事例紹介 MySQL活用によるスクラッチ開発 社員1万人規模に対応する社内基幹システム

事例紹介

MySQL活用によるスクラッチ開発 社員1万人規模に対応する社内基幹システム

OSS活用ポイント

  • ・社員1万人規模の基幹システムをOSSで構築
  • ・豊富な取り扱い実績、深い技術力の蓄積がある「MySQL」を採用
  • ・OSS活用によりコスト削減と安定稼働を実現
  • プロジェクトの背景▼
  • 構築フェーズ▼
  • 運用フェーズ▼
  • 導入の効果▼
  • 今後の展開▼

プロジェクトの背景 高い技術力のアピールとコストダウンに向けて

オープンソースソフトウェア(OSS)を使って大規模基幹システムを構築する——。2011年、CSKとの合併を控えた住商情報システムは、前例のなかったこの取り組みに挑むことになる。住商情報システムは、2005年に住商エレクトロニクスと合併。長きにわたり3つの基幹システムを運用していた。業態の異なる企業同士の合併であったため、それぞれのシステムも大きく違う。それらを1つに統合するにあたり、2010年、OSSで全面リプレイスするという命題が与えられたのである。
ソリューション事業部門の井上真之はプロジェクトの背景を次のように語る。「目的は2つありました。SCSK(住商情報システム)の高い技術力を社内外にアピールすること。そしてコストを抑えて大規模基幹システムを構築することです」。こうしてプロジェクトはスタートしたのだった。
「当時の経営の課題として、内部統制および管理項目の強化、業務効率の改善がありました。それを3つのシステム統合と合わせて盛り込むので、比較的難易度の高いプロジェクトでしたね」と、アプリケーション開発を担当したソリューション事業部門の岡村崇志は振り返る。

構築フェーズ

品質を確保するための3つの施策

本プロジェクトではリスクを減らすため、検証に重きを置いた。「設計の前段階では、『MySQL』や『Red Hat Linux』『Spring Framework』などのOSSについて、必要な性能が確保できるか、安定した運用ができるのか、バージョンの整合性はとれるのかといったことを検証していきました」(岡村)。また、インフラ構築を担当した基盤インテグレーション事業本部の池田徹郎も続ける。「要件定義と並行して立ち上がったプロダクト選定のワーキンググループにて、過去のシステムの実績や基礎検証データを基にOSSの機能、コスト、要求充足度を評価しました」
SCSKは他社に先駆けて2003年より日本国内での「MySQL」の取り扱いを開始しており、「MySQL」の豊富な取り扱い実績を持っていた。また2005年に米国シアトルの「MySQL」開発拠点に赴き、池田が中心となって「MySQL」本体の日本語処理機能を大幅に改善したという実績を持っており、技術の蓄積も申し分ない。2005年より「MySQL」を社内システムに導入した実績があり、経験やノウハウが蓄積されていたことも「MySQL」の採用を後押しした。しかし、本プロジェクトは今までの社内システムよりも開発人員規模が大きく、多くの機能が存在しており、品質の確保が大きな課題となった。それに対して取った施策が次の3つである。
まずOSSの組み合わせによって基幹システムの品質にどういう問題が起きるのか、必要とする機能を本当に実現できるのかなどを事前に調査するフィージビリティスタディを行った。次にデータベースソフトに「MySQL」を採用するにあたり、検証を行うための評価ツールを自社で作成し、チェックすることで問題を事前に見つけ、早期に打開策を打つようにした。最後に、ソースコードが公開されているというメリットを生かし、テストフェーズでカスタマイズを行うことによって効率を上げ、検証フェーズの作業に余裕を持たせたのだ。そして事前にガイドを作ってほかのスタッフでも作業ができるように工夫するなどの手はずも整えた。
商用製品の場合、大きなプロジェクトで派生する問題を解決するような、さまざまな有償オプションを用意している。「OSSの場合、機能は少ないが、自分たちの使い方によって補うことができる。また製品自体に存在しない機能であっても、OSSユーザー自身によるサードパーティ製のツールが豊富に存在する。そういったものの活用を視野に入れていくと、それまで商用製品でしか実現できなかったこともOSSで実現できるようになる」(池田)
なお、今回のプロジェクトでは、監査用のログの取得が必要となった際、「MySQL」の機能として備わっていなかったため、プラグインを作成して対応している。「情報を見つけて、要件のアウトプットに見合う形でのプラグインを開発し、SIerのサイドで製品に手を入れることが自在にできるということもOSSのメリットだと思う」(岡村)

