What is your DREAM??
挑戦し続ける現場社員へのインタビュー
AIで描くのは、
人がもっと創造的になれる
未来。
人とAIが共生する未来は、夢物語ではない。SCSKでAIビジネスをゼロから立ち上げた開拓者は、その理想の実現に挑んでいる。AIを「ITの可能性を解き放つ鍵」と捉え、ビジネス価値を創造する挑戦は、新しい働き方と豊かな社会へのヒントを与えてくれる。AIの力を信じ、人と共に夢を追う挑戦者は、どんな未来を描くのか?
島田 源邦
20年の時を経て、再びAIの世界へ。
ゼロからの挑戦が始まった日
1995年、島田がSCSKへ入社した当時、AIは「冬の時代」を迎えていた。大学では知識情報工学を専攻し、第2次AIブームの技術に触れていたものの、その限界も感じていた島田は、入社後のキャリアでAIと関わることはなかった。金融機関向けのシステム開発で10年、その後BPOサービスの立ち上げで10年。お客様のビジネスプロセスに深く入り込む経験を積み重ね、着実にキャリアを歩んでいた。
転機が訪れたのは2016年。ディープラーニングの発展を背景に第3次AIブームが到来し、社会の関心が高まっていた時のこと。この新たなビジネス機会を捉えるべく、社内でAIサービスビジネスを専門とする「AIビジネス推進室」が立ち上がることになった。その推進課の課長として、島田に白羽の矢が立った。
しかし、彼にとってAIは20年も離れていたブランクのある領域。当時の最新技術の動向は全く分からなかった。
「組織が立ち上がった当初、推進課のメンバーは私一人でした」。まさにゼロからのスタート。島田はまず、社内公募で「AIの可能性を感じ、一緒に挑戦したい」という意欲あるメンバーを募った。技術的な知見を持つ者ばかりではなかったが、熱意ある5〜6人が集まり、初期メンバーとしてチームが結成された。同時に、AIベンチャー企業と協業関係を結び、外部の知見も積極的に取り入れた。論文を読み漁り、パートナー企業に教えを請いながら、必死で技術のキャッチアップに努める日々。
「パートナー企業からは『こんなことも知らないのか』と思われていたかもしれません。打ち合わせで知らない技術用語が出てきても、その場で質問することができず、後で必死に調べる日々でした」。
手探りの状態ながらも、島田とチームの挑戦が始まった瞬間だった。
「価値」の探求が生んだ300件の相談。技術をビジネスに変える思考法
事業として具体的な案件を早期に立ち上げることが、チームの最初の目標だった。しかし、自社にはまだ十分な技術力が蓄積されていない。そこで最初の1年は、パートナー企業が持つAIソリューションをお客様に提案し、SCSKが持つSI(システムインテグレーション)力と組み合わせて提供する形をとった。
並行して、自社独自のサービス開発にも着手。技術のキャッチアップとサービス企画を重ね、2018年、ついに自社サービス第一号となる「AI活用による業務課題解決サービス」の提供を開始した。これは、個別の顧客課題に特化したAIモデルを組み込んだソリューションを提供するサービスだ。
チームとしてこだわったのは「AIで何ができるか」ではなく、「AIでお客様のビジネスにどのような価値を提供できるか」という視点だった。
「当時はAIという言葉が独り歩きし、バズワード化していました。しかし、それをビジネスとして成立させるには、提供価値を突き詰める必要があります。お客様の現場担当者や当社の営業担当者と一体となって、課題解決の先にあるビジネス価値を共に考え抜きました」。
例えば、あるお客様からは「自動検知システムの誤報が多く、精度を改善したい」という相談があった。AIを活用して検知精度をそれまでの2割程度の水準から8〜9割に高めることは可能だったが、島田たちはその先を見据えた。
「精度の向上だけでは、取り組みの価値として弱い。そこで私たちはお客様の現場担当者と共に別のシナリオを考えました。検知の精度が向上し、起こっている事象をタイムリーにかつ正確に把握できるようになることでお客様の業務プロセス・事業活動そのものや、お客様にとってのお客様に対するサービスレベルにどのような影響を与えることができるだろうか。さらに、蓄積されるデータを活用することで、お客様のサービスや製品に対して別の付加価値を与えることはできないだろうか」
