AI活用の道を拓くテキスト解析【前編】
離職率減、業務効率化を実現。「KIBIT」事例インタビュー

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あるシンクタンクが最近発表した調査では、すでに人工知能(AI)を活用している割合は2割を超え、導入準備中や検討中の企業まで含めれば5割を超えるといいます。
その中でも、テキストデータの解析に特化した人工知能「KIBIT(キビット)」が大きく注目されています。IT系メディアはもとより、主要経済紙、テレビのニュース番組のAI特集でも製品名を挙げて紹介されるほど、その実用性の高さが話題となっているようです。

「KIBIT」がどのような分野で活用され、具体的にどのような効果が期待できるのか。今回は、「KIBIT」の開発元である株式会社FRONTEO(フロンテオ)のキーマンをお迎えし、直接お話をうかがいました。

ゲスト
株式会社FRONTEO
ビジネスソリューション本部 企画部 部長代理
正見 卓司 氏
SCSK株式会社
ITエンジニアリング事業本部 エンタープライズ第三部 副部長
KIBIT担当 原島 敦
SCSK株式会社
ITエンジニアリング事業本部 エンタープライズ第三部
KIBIT担当 西廣 恭太
聞き手
SCSK IT Platform Navigator事務局

メール内容を分析して企業不祥事につながる「醸成」を未然に予防

――以前まで、AIはバズワードのような存在でしたが、現在は活用している企業も増えています。
特に、AIによるテキスト解析エンジンの「KIBIT」は、大手新聞社やテレビニュースでも取り上げられ、注目を集めています。実際に「KIBIT」はどのような分野で活用されているのでしょうか。

SCSK 原島(以下、原島):SCSKでも「KIBIT」を取り扱うようになり、多くのお問い合わせをいただいていますが、大きく2つのテーマに期待が高いことを感じています。
1つは、談合・カルテルの予防策としてAIを活用するニーズ。もう1つは、人事系での採用効率化と離職防止にAIを活用したいというニーズです。


SCSK 原島


FRONTEO 正見氏(以下、正見氏):企業がコンプライアンス強化やタレントマネジメントで、AIを活用したいというニーズはやはり強くあります。
行動情報科学によると、人間が実際に不正を起こすまで、「醸成」「準備」「実行」という3つの基本プロセスがあることがわかっています。
第1段階の「醸成」について。給料が安い、昇進が遅いなどの会社への不平・不満や借金、病気、プライベートでのトラブルなどが不正を促します。談合・カルテルなら、ここで各社との関係構築が行われるわけです。
第2段階「準備」では、計画を立てたり、関係者同士でコミュニケーションを取ったりします。
そして第3段階「実行」では、実際に不正行動を行う段階です。実行段階で防ぐことはもはや困難なため、「KIBIT」は競合会社の担当者との交流や会社への不平不満、金銭面でのトラブルなどに関して記述されたメールを発見することにより、第1段階の醸成を未然に防ぐことを可能にします。


FRONTEO 正見氏


原島:「KIBIT」の良いところは、メールの文章など定性的な情報も定量化できることにありますね。メールにはさまざまな情報が含まれており、当然それらは数値化されていませんので、従来は分析やフィルタリング、スクリーニングが難しいものでした。

正見氏:まさにそのとおりです。「KIBIT」はテキスト情報を独自のアルゴリズムでスコアリング(点数付け)し、高いスコアの情報をピックアップします。膨大なデータから必要な情報を探す作業でも、「KIBIT」が高いスコアをつけた情報を確認すれば良いので、作業が効率化されます。
スコアの高いデータの中に目的以外のものが含まれていた場合は、人間がそれを対象外情報だと教えることでKIBITは学習し、さらに精度の高い結果を出せるようになるのです。

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図:人工知能「KIBIT」によるテキストデータ解析のプロセスと仕組み

新卒採用の選考に「KIBIT」を活用

SCSK 西廣(以下、西廣):人事系では、人材の効率的な採用と離職防止に「KIBIT」が活用されているケースが多いですね。


SCSK 西廣

正見氏:現在はいわゆる「売り手市場」で、有効求人倍率・新規求人倍率ともに高水準が続いており、どの企業も人材確保と離職防止に悩んでいます。
人材は“人財”であり、もっと輝かしい仕事をして欲しいと人事担当者は考えています。
そこで注目されているのが、人事業務に高度なITを活用して生産性向上や効率化を図るHR Tech(Human Resource×Technology)です。AIの適用が期待されていますが、採用活動や離職防止など、これまで人が判断して実施する施策が多く、指標モデルがないことが障害になっていました。

――企業によって求める人物像は異なると思いますが、具体的にどのように「KIBIT」が活用されているのでしょうか。

正見氏:もちろん、会社によって理想の人材は千差万別です。2つ事例をお話します。
KIBIT導入ユーザーでおられます横浜銀行様では、新卒採用の選考に「KIBIT」をご活用いただいております。入行後10~15年程度経過した行員を対象としたエントリーシートを教師データとし、うち、課長・課長代理への登用開始初年度に昇格した行員を正解データとする等のエントリーシートのスクリーニングモデルを作り、書類選考段階から「KIBIT」を活用する取り組みを行いました。

「KIBIT」は、中長期で活躍が期待される人材の採用と、エントリーシートの客観性の担保という両方のニーズにマッチし、数千件のエントリーシートに対しても採用担当者による確認作業を大幅に削減し、面接などにより多くの時間を充てることが可能になりました。

業務環境が厳しい業界の派遣職の離職予兆検知に貢献

正見氏:もう一つは、医療事務専門の人材派遣を行っている企業の離職防止事例です。医療事務は人の流動が激しい業界で、「KIBIT」を導入いただいた企業も、入社後1年以内に離職する社員が一定数以上存在しています。また、年間7回の面談機会で適切なサポートを実施しているものの、毎月大量の面談記録を読まなければならず、フォロー要否の見極めが困難であることが課題でした。

そこで同社は、過去の面談記録をデータベース化した後、「KIBIT」に投入し、退職した人の発言に共通する特徴を学習。高いスコアリングをした面談者に対し、悩み相談など個別の追加フォローを施すことで、離職率を大幅に下げることができました。この結果、「KIBIT」は退職リスクが高い社員を抽出できることがわかり、適切な対策を打てば退職を防ぐ可能性があることもわかりました。
また、離職防止は貴重な“人財”の確保だけではなく、採用活動費用や入社した社員へのトレーニング費用を会社の財産に変えられるというメリットをもたらします。


――大変興味深い事例をお聞きすることができました後編では金融庁が設置した「Fintech実証実験ハブ」で明らかにされたAIの活用効果について、お話をうかがいます。(後編はこちら:金融庁支援の実証実験でも効果を立証。「KIBIT」の魅力とは


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