事例紹介 自社プロダクト「PrimeCloud Controller」のオープンソース化戦略

事例紹介

自社プロダクト「PrimeCloud Controller」のオープンソース化戦略

「PrimeCloud Controller」は提供終了いたしました。(2022年5月)

「PrimeCloud Controller」の特徴

  • 1. ハイブリッドクラウド対応
    VMWare、Eucalyptus、CloudStack、AWS、NIFTY Cloud、IDCフロンティア、NTTCom Cloud n、USiZE、Microsoft Azure、OpenStack
  • 2. Web、AP、DBなどミドルウェアなども自動設定
  • 3. さまざまなクラウドで統一的な操作
  • 4. さまざまなクラウドをまとめて、Zabbixで一元管理
  • 5. クラウド間接続で必要なVPNを自動で接続
  • 「PrimeCloud Controller」とは▼
  • OSS版誕生の背景▼
  • OSS版開発のプロセス▼

「PrimeCloud Controller」とは ハイブリッドクラウド時代を手中に収める鍵

「ハイブリッドカーが当たり前になってきたように、クラウドでもハイブリッドの時代が来る。そしてそれを制御するためのソフトウェアが必要とされるはずだ」――。クラウドが企業で本格的に利用され始めた頃に、ITマネジメント事業部門ではこのように予測していた。
サーバーの一時的な利用増減時に、パブリッククラウドとプライベートクラウドをシームレスに使いコストメリットを発揮させるハイブリッドクラウド。最近でこそ多くの企業が利用しているが、SCSKのハイブリッドクラウド制御ソフトウェア「PrimeCloud Controller」が誕生した2010年には、それを現実のものとして構想する人間はまだ少なかった。
「PrimeCloud Controller」は、簡単なGUI操作でパブリック/プライベートの両クラウドを統一的に管理できる。そのため、専門スタッフでなくても急激な負荷増大時のサーバー増設の環境構築を約20分で完了させたケースもある。クラウドの普及に伴い、先駆的に製品化された「PrimeCloud Controller」は多くの企業に導入され、信頼と実績を積み重ねてきた。
そして2014年春、さらなる利便性を高め、「PrimeCloud Controller」オープンソースソフトウェア(OSS)版が発表された。

「PrimeCloud Controller」OSS版誕生の背景
OSS時代を見据えた開発ベースが進化の時を迎えた

クラウドの世界はOSSと相性がよいため、「PrimeCloud Controller」も初めからOSSを活用して開発していた。それは、日々進化するOSSを利用することで、製品自体も、より顧客満足の高い製品に進化させたいという考えの表れでもある。
またOSS版の提供により、SCSKのクラウドサービス「USiZE」などSCSKの顧客だけではなく、 同業他社などの独自クラウドにも「PrimeCloud Controller」が自由に導入できるようになった。
「OSS版に踏み切れたのは、商用としての信頼と実績もありますが、さらに、当社にはOSSの知見を集中させた専門部署、OSS開発に強い関係会社(VA Linux Systems Japan)などブレーンが大勢いるからです」と浅野佑貴は言う。開発メンバーだけでなく、経営陣までもがOSSのビジネスを理解し尽くし、真摯に取り組んだ成果がここにある。
「PrimeCloud Controller」OSS版が生まれた背景には、将来を見据えたクラウド事業の展開、今後もOSSのノウハウを蓄積していくというSCSKの強い意志が存在していた。

開発メンバー

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OSS VIEW

OSS版開発のプロセス OSS専門部隊をもつSCSKならではの視点を発揮

「PrimeCloud Controller」OSS版の誕生に大きな役割を果たしたのが、「SCSK R&Dセンター OSS戦略企画室」。OSSに注力してきたSCSKの方針を具現化した組織といえる存在だ。
例えば、OSS版のライセンスをどうするか。複数のOSSで開発された「PrimeCloud Controller」OSS版を提供するにあたり、どのライセンスが最適か、検討と選定に時間をかけた結果、OSS戦略企画室は「GNU GPL(General Public License)v2」を推した。OSS戦略企画室の菊地吾朗は言う。「OSSライセンスに詳しい弁護士にも相談しました。OSSのライセンスは数が多いだけではなく、その一つひとつの内容も複雑です。開発部門のビジネスプランに適し、また利用される方にとって理解しやすいライセンスであることも重要です。そのため、OSSユーザーの間で広く認知されていることがライセンス選定基準のひとつでした」

幅広い知見と専門的な技術でOSS化を支援

また、「PrimeCloud Controller」をOSS版として提供するためには、開発のためにSCSK社内で利用していた資料をすべて、OSSユーザー向けに作成し直さなければならない。その任を負ったのが綾野鉄朗だ。「製品として提供する限り、だれにでも分かりやすい資料を用意することが必須です。当社自体がハイブリッドクラウドの管理に「PrimeCloud Controller」を利用しているので、ユーザーでもあります。常にユーザーの視点に立った制作を行いました」
「PrimeCloud Controller」OSS版は、システム監視ソフト「Zabbix」でシステム監視が行われている。OSS版を提供するにあたり、システム監視の改善を行ったのが日本でのZabbixコミュニティ「ZABBIX-JP」のスタッフでもある田中 敦だ。「Zabbixもどんどん新しいものになっていますので、さらに新しい要素も加えていく予定です」

OSS版は多くのエンジニアの未来を変える

予測通りOSSの時代が来たとはいえ、OSSを不安視する声が少ないわけではない。顧客の不安をぬぐい、信頼を得るには、OSSに関する知識の全社的なボトムアップが必要だ。「PrimeCloud Controller」OSS版の開発でも、最初の注力点はそこだった。前述にもあるように経営陣を含め関係者全員が、OSSへの理解を深め、OSSのビジネスをきちんと理解することから始めた。その手助けをしたのもOSS戦略企画室だった。
さらに、「使いやすい製品にする」という思いが、全員の胸にあった。『PrimeCloud Controller』で、これまでエンジニアが手作業で行っていた作業が自動化されますから、エンジニアはよりクリエイティブな仕事に時間を費やせるようになります。OSS版でさらに使いやすい製品になったことで、より多くのエンジニアにその機会を享受してほしいですね」(菊地)
「PrimeCloud Controller」OSS版でSCSKは新しいビジネスモデルに打って出た。加えて今後は、ユーザーコミュニティーの形成によるノウハウの蓄積、動向が注視されるOpenStackへ注力し、ネットワークの仮想化対応など製品に磨きをかけていく方針だ。

(インタビュー実施時期:2014年4月)

開発メンバー

製品・サービスに関する
問い合わせ先
SCSK株式会社
ITマネジメント事業部門
netXデータセンター事業本部
サービス開発部
浅野
tel: 03-5859-4705