オンプレミス型システムは自社で用意したネットワーク環境内に、すべてのIT機器があります。ですから従業員のパソコンなどを直接、ビジネスアプリケーションやファイルサーバに接続でき、ファイルやデータの効率良い活用やセキュリティに強いのが特徴です。しかし先に記載したように、ビジネスの多様化や働き方の変化で、事業拠点は各所に分散され、従業員も外部にいながら業務を遂行する場面が増えてきました。そうなると従来のオンプレミス環境にあるITシステムだけでは、業務に支障が生じます。
企業が成長して部署や支店が増えると、今までは増えた部署や支店にもファイルサーバを設置していました。すると、ファイルサーバが複数になり、同じ目的のファイルが各所に点在することになりがちです。しかも、どれが最新版なのかわからなくなってしまいます。ファイルのダブりによって、組織全体で扱うストレージの容量は増え、ファイルサーバ自体の管理を個別に行う必要もあり、管理コストの増大を招きます。
従来のファイルサーバは、ファイルをフォルダといった入れ物に入れる階層構造で管理しています。対してクラウド・オブジェクトストレージは、保存されたデータ一つひとつにIDとメタデータを付与してオブジェクトとして管理します。IDはデータの住所で保存場所を示します。メタデータは作成者や日付などの属性情報です。このようにオブジェクトストレージは、IDとメタデータですべてのデータ(オブジェクト)を管理するので階層構造は不要になり、そのためデータ容量の制限もなく大容量のデータを効率的に保管できます。
AWSなどクラウド事業者が提供する、クラウド・オブジェクトストレージなどのサービスは、インフラ部分については災害対策やセキュリティ対策が施されています。ユーザはサービスを利用するだけでその堅牢さを享受できます。例えばAWSのクラウド・オブジェクトストレージは、3箇所の独立したデータセンター(アベイラビリティゾーン)にデータを多重に配置します。このため、たとえ1箇所が被災しても、別の場所にあるデータを使って復旧できるため、1箇所のオンプレミス環境で管理するファイルサーバよりも安全と言えます。
クラウド・オブジェクトストレージには、セキュリティ対策として暗号化やファイル操作の監視などの仕組みが備わっています。世界中のさまざまな規制機関の要件を満たすセキュリティ基準とコンプライアンス認証をサポートしています。
クラウド・オブジェクトストレージは、データをオブジェクトとして保管しますので、保管場所は階層構造がなく、フラットな空間です。これによってオブジェクトの取り出し、移動、複製が容易になり、物理的に分散した場所でも保管しやすくなっています。結果、クラウド・オブジェクトストレージに保存したデータは従来のファイルサーバよりも管理が簡単で、バックアップや復旧に要する環境を安価に整備できます。
クラウド・オブジェクトストレージの多様なメリットは手に入れたい。しかしオンプレミス型ファイルサーバのストレスのない使い勝手は失いたくない。そんなユーザには、クラウド・オブジェクトストレージデータの保管先として利用しながら、従来のオンプレミスのファイルサーバの使い勝手をそのま維持できる、NetAppのCloud Volumes ONTAP(CVO)をお勧めします。