What is your DREAM??
挑戦し続ける現場社員へのインタビュー
生産技術で、エンジニアの時間を
“作業”から“アイデアの創出”へ。
現場で日々直面する作業。それは、重要である一方で、かかる工数も多い。「創造的なことに時間を使えば、もっと価値を生めるのではないか」という課題感のもと、エンジニアの仕事の在り方を変えようとしている。生成AIをシステムライフサイクル全体に適用する“生産技術”の開拓者は、どのような経緯で今の夢を抱いたのか?描く未来を聞いた
川﨑 雄太
非効率な作業への課題意識が、
新しい技術に取り組む原動力に
2014年にSCSKに入社し、当初はERPパッケージ(※)であるPROACTIVEの会計システムや基盤、モバイル開発といった幅広い経験を積んだ。しかし、開発リーダーとして現場に立つ中で、次第に非効率な作業に対する課題意識が芽生えたという。
※Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)の略。
企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を一元管理し、基幹業務全体の効率化・最適化を図るためのシステムのこと。
「オンプレミス環境からクラウドへの移行、テストの自動化といった技術変革の波を現場で体感しました。その中で、自分の手で一つひとつ長時間をかけて打ち込んでいた作業が、コンピューターの中で自動で動いていく様子を目の当たりにしました。新しい技術の面白さに引き込まれましたね」。
川﨑は以前から環境構築やテストといった作業に負担を感じていた。例えば環境構築では、50~60項目以上ある手順の中でパラメータ設定を1つでも誤ってしまうと、エラーが起こる。エラーが起こってからの原因特定に数時間を費やすことも少なくなかった。また、300項目にも及ぶテストを行うには、膨大な時間と集中力が求められた。
「自分自身が作業をする中で、負担に感じていた部分もありました。それに、小さなミスはどうしても防ぎきれないこともありますし…。そうした“作業”の領域を早く、正確に実行することを少しでも助けてくれるような技術があれば、人間が発揮すべき創造性に集中できるのに――それが今の原動力です」。
業務の中で肌で感じていた課題感が、新たな技術領域に目を向けさせた。そこで、入社8年目に社内の公募制度を利用し、現在の「共創IT推進部」に異動。クラウドやXR、そして急速に進化する生成AIといった最先端技術を扱う環境へと、自らの意思で飛び込んだ。
「この部署でのミッションは、まだ本格的に使われていない最新技術を収集・検証し、活用できそうなものを実際の業務に適用していくことです。新しい技術に触れる楽しさは、今も大きなモチベーションになっていますね」。
開発負荷を6割削減
共創IT推進部に異動してから「一歩先・半歩先の技術」を現場に導入・定着させることを使命とし、川﨑は現場での実体験をもとに、特に生成AI技術の活用に注力してきた。ETL(データの抽出-Extract、変換-Transform、格納-Loadを行うプロセス)ツールの開発現場を支援する中で、生成AIをテストケースの自動生成に応用するというアイデアを考案した。
「現場のエンジニアの方々は、最初は『生成AIがテストケース作成に本当に使えるのか?』と半信半疑でした。でも、自分の中では『実現できそうだ』という確信があったので、とにかくプロトタイプを作って見せることから始めました」。
生成AIを活用する上で大きなポイントとなったのが、指示文(プロンプト)の工夫だ。AIに正確なアウトプットを出させるには、プロンプトの作成が鍵だという。川﨑自身が学んできた知識を活用し、プロンプトエンジニアリングを駆使しながらシステムを組み上げた。
「お客様の設計書から、自然言語でテストケースを自動生成するだけでなく、そのテストケースを実行するためのデータまで生成AIに作らせるよう工夫しました。検証の結果、テスト作業の約6割を削減できる試算が出ました。現場からも『こんなことができるんだ』という驚きの声が上がり、興味を持ってもらえることが非常に増えました」。
