事例紹介 情報基盤構築にOSSを活用 1万人規模での利用を想定したサービス業大手様事例

事例紹介

情報基盤構築にOSSを活用 1万人規模での利用を想定したサービス業大手様事例

OSS活用のポイント

  • ・「認証基盤」と「ユーザーインターフェース(UI)基盤」の構築にOSSを採用
  • ・OSSが有する柔軟性と拡張性で、お客さまの要望に柔軟に対応
  • ・実績と商用サポートがあるOSSを選択し、OSS採用に対するお客さまの不安を払拭
  • プロジェクトの背景▼
  • OSS製品の選定経緯▼
  • お客さまの評価▼
  • SCSKの強み▼

プロジェクトの背景 情報基盤の構築にOSSを提案

持続的な成長のためには、情報基盤の見直しが不可欠——。サービス業大手のA社様は、中期経営計画の一環としてIT戦略を構想。SCSKのスタッフがコンサルタントとしてIT戦略策定を支援した。
A社様は情報基盤を「インフラ層」と「アプリケーション基盤層」「業務アプリケーション層」の3層でとらえており、すでにインフラ層の整備は終了していた。ITシステム刷新を狙う今回のプロジェクトでは、アプリケーション基盤層の整備に着手。老朽化したアプリケーション群を刷新する計画だ。アプリケーション基盤層は6つの基盤で構成されており、SCSKはその上位に位置する「認証基盤」と「ユーザーインターフェース(UI)基盤」の構築にオープンソースソフトウェア(OSS)を利用した提案を行った【図1】。

OSSを提案した4つの理由

「具体的には、OSSの認証基盤『OpenAM(ThemiStruct-WAM)』と、UI基盤『Liferay』を採用することを勧めました」。プロジェクトリーダーを担当した製造・サービスシステム事業本部の石川裕喜はこう話す。
OSSの採用を勧めた理由は4つある。(1)高度な柔軟性と拡張性があること、(2)充実した機能性、(3)堅固なセキュリティー機能、(4)低価格であることだ。
「単なるソフトウェアの導入ではなく、基盤から構築するため、お客さまの要求がまだ完全に固まりきれていない状態でのスタートとなりました。そのため、ソフトウェアの柔軟性と拡張性がとても重要でした。また、コストを抑制する必要もあり、この両方の課題を解決できるのがOSSだったのです」とUI基盤に「Liferay」の採用を勧めた大澤武史が説明する。
A社様の要求がまだ固まっていないため、商用製品が要求にフィットするかどうかは未知数だった。そのため、要求が出るたびに、それに合わせて拡張できるOSSは最適だったというわけだ。

OSS製品の選定経緯 「OpenAM(ThemiStruct-WAM)」と「Liferay」導入のポイント

認証基盤を担当した渡辺 力は、「OpenAM(ThemiStruct-WAM)」を選択した理由について「国内で多数の導入実績があること」、そして「パートナー企業であるオージス総研が保守サポートを提供しており、豊富な導入実績を有していたこと」の2つを挙げる。A社様のプロジェクトでも、オージス総研とのパートナーシップを生かしたのだった。
また、「Liferay」を選定した経緯についてUI基盤を担当した米田正之は次のように説明する。「『Liferay』には世界的に数多くの導入実績がありました。加えて、充実したポータル機能と堅固なセキュリティー機能を有し、保守サポートを行っている複数のベンダーがある点も採用した理由です」。OSSはソースが公開されているため、拡張性が高いというメリットがあるが、その反面、保守サポートを受けられないというデメリットもある。「『Liferay』の場合、デュアルライセンスを採用しており、完全なOSS版のほかに、エンタープライズ版という保守サポートが受けられるライセンスも提供されています。A社様にはエンタープライズ版を勧め、OSSを採用する際に生じる不安を取り除くことに成功しました」(米田)

開発メンバー

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お客さまの評価

「OpenAM(ThemiStruct-WAM)」と「Liferay」という2種類のOSSを採用し、認証基盤とUI基盤の構築を完了したA社様は、社内情報共有システムを立ち上げた。また、A社様の社員は日本各地にいるため、社員のコミュニケーションの活性化を狙った社内SNSの構築も現在検討しているという。当初OSSで基盤を構築することに少し不安を感じていたA社様だったが、システムが稼働して以降は「不安はない」と太鼓判を押し、OSSを高く評価してくださっている。
「お客さまからの機能追加などの要望に応えようとしても、商用製品ではカスタマイズできないし、カスタマイズできたとしても保証されないことが多い。その点、OSSならばお客さまの要望に柔軟に対応できるので、喜んでいただけていると思います」(石川)

SCSKの強み

「OSS」「商用製品」を含め、最適なソリューションを提供

本プロジェクトを開始する前に、社内のOSS専門部署であるOSS戦略企画室の協力の下、検証環境を用意し、A社様の要望に応えられるかどうか十分な調査と準備を行ったことも、スムーズにプロジェクトを推進できた要因のひとつだ。また、ソフトウェアに障害が発生した際、ソフトウェアベンダーに問い合わせる商用製品と比べ、ソースが開示されているOSSならば、SCSKのスタッフが自らソースを解析して調査できるといったメリットもある。
製造・サービスシステム事業本部 サービスシステム部 部長の北尾 聡は次のようにプロジェクトを振り返った。「OSSを採用するというSCSKの提案が評価された面はあるが、A社様のように高い先見性を備えた企業に巡り合えたことは、当社にとっても幸運でしたね。理解のあるお客さまとの出会いで、1万人規模で利用できる大規模な基盤構築事例ができ、そのノウハウも蓄積されました」
今回のプロジェクトでは、お客様の課題に対してどんなソリューションが最適かと熟考した上で、OSSが最適だという答えを出した。そして、これは数年前からOSSを利用した情報基盤構築の提案を行い、実績を積み重ねてきた成果でもある。だが、SCSKの強みはOSSだけではない。商用製品とOSSを含めて、顧客の要求に最適なソリューションの提案ができる——それが最大の強みなのである。

(インタビュー実施時期:2014年5月)