このように、現場の課題を経営目線で捉え直し、価値のシナリオを構築していく。このアプローチは、製造業の品質管理におけるリスク低減、交通インフラの設備保全における安全性向上など、さまざまな業界で応用された。長年、お客様のシステム開発やビジネスプロセスに寄り添ってきた島田だからこそ、深い業務理解に基づいた価値提案が可能だったのだ。
こうした取り組みの結果、6年間で延べ300件近い相談が寄せられた。ゼロから始まったチームは、技術力だけでなくお客様と共にビジネス価値を創造する確かな実力を身につけていった。
AIの力を引き出すために
AIは働き方を変える可能性を秘める一方、その能力を妄信することは危険である。「AIが出した答えだから」と無批判に受け入れるのではなく、その出力がどのようなプロセスで生成されたかを理解することが重要である。
・一般的な事象には有効だが、
前例のない新しい価値創造や特定状況下での最適判断には必ずしも適切ではない
・AIに与える情報の質と量が、出力の精度を左右する
適切に構造化した情報を与え、AIの能力を最大限に引き出す「使いこなしの作法」が、これからのビジネスパーソンには求められる。
挑戦がもたらした3つの財産。
チームとネットワークで未来を拓く
6年にわたるAIビジネスの立ち上げは、島田に大きな財産を残した。それは「チームビルディング力」「人材とネットワーク」そして「仮説検証と価値訴求シナリオの構築力」の3つだ。
「目指す姿を掲げ、共感してくれる仲間を集め、共に学び成長しながらチーム力を高めていった経験は、何物にも代えがたい財産です」。
当初、技術面では未熟だったチームも、300件近いの案件に取り組む中で、顧客課題を捉え、技術で解決に導くプロフェッショナル集団に成長した。自ら手を挙げ挑戦するメンバーが集まったことで、学ぶ意欲の高い強力な組織が生まれた。社内外に強力なネットワークが構築されたことも大きな財産である。産業や金融など各業界の営業部門や開発部門、パートナー企業、グループ会社のメンバー。これまで特定のお客様との関わりが中心だった島田にとって、人の輪は爆発的に広がった。このネットワークは、課題解決の推進力となる。
さらに、多くのお客様と向き合い培った「価値訴求シナリオ構築力」は、単なる技術提供に留まらず、経営課題にまで踏み込むスキルだと言えるだろう。島田は「お客様の上位組織のマネージャーや経営幹部になったつもりで、『この取り組みはどう見えるか』と第三者視点で考える」と語る。この視点がSCSKの提案に深みと説得力をもたらしているのだ。
人とAIが共生する豊かな社会へ。
SCSKが描く「夢」の実現に向けて
「ITの可能性を解き放つ鍵」としてのAI。その力を社会に届け、安心して便利さを享受できる未来を創る。島田は「人とAIが共生する豊かな社会を作ること」が自身の夢であると語る。
「AIはITの可能性を飛躍的に向上させる鍵なんです。AI技術が進化すれば、ITが解決できる課題の範囲はより人間の活動に近い領域まで広がっていきます」。
ただし、AIにすべてを任せるのではなく、機械的な作業やより高い生産性を求める仕事はAIに任せ、人間は創造的な仕事や対話を通じた価値創造に集中すべきだと考える。「単に効率性を追求するだけでなく、AIの活用によって人間が発揮できる価値を最大化するという視点も持って、人とAIが共生する豊かな社会を実現したい」。
ゼロからAIビジネスを立ち上げ、多くの仲間と未知の領域を切り拓いた島田は、単なる技術提供だけでなく、お客様の課題を深く理解し、関係者を巻き込みながら解決へ導く力を培った。これからのAI時代、島田はお客様や社会と共に未来を描き、人とAIが真に共生する豊かな社会を実現する「共創ITカンパニー」の実現をリードしていく。
※このインタビュー記事は2025年11月に作成されたものです
PROFILE
島田 源邦
SCSK株式会社
ビジネスデザイングループ GXセンター
事業戦略統括部 部長