川﨑は、現場の方々と毎週ミーティングを実施、信頼関係を築きながら、実際に案件の中で動くツールとして開発を進めている。
SCSKの「生産技術」
生成AIをシステムライフサイクル全体に適用し、開発・保守・運用業務の効率化と属人化の防止を図る。
要件定義から設計、コーディング、テスト、運用保守に至るまで全工程でAIを活用し、従来の手作業による煩雑な工程を自動化する。具体的には、基本設計書から詳細な画面設計書の自動生成や、既存コードからの設計書逆生成など、多くの工数を要していた作業を劇的に効率化。これによりエンジニアが創造的な思考をより価値の高い業務に集中できる環境を整備し、人間とAIの最適な役割分担を実現する。
社内への適用はもちろん、お客様のサービス提供においても俊敏性と品質向上の両立を支援している。
生成AI活用によって
「提案型」のビジネスを実現する
川﨑が推進する生成AI活用の意義は、単なる効率化にとどまらない。
「まずは自分たちの業務を改善できなければ、お客様の課題を解決するのは、なおさら難しいと思います。自分たちの業務を見直して生まれたリソースを活用することで、SCSKとして、お客様自身もまだ気づいていないような価値を提案できる――そう信じています」。
だからこそ、AIで日々のルーティンワークを自動化し、エンジニアが本来の力を発揮できる環境を整えることを重視している。余裕が生まれたリソースは、「アイデア」と「品質」へと振り向けられる。
「AI時代における人間の役割は、“アイデアを生み出すこと”と“品質を担保すること”にあると思います。あくまでイメージを伝えれば、あとは全部システムがやってくれる。出来上がったものを見て『ここは違うからこう直して』と伝えていく。そういう、指示を出すだけの働き方にしていければ理想ですね」。
もっとも、生成AIが出力するものが常に正しいとは限らないため、発生する不具合の傾向を分析し、最終的な品質チェックを人が担保できる仕組み作りにも取り組んでいる。
さらに、取り組みの視野はテスト工程だけにとどまらない。
「今はテストケースの作成とデータ作成までを自動化しましたが、テスト実施やエビデンス作成など、後ろの工程の自動化にも挑戦したい。さらにいえば、開発の前工程である設計書作成の領域にまで遡って、自動化を進められるのではと考えています」。
根底にあるのは、エンジニアの立ち位置を受託型から提案型へと変えていきたいという思いだ。
夢は、エンジニアの在り方を再定義すること
新しい技術を探求し続ける川﨑のモチベーションは、常に「試すことができる」楽しさにある。
「私たちのチームは、新しい技術を集めてきて『これいいね』と思ったらすぐ試せる環境があります。そのスピード感が探求心を支えてくれています。また、後輩たちの存在も大きな刺激ですね。勉強熱心な人が多いので、少しでも怠けているとすぐ追い越されます(笑)。その危機感が自分の成長にもつながっています」。
川﨑が描く夢は、自らの技術で新しい価値を生み出すことだ。
「新しいサービスを生み出せるような人になりたい。そのために、理想は自分が指示を出すだけで、システムがどんどん出来上がっていく世界観をどうしても実現したいと思っています」
最終的に実現したい未来像は、お客様とのコミュニケーションの場そのものをシステム開発の場に変えてしまうこと。
「打ち合わせの場の中で、会話しながら同時にシステムのイメージまで作り上げられたいと思っています。お客様との会話をそのままベースに、生成AIがシステムを組み上げていく。できる限り臨場感を持って形にしていく世界をつくりたいですね」。
かつて自身が苦労した煩雑な作業を取り払い、創造的な仕事に集中したいという実感から生まれた理想だ。AI技術を駆使し開発現場の生産性を飛躍的に高めることで、SCSKグループのエンジニアが真にお客様のビジネス促進に貢献できる存在となる未来を切り拓く。
「エンジニアの働き方を再定義する一助になりたい。自分の挑戦を通じて、SCSK全体の技術力や提供価値の幅を広げていけたらうれしいです」。
※このインタビュー記事は2025年11月に作成されたものです
PROFILE
川﨑 雄太
SCSK株式会社
産業事業グループ・製造事業グループ 産業・製造事業グループ統括本部
共創IT推進部 技術開発課