営業システムの主なソフトウェア構成

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運用フェーズ

1万人規模のユーザーを持つシステムへ

こうして2012年7月、基幹システム「SUCCESS」が誕生し、運用がスタートした。2013年4月にはCSKのシステムを統合し、いまや1万人規模のユーザーを持つシステムとなっているが、リリース後、特に大きな障害もなく順調に稼働している。ユーザー数や業務量が大幅に増加したにもかかわらず、問題もなく稼働し続けているのは、ユーザーの増加を見越し、性能を意識してシステムを作り上げてきた成果と言えるだろう。
また、社内やグループ企業にOSSの専門組織を擁していることも大きな要因だ。SCSKのOSSの知見を集結した「OSS戦略企画室」と、Linux Kernelを中心としたソースコードレベルでの性能解析や障害解析などの高度な技術支援を提供する
VA Linux Systems Japan」、この2つの組織の技術力とノウハウがあったからこそ、安定した運用ができているという。「常に情報共有や技術支援を受けられるという安心感がある。運用フェーズに入って、なにか問題があったときでも相談できる、頼れるところがあるというのはありがたいですね」(岡村)

 

導入の効果

ソリューション事業部門・コーポレートシステム部の部長の青梅伸一は、基幹システム「SUCCESS」について、「OSSの独自の障害は見当たりません。商用製品を使ったシステムと比べても引けをとらない」と胸を張る。OSS導入効果は大きく3つあるという。
まず1つ目はコスト削減だ。商用のソフトウェアの場合、ライセンスを購入する必要があるが、OSSならばライセンスは無料で使える。そのため、コストを気にすることなく本番環境のほかに開発環境を作ることができるなどの効果がある。2つ目はベンダーにロックインされないこと。ロックインされるとそのベンダーの戦略に縛られ、それに沿った開発計画を作らざるを得なくなる。だが、OSSならば自分たちの思う通りに計画を立てられるというメリットがある。3つ目は必要に応じて自社で機能追加することができること。自由度が高く、本当に必要なことを付け加えることができる点だ。その分ソフトウェアのソースコードを理解し、変更するだけの技術力が必要となるが、SCSKでは「MySQL」に精通した技術者がいるため、このOSSの利点を十分に活用することができているという。「技術力は必要だが、それを乗り越えれば、われわれのノウハウとしてどんどん蓄積されていく」(青梅)

今後の展開

ビジネスを支える基幹システムでのOSS利用を促進

企業システムにおけるOSS活用は広まってきており、今後の期待も大きい。例えば、本事例の中核となったOSSである「MySQL」は、バージョンアップによって、パフォーマンスやレプリケーション機能が商用製品と比べても遜色ないレベルにまでなってきている。
住商情報システムとCSKが合併したときのように、一気にトランザクションが2倍になるというようなケースは昨今珍しくない。ソリューション事業部門の水野 隆は、「大きな経営戦略の方向転換や拡張の中で、新しい事業戦略でサービスを提供し続けるということは、ビジネスを支えている基幹システムも拡張や改変を求められるということ。SCSKはそういった場合に対応できる技術力を持ったSIerであり、同じようなことで悩んでいるお客さまにOSSを活用したソリューションを提案していきたい」と意気込みを語った。
SCSKのOSSを活用した大規模基幹システムを構築する挑戦は成功した。だが、ここが終着点ではない。SCSKはより高いところを目指し、これからも新たなチャレンジを続けていく。

(インタビュー実施時期:2014年5月)

製品・サービスに関する問い合わせ先
SCSK株式会社
基盤インテグレーション事業本部
通信基盤インテグレーション部
tel: 03-5166-2420
e-mail:oss_sales@scsk.jp

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