のコンポーネントに分割して、さまざまなサービスを自動化し、効率的に運用する方法が、まさに次世代の 5G/エッジ・クラウドネイティブ・インフラストラクチャです。

このトピックの詳細については、最近のウェブセミナーの録画をご覧ください: Accelerating The Journey: Cloud-Native Architectures For Digital Service Providers

コンテナ技術の利用分野、そしてVMとの共存についての記事です。

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